関 修一『小さなバイキング ビッケ キャラクターデザイン・ワンダーランド』:PR

『小さなバイキング ビッケ』の関修一が描く “今、ここ”に生きつづけるビッケたちの姿

2020.10.15
小さなバイキング ビッケ キャラクターデザイン・ワンダーランドサムネイル

文=島田康治 編集=前田和彦


『世界名作劇場』シリーズなど、多くの作品でキャラクターデザインを手がける、日本アニメーション界の巨匠、関修一。代表作のひとつ『小さなバイキング ビッケ』は、今なお愛される不朽の名作だ。

『小さなバイキング ビッケ キャラクターデザイン・ワンダーランド』(東京書籍)は、そんな関が『ビッケ』の世界を現代にアップデートしつづける挑戦の記録ともいえる画集になっている。『ビッケ』を知る人も、そうでない人も必見の一冊だ。

懐かしくもうれしい気持ちを呼び起こす

これは何十年ぶりに届いた、幼いころ仲がよかった友人からの手紙……。関修一『小さなバイキング ビッケ キャラクターデザイン・ワンダーランド』は、そんな感慨深い心地よさを味わえる画集だ。

アニメ『小さなバイキング ビッケ』は1974年から75年にかけて、全78本が放送された児童向けテレビアニメーションである。まだまだ当時は「バイキング」といってもピンとこない時代。ある一定の世代なら、「バイキング」という言葉をこのアニメで知った人も少なくはないだろう。かく言う筆者も、リアルタイムではないものの再放送などでこの作品を目にしており、幼稚園のころに愛好していた。大人に負けぬ知恵で問題を解決するビッケのトンチは、子供心にとても痛快だった。

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『小さなバイキング ビッケ キャラクターデザイン・ワンダーランド』(東京書籍)より

だから本書を見たとき、ひたすら懐かしい想いが込み上げてきた。そして、そんな思いを抱いているのは筆者だけではないはずだ。本書の表紙に描かれているのは、小さなビッケと大きなハルバル父さん、ゴルムにファクセにスノーレ、チューレ、ウルメ、ウローブじいさん、イルバ、チッチといった懐かしい面々。あのバイキングの仲間たちは、40年経っても元気にのびのびと暮らしているにち違いない……。優しいタッチの水彩画は、そんな懐かしくもうれしい想いを呼び起こしてくれる。

小さなバイキング ビッケ キャラクターデザイン・ワンダーランド 書影
『小さなバイキング ビッケ キャラクターデザイン・ワンダーランド』(東京書籍)表紙

『小さなバイキング ビッケ』はいかにして生まれたのか

本書の著者である関修一氏は、『世界名作劇場』をはじめ、日本アニメーションの作品で数多くのキャラクター・デザインを担当した超ベテランアニメーター。そんな関氏が20代の中ごろに手がけたのが、この『小さなバイキング ビッケ』だ。

原作はスウェーデン生まれの作家が書いた児童文学。本書に収録されたプロデューサーの加藤良雄氏と松土隆二氏との座談会によると、関氏は原作に描かれたビッケとハルバルの挿絵を下敷きに、キャラクター・デザインを設計したのだという。挿絵に出てこないキャラクターや、チッチなどのアニメオリジナルキャラクターは、そのイメージをベースに関氏が発展させて描いた独自のものである。

アニメ本編を観たときの、なんともいえぬ異国情緒の源泉が、挿絵を大切にリスペクトしながら新たにキャラクターを創り出した、関氏の手腕にあったのは間違いないだろう。ビッケの髪の毛の、輪郭ではなく“流れ”を実線で描く表現も、ほかにない新しいことをやりたいという若き関氏の情熱の賜物だったという。

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『小さなバイキング ビッケ キャラクターデザイン・ワンダーランド』(東京書籍)より

また、本書には関氏が所蔵する当時の設定資料が豊富に掲載されている。活き活きした線で描かれた設定画は、まさに眼福で、貴重すぎる資料だ。前述の関氏を囲む座談会や関氏と共に作品に参加したアニメーター・福田皖氏のインタビューも貴重だ。

しかし本書の真骨頂は、関氏が個展のため描きつづけている水彩イラストにある。当時の絵ではなく、新しく描かれたビッケの絵なのだ。つまり、この2020年現在においても、関氏はビッケたちの絵をアップデートし描きつづけているのだ。

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『小さなバイキング ビッケ キャラクターデザイン・ワンダーランド』(東京書籍)より

放送から45年も経てば絵も変わるところ、関氏は今も設定を見ながら、当時と同じように描くことを心がけているという。すでに半世紀近いキャリアを持ち、数多の代表作を持つ関氏が「ビッケのことを憶えてくれている」……という事実はファンの胸を熱くすることだろう。

今も生きつづけるビッケと仲間たち

さらには円熟の境地に達した関氏が描くイラストには、いうならば古い作品なら持つであろう“古臭さ”がない。懐かしさと同時に新しさがあるからこそ、そのイラストを鑑賞する読者の心の中に、鮮明にビッケたちの記憶が甦るのだ。関氏のキャラクター・デザインが秀逸なために、まったく作品が色褪せていないということを発見できるのは、本書の大きな読みどころだろう。すっかり過去の作品だとばかり思われがちだが、そうではなかったのだ。

アニメでは描かれていないビッケたちの姿。それはきっと彼らの現在の姿に違いない。関氏の手によって『小さなバイキング ビッケ』という作品が、本書を通してまさしく“今、ここ”に生きつづけているのだ。このような画集が編纂されたことは、ビッケファンだけでなくアニメファンにとっても快挙といえる。

北欧のどこかにあるフラーケ村に暮らすビッケとハルバル父さん、そして仲間たちは、今日も7つの海を所狭しと冒険していることだろう。この作品を懐かしく思う人も、そしてまだ知らない人も、現代的な悩みとは無縁に生きるビッケたちのスローライフを、この画集で味わってみてはいかがだろうか?

小さなバイキング ビッケ キャラクターデザイン・ワンダーランド288
『小さなバイキング ビッケ キャラクターデザイン・ワンダーランド』(東京書籍)より

丸善 京都本店にて「関修一原画展~思い出のキャラクターたち」開催!
10月30日(金)~11月5日(木)※最終日は16:00閉場。
地下2階MARUZENギャラリーにて。
10月30日(金)午前10時より京都BAL北側入口にて「原画購入整理券」を配布予定。
11月1日(日)14:00~16:00には、関修一先生サイン会も開催予定。


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島田康治

(しまだ・こうじ)1974年、東京都生まれ。フリーの編集・ライターを生業に、編集プロダクション「TARKUS」に在籍。主に玩具・模型・アニメーション・特撮等の趣味系書籍や雑誌、パンフレットや映像ソフト解説書の編集・執筆を数多く手がけている。特に『トランスフォーマー』関連の出版物に関しては、国内随一の..

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