11人組のグローバルボーイズグループ「JO1(ジェイオーワン)」。“グローバル”を標榜していた彼らは結成当初からワールドワイドな活動を目指していたが、デビュー日は2020年3月4日。コロナ禍の影響を真正面から受けたグループのひとつといえる。
そんなJO1初のワールドツアー『JO1 WORLD TOUR JO1DER SHOW 2025 ‘WHEREVER WE ARE’』が2025年2月に台湾の首都・台北からスタートし、3月30日に韓国・ソウルでの公演をもって終了となる。
本稿では、JO1初めての海外のパフォーマンスやワールドツアー1公演目もレポートした日本在住のJAM(JO1のファンネーム)の紗里氏が、3月1日に行われたロサンゼルス公演の様子をお届けする。
目次
特別な場所LAで、念願の単独ライブ
LAは私にとっても、JO1にとっても特別な場所だ。
2022年の夏、JO1の初の海外でのステージはここLAから始まるはずだった。『KCON LA 2022』に出演予定だったものの、メンバーのコロナ感染により出演は直前でキャンセルに。晴れ姿を見届けようと私も日本から渡航する予定だったが、そのニュースを聞いたときの深い悲しみとどうしようもできない悔しさは今でも忘れられない。
ただ、誰よりもメンバー自身が一番悔しさを感じていたはず。「Pinky Promise(指切りげんまん)」を合言葉に、いつか直接会えると信じて待ち続けた1年後、『KCON LA 2023』で初めてアメリカでのパフォーマンスを披露したJO1。彼らは今回のワールドツアーでは、念願の単独ライブを実現することとなった。
会場となるThe Belascoはロサンゼルスのダウンタウンエリアに位置し、1926年に演劇用に作られた劇場だったが、その後改修され、現在は最大1500人を収容できるライブ会場として使用されている。会場内に入ると高い天井一面に細かな内装が施されており、劇場としてオープンした1920年代にタイムスリップしたような気持ちにさせてくれた。


開演前から自然と巻き起こるJO1コールは、LAの観客の熱量を表していた。さらに21歳以上は事前に年齢確認を済ませることで、会場内のバーでアルコールを購入することができたので、一緒に入場したカナダから参加のJAMは、ロング缶を片手にスタンバイ。音楽フェスといった外部イベントではお酒を飲みながら音楽を楽しむという文化があるものの、JO1の日本でのライブだとまず見ることのない光景で新鮮だった。

ハングリー精神こそJO1の強み
LAでのライブを端的に表現するならば、「そうくるか!?」という驚きの連続だった。バンコクでのライブから1週間しか経っていないにもかかわらず、セットリストや全体の構成をガラッと変更してきたのだ。
LAとニューヨーク、アメリカでJO1のライブが行われる2会場は、映像を投影するバックモニターがないため、国内ツアーでも使用されていたVCRはすべてカット。通常であればVCRが流れている間に衣装チェンジを行うはずだが、VCRがなくなったことでオープニング衣装のまま、最初から最後までステージから一度もステージ袖に捌けることなく、文字どおりまさにノンストップのライブとなった。
会場ごとに設備が異なり、今までのかたちでのライブができないというある種の試練を「どう観客に楽しんでもらうか」というポジティブな挑戦に変換し、短期間のリハーサルで構成の大幅な変更に踏み切るためには、メンバーの結束力はもちろん、演出に携わるスタッフの力なくしては実現できなかったはずだ。一つひとつのステージに真摯に向き合い、現状に満足せずよりよいかたちを模索するそのハングリー精神こそが、3月4日にデビュー5周年を迎えるJO1の強みなのだ、そう感じたステージだった。

各メンバーが見せ場を作ったパフォーマンス&MC
2023年の『KCON LA』で出会ったアメリカJAMは、みな口をそろえて「いつかJO1の単独ライブをアメリカで観るのが夢」と話していた。そして、「これがJO1のライブだ!」と言わんばかりに11人が歌って踊り続ける90分間のショーは、きっと彼女たちの期待を超える濃密な時間だっただろう。派手な特効や映像での演出がなかったとしても、パフォーマンス一本で観客を惹きつけることができる、と証明していたように思う。
MCでは與那城奨が中心となって、英語で「LAで食べたいご飯は?」と話題を振ったところ、木全翔也が「タコスもステーキもIN-N-OUTのハンバーガーも食べたので、あとはでっかいロブスターを食べたい!」と大のエビ好きな彼らしい回答が。
「朝早くから並んでくれてありがとうございます」と、白岩瑠姫は長時間待機していたファンへの気遣いを忘れない。河野純喜の「2023年の『KCON』のこと覚えてますよね?」の呼びかけに合わせて、豆原一成が当時カバーしたSEVENTEENの「Super(손오공)」の振り付けを見せると会場が大きく沸き立った。「あのときよりももっとエネルギーを出していきましょう!」とさらに観客を煽りながら、熱気あふれる会場全体をうれしそうに眺めていた。
高校生のころにLAでダンス留学をしていた大平祥生が、時を経て今度はアーティストとしてLAのステージに立ち、「GrandMaster」の曲中でキレキレのブレイクダンスを披露したのも意味のある瞬間だった。鶴房汐恩も「領域展開」のセリフとポーズで会場を盛り上げ、さらにライブを勢いづけた。

新たにセットリスト入りした「Eyes On Me」
今回のライブで新たにセットリスト入りしたのが「Be With You(足跡)」「STAY」「Eyes On Me」の3曲。その中でもひと際盛り上がっていたのが「Eyes On Me」だった。オランダ人アーティスト・R3HAB(リハブ)プロデュースのこの楽曲はリリース自体は2023年だが、2025年に入ってからSpotifyの急上昇チャートにランクイン。1月の『GMO SONIC 2025』では、川西拓実・河野・與那城が念願のR3HABとのコラボパフォーマンスを実現したことでも話題になった。
川尻蓮は、台北のライブ後に行ったインスタライブでファンからのコメントに答えるかたちで「客席の反応を見たり、実際にやってみて急遽セトリや構成を変えることもあるし、メンバーと会議したときも『Eyes On Me』が盛り上がりそうという話も出ていたので、どこかのタイミングでできたら」と話していた。そして、その言葉どおり満を持してLA公演での披露が実現。
ダンスバトルを想像させるようなフリーダンスのパートや11人がユニゾンで踊り狂う曲のラストは圧巻のひと言で、観客の熱量を跳ね返すかのようにステージ上でエネルギーを爆発させていた。

川尻蓮の28歳を祝う「ハッピーバースデー」の大合唱
3月2日に28歳の誕生日を迎える川尻を、会場全体の「ハッピーバースデー」大合唱でお祝いするシーンもあり、いろんな意味で特別な公演となったことは間違いない。川西や佐藤景瑚がステージに運ばれてきたケーキを客席に投げようとする素振りを見せると、「ライブが終わったらみんなで食べます」と慌てて與那城が止めに入ったり、いつものJO1らしい和気あいあいとした姿をLAでも見せていたのも印象に残った。
ワールドツアー恒例となったJAMへの手紙を読む場面では、金城碧海が「JAMのみんながつらいとき、僕を頼ってね。僕がつらいときはJAMのみんなを頼らせてね」と率直な気持ちを言葉にした。
佐藤はファンが持っていたバナナの被り物を身につけながら「やっと会えましたね。今まで待っていてくれてありがとう。I love you 3000!」と、『アベンジャーズ/エンドゲーム』のセリフを引用しながら愛をまっすぐに伝えていた。

カリフォルニア在住JAMインタビュー「JO1の物語の一部になれた」
定期的にJO1のカバーダンスをSNSに公開しているカリフォルニア州在住のkMamaにインタビューすることができた。

──JO1をどんなきっかけで知りましたか?
kMama ちょうど5年前に友達がJO1「無限大(INFINITY)」のダンスカバー動画を観ていて、曲も振り付けもかっこよくて気になって、YouTubeでMVを観たのがきっかけです。今までもK-POPが好きで、ほかのグループのダンスを練習したこともあったけど、JO1も踊ってみたいと思ったの。当時はコロナ禍で、小さい部屋の中でJO1メンバーが「無限大(INFINITY)」を踊っている動画を観ていたのも懐かしい!
──長い間待ちに待ったJO1の単独ライブを今日やっと観ることができますが、今どんな気持ちですか?
kMama すごく興奮しているけど、まだ現実とは信じ難い! 3年前に『KCON LA』への出演がキャンセルになってしまったり、2024年の『KCON LA』にはそもそも出演しなかったりと、日本での活動が中心で海外での活動は難しいのかな……と半分あきらめの気持ちを抱いていたときもあったけど、やっとこの日が来た!とワクワクが止まらないです。今日は娘と一緒にライブに来られたのもうれしいですね。
──JO1の楽曲で一番好きな曲は?
kMama やっぱりJO1を知った最初のきっかけの「無限大(INFINITY)」は大好きだし、『KCON LA』でやってくれた「RadioVision」や「Venus」にも特別な思い入れがあります。『KCON LA』では「Venus」のイントロ部分のみの披露だったから、いつかフルでパフォーマンスしてくれたらいいな。
──JO1がほかのグループと違って、特別だと感じる部分はどこですか?
kMama メンバー一人ひとりのタレント性が光るグループだと思います。5年前までは普通の男の子たちだったのに、夢を追いかけるためにオーディションに挑戦して、その挑戦を家族や友達も応援していて、そして実際に夢を叶えている。このストーリー性は唯一無二だと感じています。

──(ライブ後)実際にライブを観て、どうでしたか?
kMama 夢が叶いました。今までも才能を見せ続けてきてくれたし、全員がハンサムなのもわかってはいたけど、 今回のライブではまとまりのあるグループとしての成長と、洗練されたパフォーマンススキルを見せてくれました。アメリカでの認知と新規ファン獲得につなげて、トップへと登り続けてほしいです。
単独ライブでJO1に会う機会を得たことはもちろん、めったに会うことのできない日本やほかの地域のJAMと再会できたことにも感謝の気持ちでいっぱいです。JO1を応援するようになって、ファン同士のコミュニティに出会えたのも宝物のような経験なんです。
──JO1に伝えたいメッセージはありますか?
kMama みんな本当に素晴らしかったし、誇りに思います。デビューから続くJO1の物語の一部になれたような気がします。アメリカでのライブを実現させてくれて本当にありがとう。JO1が鳴らすビートに乗って一緒に踊る、アメリカのママがついているからね! これからもずっと応援します!
LAで歌われた「Be With You」
悲しい出来事を乗り越え、やっと会えた感動をともに分かち合い、いつかアメリカでの単独ライブが実現する日が来ることを願いながら、一つひとつの足跡を大切に重ねてきたJO1とJAM。長い道のりではあったが、あきらめなければ夢は叶えられるのだと改めて信じることができた瞬間だった。
川西が最後のあいさつで、「いつかもっと大きな会場でパフォーマンスしたい」とさらなるグローバルでの飛躍を誓ったとき、数々のビッグアーティストがライブを行っているLAの有名なライブ会場であるKia Forumを頭に思い浮かべたのは、きっと私だけではないはずだ。今回のワールドツアーはゴールではなく、大きな挑戦の始まりであり、また新たな約束(Pinky Promise)が交わされた瞬間といえるかもしれない。

「二人歩んだ道のり/何も怖くはない/僕らの夢叶えられるさ/君という名の足跡/忘れないよいつまでもずっと/I’ll Be With You, too」
(JO1「Be With You(足跡)」)
日本から約8700キロ離れたロサンゼルスで「これからも君と一緒に」と歌うメンバーの姿を見ながら、一度きりのライブではなくその先の未来へと足跡が続いてほしいと強く願った。
先の見えない険しい道かもしれないけれど、自信に満ちた彼らのライブパフォーマンスには「恐れずにともに歩もう」、そんな決意のメッセージが込められているような気がした。JO1がアメリカの地でこれからどんな夢を描き、その夢に向かってどんな道を歩んでいくのか期待は高まるばかりだ。
次回は記念すべきデビュー5周年を迎えたニューヨークでのライブをレポートする。

JO1の表紙・巻頭特集「5年目のGo to the TOP 時代を変える11の夢」
2024年6月に発売された『Quick Japan』vol.172の表紙&第1特集では、グローバルボーイズグループ・JO1が登場。合計3万字以上のソロインタビューを含む40ページ以上にわたる総力特集を実施。
特集のテーマは「5年目のGo to the TOP 時代を変える11の夢」。2020年3月に「グローバルボーイズグループ」としてデビューし、コロナ禍の影響を真正面から受けながらも、激変するエンタテインメントの世界で目覚ましい活躍を見せているJO1。デビュー時から「Go to the TOP」を掲げてきた彼らは、活動5年目を迎えた今、どんな夢を抱き、どのように時代を変えようとしているのか。
メンバー11人が夢見る「TOP」に向けた現在地を明らかにするため、「あなたにとって“TOP”とは何か?」「現時点での“TOP”への到達度は?」「“TOP”に到達するために必要なことは?」という質問をぶつけ、合計3万字以上となるソロインタビューを実施。
『Quick Japan』の公式ECサイト「QJストア」では、通常の表紙とは別パターンの限定表紙を販売。QJストアでの売り上げの一部は「能登半島地震」の復興支援のために寄付する取り組みも行っている。


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