アニソン市場から「部外者」にも発信 「MONACA」作品の魅力
アニメシリーズのタイトルであり、声優ユニットでもある「Wake Up, Girls!」。ユニットとしては2019年にさいたまスーパーアリーナでのラストライブをもって解散となったが、長年にわたり彼女たちの人気を支えたのは、楽曲の“おもしろさ”だった。
その多くを手がけた音楽制作者集団「MONACA」の魅力を、3枚のCDから解説する。
※本記事は、2016年5月7日に発売された『クイック・ジャパン』vol.125掲載のコラムを転載したものです。
「音楽制作者集団 MONACAを追え!」の3枚
去年(2015年)の紅白歌合戦にμ’sが出演して以降、さらに注目を集めている2.5次元アイドルだが、こうした分野の音楽は往々にして楽曲そのものに付随した文脈、つまり作品のストーリーやキャラクターの性格、声優のキャリアなどの情報を含んだ状態で評価されがちだ。「あの声優がこのキャラでこういう風に歌ってるのがあの場面を思い出させてグッとくるんですよ!」なんて言われても、外野には「知らんわ!」としか言えないわけである。
もしそうした分野の音楽を「部外者」にも届けたい場合に、楽曲はどうあるべきなのか。これには明確な答えがある。楽曲それ自体が単体でおもしろいのかどうか、その一点である。(いやいやアニメを見ないならアニソンも聴く必要ないでしょ、はここではナシだ!)
さて。「Wake Up, Girls!(以下、WUG)には良い曲が多い」というのはアニメを見ない音楽リスナーの間でも少しずつ共有されていて、WUGの2枚目のベスト盤となる『Wake Up, Best! 2』に収録されている25曲のうち、音楽制作者集団「MONACA」の作曲家による作品はざっと19曲ある。
たとえば「プラチナ・サンライズ」はピアノやストリングスがふんだんに使用された王道アニソン系サウンドだが、「止まらない未来」なんかはT-SQUAREあたりを彷彿とさせるフュージョン・テイストの爽快なトラックに只野菜摘の描くリアルなアイドル像、《でもいつか恋をするし(成長するし)/お腹もすくし》という詞(ちょっとつんく♂っぽい?)が不思議とマッチしていて、これが非常におもしろいのだ。
「オオカミとピアノ」に至っては、アース・ウインド・アンド・ファイアー風のAメロから、間奏の一部はまるで「恋するフォーチュンクッキー」、終盤で電波ソング風の謎の歌唱が登場するなど目まぐるしい展開に笑ってしまう。WUGを知らないリスナーでもおもしろく聴けるはずだ。
リスナーを飽きさせないアレンジ力と作曲力
MONACAが携わっていることの多い『アイカツ!』関連の楽曲にも同じことが言える。「ドラマチックガール」は渋谷系風のキュートなサウンドがサビ周辺でギターロックに徐々に変化するハイブリッド型で、アキシブ系の最新型として楽しめる。MONACA作品の良さは、リスナーを飽きさせないこうした幅広い音楽的バックグラウンドによるアレンジ力と作曲力にある。
最近ではテレビドラマ『マネーの天使〜あなたのお金、取り戻します!〜』のサウンドトラックを手がけておりアニソン以外のフィールドにも進出しているのも、こうしたMONACAの力が買われてのことだろうし、4月末に初開催の『MONACAフェス2016』では彼らの楽曲を歌ってきたWUGをはじめとするアーティストらが一堂に会し生演奏でパフォーマンスをするということから、ステージに立つ側からの支持も高まっていると窺える。
盛り上がるアニソン市場。MONACAがその流れに一役買っているのは、ともすれば閉じがちな分野を作品そのものの魅力で「部外者」へも発信できている点ではないだろうか。