涙、涙の別れのシーン
ユチャンを慕うクムガ・プラザの住人たちも、主を失った法律事務所「藁」の前で立ちすくむ。とぼけた味わいの事務長・ナム・ジュソン(ユン・ビョンヒ)がドアの前でしゃがみ込んでしまうのが悲しい。
静かに事務所の前にやってきた人たちがいた。かつてユチャンに助けられた人たちだ。涙ながらに花を供え、お礼のメッセージを書いた付箋をドアに貼っていく。
「10年前、私たちの藁になってくれてありがとうございます!」
付箋はドアのみならず、まわりの壁まで埋め尽くしていく。「大好きです」「ホン先生をけっして忘れません」「ゆっくり休んでね」「あなたは私の家族です」「助けてくれてありがとう」……。
生前、ユチャンは「私は弁護人ではなく、彼らの藁なんです」と語っていた。金にも権力にも媚びず、なびかず、勝ち目のない戦いを挑み、力尽きたユチャン。こんな人がひとりでも多くいてくれたら、世界はもっと住みやすくなるのに。
一連のシーンのBGMはLA POEMのメンバー全員による、モーツァルトの「レクイエム」から“史上最も悲しい旋律”とも言われる「ラクリモーサ(涙の日)」。まさに鎮魂歌だった。韓国ドラマは、泣かせるシーンは徹底的に泣かせにくる。
「もしも私が邪悪なら、それはお前のせいだ」
悲しみをよそにバベルグループの攻勢はつづく。新薬の問題を告発するはずだった証人は殺され、ユチャンはバベルグループと結託するマスコミに“悪徳弁護士”のレッテルを貼られていた。
事実を解明しようとするチャヨンはウサン法律事務所に辞表を叩きつける。「分をわきまえな」と聞き覚えのあるフレーズでチャヨンを恫喝する悪徳弁護士のミョンヒだが、チャヨンだって一歩も退かない。懸命に引き留めようとする後輩の弁護士、チャン・ジュヌ(オク・テギョン)は大型犬のようでかわいいのだが……。
意識を取り戻したあと、我関せずの態度を取っていたヴィンチェンツォだが、やはりユチャンのことを思い出すし、チャヨンのことも気になっている。彼が部屋で観ていたオペラはヴェルディの『リゴレット』。歌われていたのは、せむしの道化・リゴレットのアリア「悪魔め、鬼め」。怒りだけでなく、悲しみや嘆き、愛などのさまざまな感情が詰まった曲だ。
ヴィンチェンツォは「もしも私が邪悪なら、それはお前のせいだ」という歌詞を自分に重ねていた。彼が「邪悪」でいるのは、彼自身の素養などではなく、周囲の敵や環境と深く関わっているということ。なお、このエピソードは昏睡シーンと部屋のシーンの2回もソン・ジュンギのパジャマ姿が登場してファンを歓喜させた。
前後するが、事務長が水をあげていた観葉植物の名前は、それぞれソン・ジュンギがドラマで演じた役名。「プンホ」が『トリプル』、「マル」が『優しい男』、「シジン」が『太陽の末裔』、「ウンソム(字幕なし)」が『アスダル年代記』。筆者が気づいたのではなく、ファンの方がツイッターで指摘していた。愛が深い。
バベルグループの若き会長、チャン・ハンソ(クァク・ドンヨン)のベッドに注射器が何本も刺さったクッションが仕込まれていたのは、映画『ゴッドファーザー』へのオマージュ。元ネタは血まみれの馬の生首だった。
死ぬ方法は数万通りある
チャヨンは改めてヴィンチェンツォに共闘を申し込む。クムガ・プラザを取り戻すことを取引の材料にしているあたりがしたたかだ。反撃の狼煙を上げたヴィンチェンツォは、ユチャンを殺害した関係者をひとりずつ絞り上げていく。スタンガンを持つ相手を針金ハンガー1本で軽々と制圧してしまうところがカッコいい。セリフもキメキメだ。
「俺が嫌いなのはマカロニと時間の無駄遣いだ」
「撃たないと思ったろ。でも銃は撃つものだ」
場面が進むにつれ、ノワール指数がどんどん上がっていく(銃撃はトリックだったけど)。ユチャン(と自分)殺害の指令を下したミョンヒを脅すときのセリフもイカしていた。
「人が誕生する方法はひとつだけだが、死ぬ方法は数万通りある」
仕上げはバベル製薬の新薬工場の襲撃だ。消毒スタッフに化けてガソリンを撒き、第1話と同じくヴィンチェンツォのライターで着火! 炎上する工場から立ち去る車の中で協力者たちがマスクを取ると、過去にユチャンに助けられた人たちだとわかって、胸がカーッと熱くなる。こんな危険なこと、命の恩人のためじゃなければやらないよね。名もなき弱者だって、強者に虐げられてばかりじゃないってこと。
現場に駆けつけるが、うろたえるだけのハンソ会長。そこへ現れたのが……いつもチャラチャラしていたインターン弁護士のジュヌ! 真の会長は彼だったのだ! いつもとまったく違う顔つきと声色に、底知れぬ狂気を感じる。
大爆発する工場を見下ろしながら、夜明けに流れるオペラはプッチーニの『トゥーランドット』からアリア「誰も寝てはならぬ」。ヴィンチェンツォはイタリア語で歌詞をそらんじる。
「星よ、沈め。夜明けに私は勝つのだ(ヴィンチェロ)。私は勝つ(ヴィンチェロ)、私は勝つ(ヴィンチェロ)」
微笑むヴィンチェンツォの顔が炎で照らされ、高鳴る音楽に喝采の音まで流れて第4話は終わりを迎える。まるで最終回のような盛り上がりだが、まだまだ序盤。あと16話、どうなっちゃうの? デデン!
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