『日本沈没2020』を観るべき4つの理由。日本社会の崩壊と再生に彩られた物語

2020.7.13

ユースカルチャーの視点から見る『日本沈没2020』

永井豪原作のマンガをアニメ化した『DEVILMAN crybaby』(2018年)において、湯浅監督は不良をラッパーに置き換え、現代日本の物語であることを明確に表現していた。

本作もそれを踏襲しており、エストニアを拠点に活動している人気YouTuberのカイト、ユーゴ内戦を生き延びたイギリス人ヒッチハイカーなど、武藤家一行に合流するキャラクターたちは職業も出自もバラエティ豊かであり、オリジナル要素として確かな魅力にもなっている。

チャンネル登録者数700万人を超えるユーチューバーのカイト。世界中の秘境や危険地帯を冒険し、パラモーターによる空撮映像などをアップしている

一時、歩たちが保護されたカルト・コミュニティ「シャンシティ」(まるで『ミッドサマー』に登場するコミューン「ホルガ」のよう!)や彼らが栽培する一面の大麻畑には、短絡的な「救済」の恐ろしさやきな臭さだけでなく、彼が運営するクラブ・シーンのサイケデリック~アシッド感も含め、その快楽性・依存性も巧みに演出されている。

さらに今回も、キャラクターたちの心情が明かされる重要な場面でラップが登場する。ひとつ間違えると物語から浮いてしまいそうなシーンであるが、ラッパー・KEN THE 390が監修したそのパートのクオリティは、キャストの演技も合わせて高いものとなっており、見どころだ。

『日本沈没2020』クリップ|ラップに乗せて魂で叫べ!

また、過去に山本精一(『マインド・ゲーム』)やオオルタイチ(『映像研には手を出すな!』)を劇伴作家に起用したことからもわかるように、湯浅監督は音楽に対するこだわりの深さを感じさせる映像作家だ。その手腕は、本作で3度目のタッグとなる牛尾憲輔(agraph)との共同作業でも見事に発揮されている。

都市崩壊というディザスター描写に向き合わなければならない本作において、その状況を過度に煽ることなく、淡々と抑制的にメモライズするような彼のテクノ~エレクトロビートは、物語の推進力となっている。本作でも印象的に鳴らされる歌モノや、大貫妙子×坂本龍一の主題歌なども、穏やかではあるが少し浮世離れしており、日常の儚さ、移ろいを匂わせるものだ。

『日本沈没2020』OP(歌詞入り特別ver. )|主題歌:「a life」大貫妙子&坂本龍一

湯浅監督作品の視点から見る『日本沈没2020』

この記事の画像(全10枚)


関連記事

この記事が掲載されているカテゴリ

関連記事

アニメ評論家・藤津亮太

アニメ『BNA』とBLM運動。「選ぶ権利を奪うあなたのやり方は、マジで!最高に!キモいから!」獣人の叫びが示した視点

kogawa_quickjournal_main

アメリカは燃えている――“BLACK LIVES MATTER”と“I Can’t Breathe”とCovid-19(粉川哲夫)

『ギャルと恐竜』から考える、今“ギャル”が求められている理由(egg編集長・赤荻瞳)

エバース

「ウケるからやるは『M-1』では失敗する」。3位だったエバースは2026年、自分の感覚を信じる【よしもと漫才劇場10周年企画】

豪快キャプテン×ダイタク

ダイタク×豪快キャプテン、認め合うお互いの漫才の魅力「簡単そうに笑いを取る」【よしもと漫才劇場10周年企画】

三遊間×ゼロカラン

三遊間×ゼロカラン、人気投票との向き合い方の正解は?「やっぱり有名にならなあかんな」【よしもと漫才劇場10周年企画】

Furui Rihoが『Letters』で綴った“最後の希望”「どんなにつらい日々であっても、愛は忘れたくない」

Furui Rihoが『Letters』で綴った“最後の希望”「どんなにつらい日々であっても、愛は忘れたくない」

EXILE NAOTOが語る、「勝負する身体」がステージと水面で魅せる“攻めの0.1秒”。大きな影響を与えるオーディエンスのパワーとは【『SG第40回グランプリ』特別企画】

4年目の今、重荷だった「王子様」を堂々と名乗れる。Last Princeが語る、プリンスを背負う勇気と楽しさ

甲斐田晴/ローレン・イロアス/3SKMの撮り下ろし表紙を公開! VTuberのトップランナーたちを徹底解剖【春のQJ×にじさんじ祭り!】

ニューヨーク『Quick Japan』vol.181

ニューヨーク、60ページ総力特集「普通は勝てない?」を考える。バックカバーにはSHUNTO×MANATO×RYUHEI(BE:FIRST)が登場【Quick Japan vol.182コンテンツ紹介】