ジャルジャルが状況を逆手に取った「リモートコント」の完成度の高さ

2020.5.20

「演技力」と「アドリブ力」によってそこに生まれる現実

言葉で説明するのは簡単だが、演じる人間そのものになりきる「演技力」と、タイムラグやフリーズなど予期せぬトラブルが起きても臨機応変に対処できる「アドリブ力」、このふたつが高い次元で備わっていなければけっして成立しない。特にそのすごさを感じさせるのが、神保と生徒たちのかけ合いだ。

『ハズレの先生にリモート授業される奴』にはジャルジャルのネタサロン「ジャルジャルに興味ある奴」の会員たちがエキストラとして参加しているのだが、一人ひとりに神保マオが語りかけるくだりがあり、流れが読めないコントでもある。いくらジャルジャルのことをよく理解している生粋のジャルジャルファンだとしても、あくまで一般人。実際に動画を観ても、神保との受け答えがたどたどしかったり棒読みになったりしている生徒が数多くいる。

しかし、そこをジャルジャルのふたりが完璧にカバーする。完全に「神保マオ」を憑依させている演鬼(えんき)・福徳秀介がその圧倒的なパワーで押し通し、生徒のひとり「津田將也」としてまったく違和感なくその場に溶け込んでいるプレーンモンスター・後藤淳平が全体の挙動を把握しながら的確にその場に合った「生徒としての言葉」でツッコんでいく。

ふたりが「お笑いコンビのジャルジャル」としてではなく、「神保マオ」と「津田將也」としてそこに確かに存在しているからこそ、結果としてサロン会員が醸し出すたどたどしさが圧倒的なリアリティに昇華されている。さらにそれぞれがそれぞれの場所から現実として「神保マオの授業を24人の生徒がリアルタイムで30分受けている」という異常さがプラスされることによって、唯一無二のおもしろさが生み出されている。

「リモート」により引き起こされる化学反応

ほかにも、ウルフルズに影響され過ぎた新人バンド『ウルトラズ』のリモートオーディションの様子を収めた『ウルフルズに影響されてる奴 ~リモートオーディション~』や、まじめそうな就活生がいきなりイカれてしまう『リモート面接でめっちゃふざける奴』など、ネタのおもしろさに加え、「リモート」というイレギュラーな状況が合わさることでさらなる化学反応を引き起こしている。

『ウルフルズに影響されてる奴〜リモートオーディション〜』

「フィクションを現実にドッキングさせる」発想力と、それを完璧に演じ切る演技力、まさにジャルジャルの真骨頂が詰まった「リモートコント」、ぜひ、元ネタと合わせて観てほしい。

また、2019年の大晦日に行われた除夜の鐘を打つ回数“108”にかけて開演時間を10時8分、チケット料金を10800円に設定し、108本のネタを披露した『大晦日に108回もジャルってんじゃねえよ』も無料で観ることができる。これを最後まで観れば、あなたもジャルらずにはいられなくなるはず。さぁ、みんなでジャルろう。



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かんそう

1989年生まれ。ブログ「kansou」でお笑い、音楽、ドラマなど様々な「感想」を書いている。

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