グローバルボーイズグループ・INIのメンバーであるシュウ・フェンファンが、いつかは忘れてしまうかもしれない「ある一日」の心の動きを大切に書き留めるエッセイ連載。
連載第10回は、初めて『DayDay.』(日本テレビ)にコメンテーターとして出演した日のこと。
※本稿はWEB版オリジナル原稿です。第11回は10月21日(水)発売の『Quick Japan』vol.186に掲載します。
20240813:日々是好日

京セラドーム大阪での単独公演から約半年。この年の僕たちINIは、デビュー3年目の夏を迎えた。夏はいつもありがたいことに、一年の中でも忙しい季節だ。6月末に6枚目のシングルをリリースし、ほぼ同時に、次のシングルの準備も進んでいた。それに、初めて『SUMMER SONIC』や『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』という大きなフェスのステージにも立たせていただき、3年連続で全員そろってLAを訪れ、撮影で東京都の離島・新島でもひと夏の思い出を作った。毎日バタバタしていた記憶しかないが、その忙しさの中には、これだけ活動できるという幸せもたくさん詰まっていた。
そんな慌ただしい夏のある日、僕には3年間の活動の中でも指折りの、今思い出しても緊張する朝を迎えた。
7月のある日、マネージャーさんから一本の連絡があった。
「今度、『DayDay.』(日本テレビ)にコメンテーターとして出てほしいというオファーが来てるんだけど、どう?」
いやいや。どうって言われても。そんなこと僕にできるのだろうか。
*
僕はそれまで個人での仕事がそれほど多くなく、ひとりで出演する機会も片手で数えられるほどしかなかった。どうしてもメンバーが一緒にいないと心細かったし、自分ひとりで朝の情報番組のコメンテーター席に座り、ニュースについてコメントしている姿なんて、まったく想像もできなかった。もともと緊張しいな性格でもあり、さらに緊張すると言葉が詰まりやすくなることは、この職業につく前から自覚していた。実際、そのせいで失敗した経験もいくつかある。
2時間にわたる生放送は、僕にとって間違いなく、活動を始めて以来、個人としての一大チャレンジでもあり、ある意味ピンチでもあった。
しかし、不安はあったものの、まずはやってみなければわからない。せっかくいただいたオファーだからこそ最善を尽くしたい。そしてグループとしても、個人としても、僕たちを知ってもらえるひとつのきっかけになるかもしれない。そう思い、僕は「がんばります」と答えた。
マネージャーさんいわく、以前にひとりで出演させていただいた『カズレーザーと学ぶ。』(日本テレビ)をきっかけに、今回のオファーをいただいたそうだ。大丈夫。あのときのように落ち着いて一つひとつ答えていけばいい。
そう僕は自分に言い聞かせていた。
*
リハーサルやイベントを重ねる日々が一瞬のように過ぎ去り、あっという間に出演予定日の8月13日当日を迎えた。
いつもならまだぐっすり夢の中にいる5時台。心の中は少しそわそわしていたが、目が覚めると二度寝する余裕もなく、そのまますぐ朝の準備を始めた。夏の朝は、早朝でも明るい。カーテンを開け、朝の陽射しを浴びながらいつものようにカフェインを体に流し込み、深呼吸をひとつして家を出た。まだ出勤ラッシュの前で、道も空いていた。
日本テレビに着くと、マネージャーさんが出迎えてくれた。まだ慣れないひとりの控室で、メイクをしてもらいながら当日の内容を確認し、その後はスタッフさんや出演者のみなさんとの打ち合わせが待っていた。9時からの生放送だったが、打ち合わせや準備をしていると時間はあっという間に過ぎていった。気づけばもうスタジオでスタンバイしていた。
そして、この一連の流れが、この日から少なくとも2年以上、月に2~3回繰り返されることになるとは、このときの僕は思いもしなかった。
約2時間の生放送。僕はずっと気を張りながら席に座っていた。それまでに生パフォーマンスで一度だけお邪魔させていただいた、緑を基調としたスタジオ。初めてコメントしたニュースがオーバーツーリズム対策だったこと。他の出演者のみなさんに助けてもらいながら、一つひとつ受け答えをしていたこと。今でもはっきり覚えていることもあれば、緊張のあまり記憶がぼやけてしまっていることもたくさんある。
しかし、無事に終わった直後「よくやった」と心の中で自分に声をかけたことだけは、今でも鮮明に覚えている。
*
あの日をきっかけに、ありがたいことに半年ほどの間、月に2回ほど不定期で『DayDay.』に出演させていただくことになった。そして翌年4月には、まさかのレギュラー出演者の一員に加わることになった。
同じ6時台の東京でも、夏は朝日が眩しく陽射しが強く照りつけている日もあれば、冬はまだ薄明かりすら見えない真っ暗に包まれている日もある。晴れていて、アイスコーヒーを飲みながら気持ちよく迎える朝もあれば、低気圧の日は、ギリギリまで布団の中でもがきながら、なんとか起き上がる朝もある。
扱うニュースの幅も、冗談を交えながら談笑できる生活に身近なテーマもあれば、事前に勉強を重ね、一つひとつ言葉を選びながら話さなければならないテーマもある。自分のバックグラウンドならではの話や、アイドルとして活動しているからこそ話せる内容もあれば、逆にそれがゆえに配慮をしなければいけない慎重な線引きも常に考えなければいけない。2年間やってきた今振り返ってみると、一回一回が僕にとって学びの多い時間で大切な経験になっている。
それと、なんとなくだが、僕たちのような仕事をさせていただいていると、忙しさや目の前のやるべきことに追われて、自分たちが生きている社会や、まわりの世界のことが少しずつ見えなくなっていく怖さがあった。そんななか、『DayDay.』は、自分の考えを発信する場所であると同時に、僕にとってまわりの世界とつながるパイプにもなった。
変化し続ける僕たちの毎日。その間にも、この世界ではさまざまな出来事が起きている。晴れた日でも、雨の日でも、喜びの日でも、悲しみの日でも。少しでもテレビの前のみなさんにとって、僕のひとことが支えになれたなら、僕はがんばっていてよかったと思う。
そう思いながら、今日もまた6時の東京に会いに行く。
第11回は10月21日(水)発売の『Quick Japan』vol.186に掲載します。
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