放送作家は、1行でわかる企画を考える。最近感銘を受けたのは『世界のアソビ大全51』
テレビ、ラジオ、YouTubeなどを幅広く手がける放送作家の白武が、企画を考えるときに大事にしていることは「1行で面白さが伝えられる」こと。企画を練る過程で出会ったNintendo Switch『世界のアソビ大全51』。ゲームそのものの面白さだけでなく、歴史に関するロマンまで感じたこのゲームについて筆者は語る――。
※本記事は、2020年8月25日に発売された『クイック・ジャパン』vol.151掲載のコラムを転載したものです。
ゲームを通じて、語り継がれる1行を考える
私は放送作家として、「これをやったら楽しくなる」という企画やゲームを常に探しています。最近のTVは真似すると危険ということで「おしりに空気を入れながら腕相撲をして屁をこいたら負け」という遊びや、「タオルを顔にあてて仰向けにし、口の部分に水をかけ続けて窒息させる」というような罰ゲームができなくなっています。私は「知っている人が安全に死にかけている状態から復帰する」過程が好きなのですが、今のTVには合っていないようです。残念。
TVの企画を考えるとき、なるべく1行で面白さが伝えられるものを生み出したいと思っています。笑ったらおしりを叩かれる『笑ってはいけない』、男女7人がワゴンに相乗りしながら旅をする『あいのり』など。その1行を生み出すための一環で、日々友達と集まってボードゲームを楽しんでいたのですが、COVID-19の影響でできずじまい。
そんななか、最近出会って感動しているのがNintendo Switch『世界のアソビ大全51』。このソフトは世界中の有名無名のゲームが51個入っているというものです。たとえば「ドミノ」。本来のドミノはクロちゃんを発狂させるような遊び方ではなく、牌に描かれている点の数をつないでいくゲーム。得点したり、相手のコマをひっくり返したりする音、アクション、操作もろもろ含め、任天堂のUI/UXデザインが素晴らしい。まったくストレスがないです。
収録されているラインナップも最高。任天堂には「枯れた技術の水平思考」という考え方があります。制作者はつい最先端の技術を使いたがりますが、そうではなく広く使われている技術で、いかに新しい使い道を考えるか。古くからあるルール、古典のシステムを知ることが大事。それがアソビ大全のすべてです。
私のゲームの好みは、シンプルなルールで面白くなっているもの。1行で説明できて、見たら一瞬でわかるもの。余計なルールはないが、様々な戦略や定石があるもの。収録されているゲームでいちばんハマっているのが、石と穴を使っていろいろな遊びができる、アフリカ生まれのゲーム「マンカラ」です。世界最古の知育ゲームとして知られており、なんと誕生は6000年前。日本でいうと縄文時代です。そんな大昔に生まれた遊びが、部屋にこもりすぎて太陽光を浴びると蕁麻疹が出てしまうか弱い一重の東洋人として2020年を生きる私が遊んでいる。ここにロマンを感じる方は、ぜひお試しあれ。