『大豆田とわ子と三人の元夫』『最高の離婚』『カルテット』の3作に見る共通点と、坂元作品で描かれる「食事」の意味

2021.6.9

坂元作品の中で共通して描かれる「食事」の意味

坂元作品の中でも「雑談」が重要な要素であることは疑う余地がないが、もうひとつの特徴として挙げるなら「生活」である。とりわけ「食事」のシーンの多さ。

『大豆田とわ子と三人の元夫』の物語の中でも特に大きな衝撃となった、とわ子の親友である綿来かごめ(市川実日子)の突然の死。かごめの死後、とわ子は彼女の部屋で、冷蔵庫の残り物で作ったチャンプルーを食べつつ、彼女が描いた漫画を泣きながら読むシーンがある。

まるで、『カルテット』3話における「泣きながらご飯食べたことある人は、生きていけます」を彷彿とさせるが、個人的には坂元作品に共通する「生」の象徴が食事なのだと感じる。『最高の離婚』では、光生が結夏の不在感を強く意識して寂しさに打ちひしがれていたとき、ひとり分の料理を作り、ひとりで食べて、洗い物をする様子が、淡々と描かれた。

『カルテット』では、真紀が罪を償うために出頭したあと。抜け殻のように虚ろに沈み込む三人だが、すずめだけは台所に立ち、三人分のご飯とみそ汁と焼き魚ときんぴらとお新香を作る。それを見た別府と家森も席につき、三人は黙々とただ食事をする。やはりその様子も、淡々と静かに描かれた。

どんなにつらいことがあっても、生活は追っかけてくるし、つづいていく。こうした表現は、坂元自身がどんなに忙しくても、毎朝5時に台所に立ち、娘の弁当を作る生活をつづけていることが影響しているのだろう。坂元作品に共通する、何よりも「生活」というものをリアルに描こうとするこだわりが、登場人物たちの世界を自分たちの世界と地つづきなのかもしれないと思わせてくれるのだ。

こうして、過去作と比較してみると、思わぬ共通項や関連性が新たに見つかるのが、坂元作品のおもしろいところ。小谷翼(石橋菜津美)が何度も話題に出した「河合さん」が、諒が何度も話題に挙げたギリシャ彫刻のような二枚目の准教授「河合さん」と同一人物なのかとか、すずめの出生時の名字とかごめの「綿来」という名字が同じこととか、知っていると想像がふくらむ要素がほかにもたくさんあるかもしれない。

とわ子たちの物語がどんな結末を迎えるか、彼女彼らの関係性がどのように変化するのか、またはしないのか、最後まで楽しみに見届けたい。

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