ロケを封じられた『王様のブランチ』がリモートで大進化を遂げている
ソーシャルディスタンスはテレビの風景を変えてしまった。スタジオでわいわいやるのも、街ロケも今は難しい。だが『王様のブランチ』がやりおった。リモートを完全に武器にしたのだ。テレビっ子ライター井上マサキが『ブランチ』戦法に迫る。
最新情報もロケも封じられた『王様のブランチ』
『王様のブランチ』はどうするんだろう、と気になっていた。
コロナウイルス感染拡大防止のために「ステイホーム」が叫ばれ、ドラマやバラエティの新たな収録も見合わせがつづいている。情報番組のようにソーシャルディスタンスを取ることができず、ロケで遠出することも叶わない。撮り溜めた「ストック」が切れ、再放送や総集編を流す番組も増えてきた。
そこで気になっていたのが『王様のブランチ』だ。毎週4時間半にもわたる生放送はグルメ、旅、買い物、映画、ファッションといったトレンド情報で成り立っている。しかし、外出自粛が求められているなか、飲食店をはしごして食レポなどできないし、「買い物の達人」も「物件リサーチ」も不可能。さらに映画は新作の公開がことごとく延期されている。スタジオもレギュラー陣とブランチリポーターで「密」な状態だ。
最新情報もロケも封じられたブランチは、いったいどうなってしまうんだろう。放送休止もやむを得まい……と思いきや、『王様のブランチ』はまったく休まず生放送でトレンドを伝えつづけている。その武器は「リモート」だ。
家から一歩も出ずに話題の商品を食レポするには?
数週間前から『王様のブランチ』もリモート対応に切り替わり、オープニング時にスタジオにいるのはアナウンサーひとりのみ。MCの渡部建&佐藤栞里は局内の控え室から、番組レギュラーの藤森慎吾や石田ニコル、パンサーらは自宅からリモート出演している。
生放送の情報番組でリモート出演を行う場合、大きなモニタをスタジオに用意して、あたかも出演者がそこに「いる」ように見せていることが多い。しかしブランチは、出演者それぞれのリモート画面をCGにはめこみ、いつものスタジオにリアルタイムで合成。全員の画面が空にプカプカ浮いているように見せている。さすが長年『サンデーモーニング』で「バーチャル張さん」をつづけてきたTBSだけある(あれも元祖リモート出演だろう)。
出演者ごとに切り出したリモート画面は、そのまま「ワイプ」(VTR中に画面隅で出演者の顔を映している枠)にも転用。ライブ映像を紹介するときは、全員の画面を下に一列に並べて客席のように見せていたりもした。ただ、若干のタイムラグがあるので、ライブに合わせて歌うと口パクがズレたりするのはご愛敬。