不死鳥のごとく復活する『芸人シンパイニュース』が2025年もおもしろすぎた

2025.1.7
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写真=(C)テレビ朝日

文=かんそう 編集=鈴木 梢


爆笑問題、霜降り明星、新井恵理那によるトークバラエティ番組『芸人シンパイニュース』(テレビ朝日)。前身番組は、2021年まで同局でレギュラー放送されていた『爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞!!』(2019年10月〜2020年9月は『爆笑問題のシンパイ賞!!』)で、2022年からは特別番組『芸人シンパイニュース』として年始に放送されている。

今年も1月2日(木)に放送された『芸人シンパイニュース』。番組の魅力と今回の見どころを、同番組のファンでもあるブロガーのかんそうが語る。

ニュース番組のようだけどゴリゴリにお笑い

年始恒例の番組となった『芸人シンパイニュース』が今年も放送された。人気芸人たちに起きた「シンパイな事件」を爆笑問題と霜降り明星と新井恵理那の5人がイジっていくトークバラエティ番組だ。

もともとは『爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞!!』として約2年間レギュラー放送していたこの番組。かくいう私も『シンパイ賞!!』時代からこの番組の大ファンで、いまだに自宅のハードディスクに残された過去放送の録画を定期的に観返している。

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そんな番組がスタッフの努力と、根強いファンの声により、毎年「不死鳥」のごとく復活してくれる、こんなにありがたいことはない。

基本的には「VTRを観る系」の番組なのだが、そのアクの強さは他の番組と一線を画している。普通のニュース番組の「テイ」を取りつつ、その中身がゴリゴリにお笑いなのだ。

「誇張しすぎたCGイメージ」のヤバさはおなじみとなっている。今回は、トム・ブラウンみちおの「駐輪場で料金ミスで立ち往生していたときに脱糞してしまった」というエピソードでの異常に膨張したみちおの尻、ママタルト大鶴肥満の「自分の腹に引っかかってズボンが下ろせず、トイレの前で大量の尿を漏らしてしまいマンションが傾いていたためにそのまま玄関へ流れ出た」というエピソードでのピサの斜塔並みに傾いているマンション、ラランド・ニシダの「女優・杏の自宅に行った際に便意を催したが『杏さんの家でウンコはできない』と最寄りの駅に走ったが間に合わず道端で脱糞した」というエピソードでの異常に膨張したニシダの尻など、いい意味で「狂ってる」としか言いようがないCGが連発された。

仕事が激減したシンパイ芸人&M-1決勝直後のファイナリスト

大ふざけVTRばかりではない。JP、ランジャタイ国崎和也、元プラス・マイナス兼光タカシなど事件をきっかけに仕事が激減してしまった芸人たちにスポットを当て、その様子をありのままに、しかし湿っぽくなりすぎず、ツッコミどころはちゃんと残すなど、バランス感覚がとても素晴らしい。

さらに年始という絶妙なタイミングもあり、令和ロマン、ヤーレンズ、真空ジェシカなど『M-1グランプリ2024』決勝終了直後の芸人たちにその心情を真摯にインタビューするなど、もはやもうひとつの『M-1アナザーストーリー』と言っても差し支えがない。特にトム・ブラウンみちおが、GRAPEVINEの名曲「光について」をBGMに

みちお「くやしー! くやしいです。でもラストイヤーでやり切れたかな……うん、やり切れたっす。2003年のM-1から憧れて『お笑い良いかも』ってなってお笑い始めてって考えると、本当にM-1のおかげでお笑いやる事になったし……優勝できると自分では思ってたけど、まぁ、いい漫才ができたと思ってます。M-1のおかげでいい漫才ができたと思ってます。だから感謝です。(同事務所の)ヤーレンズといけて幸せでした。できれば1・2フィニッシュしたかったですけど、5・6フィニッシュかぁ……俺達らしいなぁ」

と語るVTRはあまりにもエモーショナルで「本当に同じ番組なのか……?」と脳が混乱した。

『芸人シンパイニュース2025』一番のビッグニュース

今回一番のビッグニュースは、なんといっても「ママタルト大鶴肥満とマルシアの初邂逅」だろう。

大鶴肥満といえば、持ちギャグの「まーごめ」(肥満が似ていると主張する大鶴義丹が元妻・マルシアへの謝罪会見で放った「まーちゃんごめんね」を略した言葉)が有名だが、当初マルシアは許可なく「まーごめ」を使うママタルトに腹を立てていたらしい。しかしいつしか愛着が湧き、ママタルトを応援するようになったという。そんなマルシアとママタルトがついに対面したのだ。

M-1で最下位となり落ち込むママタルトを元気づけるため、マルシアはサプライズで登場。「ひわちゃん(檜原洋平)と肥ーちゃん(肥満)!」と言いながら、肥満を優しく抱きしめるマルシア。

マルシア「会いたかったぁ」
肥満「まーちゃん……」
マルシア「1番(ママタルトが)面白かった」
檜原「本当ですか!?」
肥満「最下位取っちゃって、まーちゃんごめんね」
マルシア「やめろよ!(笑)」
マルシア「2024M(マルシア)-1グランプリおめでとう!」
檜原「マルシアさん大好きです! 来年も出ます!」

涙を流しながら労いの言葉をかけるマルシア。映画のワンシーンかと思った。失禁のCGとの差が激しすぎる。情緒がおかしくなる。

爆笑問題、霜降り明星、新井恵理那のスタジオトークの魅力

そして、この番組の最大の魅力はVTRを観たあとの5人によるスタジオトークだ。狂ったVTRの受け手は狂った芸人にしか務まらない。

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霜降り明星(せいや、粗品)

爆笑問題と若手芸人の相性のよさはもはや言うまでもないが、特に霜降り明星とのタッグはあまりにも最高だ。爆笑問題と霜降り明星は、裁判、下半身など似ている点が多くあるが、一番の共通点は「誰が相手だろうと臆することなく突っ込んでいく」その勢いのすごさだ。それが単純に「×2」になっているのだからおもしろくないわけがない。

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核心を突く鋭いコメントから、苦笑いしか出ない下ネタまで、縦横無尽に暴れまくる太田光。どこまでも自然体を貫く田中裕二。時に太田がたじろぐほどの爆弾発言をする粗品。場全体の雰囲気によって瞬時にボケにもツッコミを切り替える家にひとり欲しい存在のせいや。VTR以上にアクの強い4人に流されることなく場を締める新井恵理那。そんな5人の化学反応によって、VTRがよりおもしろくなっていく。

前述したマルシア×ママタルトのVTRを受けてのコメントでも、

田中「本当に『まーちゃんごめんね』言えたね、本人にね」
新井「ぴったりでしたね! 最後」
せいや「マルシアさんが一番ロケしてくれましたね」
全員「すごいよね!」
せいや「2日スケジュール抑えてくれて」
太田「これ、このまま結婚したらすごいよね!?」
粗品「するかぁ!」
せいや「おもろすぎますよ」

と、息の合ったコメントで盛り上げていく。

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爆笑問題(田中裕二、太田光)

なんと言っても、湿っぽくなりそうなVTRであってもどこからでも笑いに落とし込む太田光のすごさ。令和ロマンと共演した『バクっと令和問題』(テレビ朝日)でも髙比良くるまが爆笑問題を「普通に速くておもしろい」と評していたが、この「速さ」は『サンデージャポン』(TBS)で毎週のようにVTR受けボケをやり続けている太田光こそだろう。また、いつものように自由にボケつつも、粗品のギリギリの発言には誰よりも速くツッコむなど、ここぞというときの思慮深さも見せてくれる。

そして今回は、田中裕二の怖さがより際立っていた。特に番組終盤、『爆笑問題カーボーイ』(TBSラジオ)ではもはやネタを超えてリスナーの総称となっている「一般人虫ケラ論」の話題が取り上げられたのだ。

事の発端は、道端で田中と遭遇した同じ事務所(タイタン)の芸人・鎌(れん)による「まるで虫ケラを見るような目で田中さんに見られました」という発言。それに対し田中は、ラジオ同様にこう言った。

田中「そりゃ悪かったけど、お前のこと俺知らないから、ほとんど会ったことないから『わざわざおう!よう!とかやるわけないだろ!虫ケラ!』って言ったの」

テレビでこの発言を聞けたことは、虫ケラのひとりとして本当に貴重な体験だった。

『芸人シンパイニュース』、年に一度の楽しみとしていつまでも長く続いてくれるのもいいが、この5人の座組を毎週観たい。一日でも早い再レギュラー化を願っている。

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かんそう

1989年生まれ。ブログ「kansou」でお笑い、音楽、ドラマなど様々な「感想」を書いている。

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