『シン・エヴァ』改8号機のハエたたき状装置の正体は?イーロン・マスクと葛城ミサトに共通する、経営努力の賜物かもしれない

2021.8.24

葛城ミサトとイーロン・マスクの共通点とは?

フィギュア「エヴァンゲリオン正規実用型 (ヴィレカスタム)8号機β」(リボルテックヤマグチ)筆者撮影
フィギュア「エヴァンゲリオン正規実用型 (ヴィレカスタム)8号機β」(リボルテックヤマグチ)筆者撮影

ヴィレの葛城ミサトとスペースXのイーロン・マスク。大きな組織を率いる彼らは、同じ経営努力をしている。それは、使えるものは中古だろうが壊れていようが使ってしまえということだ。

スペースXの場合、先の「ゴミをあさる」という話は、たとえではなく実際の出来事だった。かつて、古い液体窒素のタンクが空軍施設内で打ち捨てられていたのを見かけたとき、すぐに購入を決めて再利用したという(前掲『宇宙の覇者 ベゾスvsマスク』より)。

また、スペースXの本社ビルと工場は中古物件で、しかも元ボーイングの施設だ。ボーイングといえば、旅客機だけでなく、ロケット開発に長年携わってきた宇宙産業の老舗。つまりスペースXの仕事場は、ライバル企業のお下がりなのだ。

一方ヴィレも、コストカットのためなら手段を選ばない。ヴンダーはヴィレが自前で作ったのではなく、ネルフ製の旧式の艦だ。そして主な動力源は、前々作『新劇場版:破』で破壊されたエヴァ初号機。ボロボロの機体ですら有効活用する。

また、前作『新劇場版:Q』の終盤、13号機との戦いで2号機と8号機も大きなダメージを負った。そこで『シン・エヴァ』では、ユーロネルフに保管してあった「JAパーツ」を使って修理することにした。JAとは「ジェットアローン」の略。かつてテレビアニメ版に登場した「日本重化学工業共同体」の巨大人型自走兵器だ。この組織、ミサトらとは敵対関係にある。

JAパーツを獲得したマリが「細工は流流」と言っていたが、まさにそのとおり。やり方をとやかく言う状況ではなかった。エヴァ制作スタッフの山下いくとによると、「Qとシンエヴァは工業力を失ったサバイバル世界」だという。

ニアサードインパクト以前は恵まれていた。使徒との戦いでエヴァや新第三東京市が破壊されても、ピカピカに戻っていたのだから。それが今や、ヴィレ側のエヴァはツギハギだらけ。ヒト・モノ・カネ、何もかもが足りない時代になった。エヴァの機体を作るのにも、現実世界でロケットを作るのにも、徹底した節約が必要なのだ。

今回はロケット技術がエヴァのデザインに採用されたということを説明したが、最後に、その逆の出来事があったことを紹介する。2017年に打ち上げられた日本のH2Aロケットの2段目には、実は初号機っぽいロゴが描かれている。

ロケットに貼られたロゴのワッペン。打ち上げられた衛星の名「みちびき」が刺繍されている。筆者撮影
ロケットに貼られたロゴのワッペン。打ち上げられた衛星の名「みちびき」が刺繍されている。筆者撮影

このデザインは、先述の山下いくとが手がけたものだ。現実世界でも宇宙進出を果たすとは……。エヴァスタッフ恐るべし!

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