声優のアイドル人気はいつ始まったのか?「読むアニメソング」~声優ブームがやってきた!前編~

2021.7.2

アニソン時評を連載中のアニソン評論家の冨田明宏。7月5日(月)にゲストの飯田里穂と共に配信イベント『冨田明宏×飯田里穂 声優ブームの最前線(延長戦)』を行う。イベントをより一層楽しんでもらえるように特別に第6回・第7回の連載、冨田明宏と飯田里穂の対談の一部を公開する。

※この記事は『クイック・ジャパン』vol.155に掲載の連載を抜粋したものです。


声優ブームとは

何とこの『読むアニメソング』も連載開始から一周年を迎えることができました! 子供のころからとにかく落ち着きがなく、それが原因で何度も教師にシバかれ、「集中力が続かず何事も長続きしない」と通知表に書かれてしまい母親にもシバかれていたこの私が、1年間連載が続いたのである。すごい。というか、直ぐ体罰で躾けようとしてた昭和ってヤバくてすごい。

何だか当時の担任だったI先生のことを思い出したら腹が立ってきたが、脱線しそうなので早めに話を元に戻すと、この連載が続いているのはこんな私を温かく見守り導いてくださった『QJ』編集部の皆様のお陰が100%である。感謝の言葉しか湧いてきません。

『QJ』のような人が担任の先生だったら私の性格も歪むことはなく、締め切りもちゃんと守れる人間になっていただろうに(原稿遅れて本当にすみません)。そんな“令和の夜回り先生”こと『QJ』に恩返しをするべく、今号から〈数字持ってそうなネタ〉で攻勢をかける。ズバリ“声優ブーム”についてだ。

何やら最近、いわゆる声優をやたらとテレビの地上波放送でみかけませんか? もしかすると、すでに当たり前すぎて気づいていない方も多いかもしれない。一例を挙げてみると、日本テレビ系で放送中の情報番組『ズームイン!!サタデー』のお天気キャスターとして『ラブライブ!サンシャイン!!』渡辺曜役の斉藤朱夏さんが出演していたり、今号の表紙&巻頭特集でお馴染みハライチの岩井勇気さんと声優・花澤香菜さんがMCを務めるテレビ朝日系『まんが未知』がスタート。

3月29日に放送されたテレビ朝日系『クイズプレゼンバラエティー Qさま!!』には人気若手女性声優として鬼頭明里さん、富田美憂さんが出演。同番組にはほかにも関智一さんに森久保祥太郎さん、小野友樹さんに千葉翔也さんが出演。同日の夜9時には、日本テレビ系『人生が変わる1分間の深イイ話』でベテラン声優であり声優事務所アクセルワンの代表でもある森川智之さんと、声優養成所アクセルゼロに密着。水瀬いのりちゃんがナレーションを務める中、森川さんの養成所員に対する強力な演技指導と圧にスタジオから悲鳴が上がっていたのは記憶に新しい。

中でも番組内で元E-girlsのDream Amiさんが「普段ちょっとかわいらしい声のお友達がいると『アニメ声だね!声優できるんじゃない?』みたいに軽く言っちゃうんですけど、本当もう一生言え憂い」 とコメントしたのを見て「やっとわかってくれたか…!」と思ったり。

本業以外での活躍

というわけで、極々最近の声優の地上波出演例を挙げただけでもこんなにある。私も今年に入っただけで『お願い!ランキング』で関智一さん、植田佳奈さん、愛美さんと共演しているし、ゴールデンタイムに放送されたテレビ朝日系の特番『アニソンバトルBEST20』にも花澤香菜さんがMCとして出演した他、『Bang Dream!』から誕生した声優によるリアルバンドRoseliaも出演していた。

この番組において私はコメント出演だけではなく企画打ち合わせから参加させてもらったが、「アニソンと声優をゴールデンタイムで」という流れはすでに当たり前のようなムードすら漂っていた。もっとも、私自身が音楽プロデュースを手掛けている飯田里穂、内田真礼たちはもはや地上波のテレビ番組に出演する声優の常連的な存在だったりもするし、新たな声優ブームの興りをわかりやすく体現していたのは、日本テレビ系『しゃべくり007』やTBS系テレビドラマ『半沢直樹』に出演していた宮野真守さんや、『鬼滅の刃』で主演・竈門炭治郎役を務めた花江夏樹さんのテレビでの活躍だろう。

アニメでキャラクターを演じ外画(日本以外で制作された映像作品)で吹き替えを行うなど、どうやら“裏方”とされてきた声優という職業。しかし実際は、この連載でも度々触れてきたように、独自の音楽性を持ちアーティストとして活動する声優もいれば、写真集などグラビアを活発に行う声優もいるし、ユニットやグループでアイドルとして活動する声優もいれば、バラエティ番組に引く手数多の声優もいる。そしてもちろん、完全に裏方として作品を支えるため職人に徹する声優も大勢いる。これが令和における声優と言うお仕事なのだ。


アイドル人気や歌手活動のはじまり

劇場版『鬼滅の刃 無限列車編』の社会現象的大ヒットでより分かりやすい形で顕在化した声優ブーム。この“声優ブーム”と呼ばれる現象は決して今にはじまったものではない。その発端は意外にも古く、なんと1960年代にまでさかのぼる。当時、テレビの台頭に焦りを見せていた映画業界が既得権益を守ろうと、民放で日本映画の供給を行わないいわゆる“五社協定”が結ばれた(後に自然消滅)。

その結果、日本のテレビ業界は海外ドラマや洋画を積極的に放送するようになり、海外の美女&イケメン俳優たちの吹き替えを担当していた声優たちに注目が集まった。その第一次声優ブームの中心にいたのが、当時アラン・ドロンの吹き替えで注目を浴びた野沢那智である。

アル・パチーノやブルース・ウィリスの吹き替えや、アニメでは『スペースコブラ』のコブラ、後に『HELLSING』のアンデルセン神父などを担当。尋常ならざる個性と芝居で声優業界を牽引した野沢こそが最初の声優ブームの顔だったのである。

その後、第二次声優ブームが起こったとされるのが1970年代後半。それは劇場版『宇宙戦艦ヤマト』のビッグヒットによるアニメブームと並行して起こった。代表的な声優は神谷明、古谷徹、古川登志夫と言った、当時美男子系アニメ・キャラクターを演じていた若手声優たち。

いうまでもなく今でも現役の大ベテランたちだが、若手時代は女性ファンたちからの黄色い声援の的だったのである。彼らは当時声優以外の音楽活動も積極的に行っていて、伝説的声優バンド・スラップスティックもこの頃に結成されている。他にも女性声優では潘恵子、戸田恵子らが男性ファンから熱い支持を集め、潘に至っては当時すでにオリジナル・アルバムを4枚もリリースするアイドル的な人気を獲得していた。

昨今の声優を取り巻く状況に対して「本当は裏方なのに今って声優がアイドルみたい!」と囁かれることがよくあるが、それは歴史を知らないだけ。当時からアニメ誌に声優のグラビアが掲載されていたり、人気声優がラジオに出れば出待ちが群がっていたのである。

この第二次声優ブームは80年代後半のアニメ『鎧伝サムライトルーパー』に出演した5人の男性声優で結成されたユニット「NG5」の大ブレイクまでを一括りとすることが多いが、このユニットが本当にすごい。担任のI先生にシバかれていた小学生時代の私も、テレビの情報番組でNG5が取り上げられ、女性ファンがコンサートや握手会で熱狂したり失神するらしいことは知っていた。

YouTubeに上がっている動画でその当時の様子を垣間見ることもできるが、声優ブームにもさまざまな遍歴があって今があるのだ。

さて文字数が尽きてしまったので、次回は第三次声優ブームから現在に至るまでの流れと、その特徴について書かせていただきます!

▼本誌では語り尽くせなかった「声優ブーム」について、ゲストの飯田里穂と徹底解説するオンラインイベントも開催!▼

イベント概要

冨田明宏×飯田里穂 声優ブームの最前線(延長戦)
日時:7月5日(月)20:00〜22:00
配信:Zoomウェビナー機能

チケット購入QJWebSHOPにて販売中

出演者
冨田明宏
飯田里穂

※配信で使用するZoomのウェビナー機能はメールアドレスを登録いただくだけでご視聴いただけます

※チケット購入後に送られてくるURLより事前登録をお済ませください。事前登録後に当日の視聴URLをお知らせいたします

※アーカイブチケットの販売は7月11日(日)23:59まで

【チケット料金】
アーカイブ付チケット:1,650円(税込)
アーカイブのみ:1,650円(税込)
※アーカイブチケットの販売は7月11日(日)23:59まで

購入するボタンがうまく作動しない場合はこちらからお買い求めください。
QJWebSHOP

冨田明宏

1980年生まれ、千葉県出身。アニメソング評論家、アニメソングプロデューサー。株式会社一二三所属。飯田里穂、内田真礼、黒崎真音などのプロデュースを手がける。『Quick Japan』にて「冨田明宏の読むアニメソング」を連載中

飯田里穂

1991年生まれ、埼玉県出身。声優、女優、歌手。TVアニメ『ラブライブ!』(星空凛役)で声優デビュー。『ラブライブ!』並びにμ’sとして紅白歌合戦への出場や東京ドーム公演を果たす。主な出演作に『アイドルランドプリパラ』(香田澄あまり役)、『終末のハーレム』(東堂晶役)、『オッドタクシー』(白川役)など


7月5日(月)20:00〜開催 チケットは絶賛発売中です!


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  • 冨田明宏×飯田里穂 声優ブームの最前線(延長戦)

    日時:7月5日(月)20:00〜22:00
    配信:Zoomウェビナー機能

    チケット購入:QJWebSHOPにて販売中

    出演者:
    冨田明宏
    飯田里穂

    ※配信で使用するZoomのウェビナー機能はメールアドレスを登録いただくだけでご視聴いただけます

    ※チケット購入後に送られてくるURLより事前登録をお済ませください。事前登録後に当日の視聴URLをお知らせいたします

    ※アーカイブ配信期間は7月11日(日)23:59まで

    【チケット料金】
    アーカイブ付チケット:1,650円(税込)
    アーカイブのみ:1,650円(税込)
    ※アーカイブチケットの販売は7月11日(日)23:59まで

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  • 【イベント視聴者限定!飯田里穂サイン入りチェキプレゼント(当選人数2名)キャンペーン応募概要】

    キャンペーンの応募期間、参加方法は以下をご覧ください。

    【応募期間】
    2021年7月5日(月)イベント内での応募用ハッシュタグ発表後〜2021年7月11日(日)23:59まで(アーカイブ視聴期間終了)
    ーーーーーーーーーーー
    【ステップ1】
    ・QuickJapan編集部(@QJ_official)とQJWeb(@qj_web)のツイッターアカウントを両方フォローしてください。
      ▼
    【ステップ2】
    ・イベント内で発表された応募用ハッシュタグをつけて感想をツイートしてください。
      ▼
    【応募完了!】
    締め切り後当選された方には、『QJWeb クイック・ジャパン ウェブ』公式アカウント「@qj_web」からDMにて、ご連絡差し上げます。フォローを外さず、DMを開放してお待ちください。

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