千鳥、霜降り、オードリー「深夜バラエティ番組」はみんなの「ホーム」だ
コロナウイルス感染拡大防止の影響が、バラエティ番組の現場にも及んできた。『笑点』(日本テレビ)が後楽園ホールでの公開収録を中止し、『しゃべくり007』(日本テレビ)や『ミュージックステーション』(テレビ朝日)なども客席に人がいない状態で放送されている。『R-1ぐらんぷり2020』が無観客で行われたのも記憶に新しい。今後もしばらく、テレビから歓声や笑い声が減った状態がつづくだろう。
いつまでこの混乱がつづくのか。不安で眠れない夜のお供に、芸人たちが輝く深夜バラエティをおすすめしたい。低予算ゆえ無観客は当たり前。ひな壇で爪痕を残さなくても、ワイプの中で顔を作らなくてもいい、自分たちの居場所。芸人とスタッフが共犯となって笑う、彼らの「ホーム」がそこにある。
『テレビ千鳥』と『霜降りバラエティ』の魅力の違い
千鳥はさまざまな「ホーム」を持つ芸人だ。地方局では『相席食堂』(朝日放送テレビ)や『いろはに千鳥』(テレビ埼玉)、ネット配信では『チャンスの時間』(Abemaビデオ)、そしてテレビ朝日に構える彼らの居場所が『テレビ千鳥』である。
『テレビ千鳥』は毎回冒頭で大悟がやりたい企画を持ち込んでくる。「こたつから出とうないんじゃ!!」ではこたつから一歩も出ずに収録を乗り切ろうとし、「でん悟ろう先生の科学実験ショー」では凍らせたパンティをブーメランにして飛ばし、「一番うめぇレモンサワーを作りたいんじゃ!!」ではレモンサワーの最高の割合を探るうちに酔っ払う。その傍若無人な振る舞いにノブの嘆きが炸裂する。
しかし、ただ大悟が暴走して終わるわけではない。たとえば、何度かシリーズ化された「DAIGO’Sキッチン」。料理は素人なのに、ノブに料理を振る舞うという大悟。すき焼きにカレールーを投入したり、ワイングラスに豆腐と黄身を入れて茶碗蒸しにしたり、その大胆さに「やってTRY!」的な展開になるかと思いきや、結末はまさかの「めちゃくちゃウマイ」。ユルい企画が想像もしない着地を見せるから侮れない。4月から放送時間が24時台に繰り上がるが、このままの路線で行ってほしい。
テレビ朝日の深夜には『霜降りバラエティ』もある。『M-1グランプリ2019』優勝、『R-1ぐらんぷり2019』優勝(粗品)を経て、昨年4月に霜降り明星の冠番組としてスタート。せいやの不器用さを確かめる「せいやインポッシブル」や、「粗品の大名笑いを引き出せ選手権」など、ふたりの魅力を活かす企画を中心に据える。
その一方、「お笑い第七世代 vs R-1芸人」ではR-1常連ファイナリストたちが体を張ってゲームに挑戦し、「新旧M-1王者対談」ではミルクボーイとド下ネタの漫才を披露し合うことも。同世代や距離が近い先輩芸人との絡みを通じて、ゴールデンタイムでは考えられない光景を見せてくれる番組でもある。
ビジネスに燃える「さらば」ゲームの皮を被った「アルピー」
深夜帯のバラエティといえば、『ゴッドタン』(テレビ東京)を挙げる人も多いだろう。だがあえて、『ゴッドタン』の次の時間帯に放送されている『今日からやる会議』にも注目したい。出演者はさらば青春の光とカミナリのふた組。テレビ東京の社員と共に新しいコンテンツビジネスを立ち上げる、という番組で、ふた組は「ビジネスの成功報酬」を得るまでノーギャラ。最初の企画会議では、さらば森田が風俗店を提案するなど不安な滑り出しだった。
しかしさすがテレビ東京、経済関連のコネクションが強く、各種「ビジネス賢人」へのインタビューをセッティング。自らも個人事務所を経営するさらば森田との相性もよく、TシャツやVR動画など商品企画が動き始める。3月末には『緊急SOS!池の水ぜんぶ抜く大作戦』とコラボした「池の水サイダー」(見た目も臭いも池の水なのにおいしい)を発売し、それも「発注本数を何本にするか」でスタッフと揉めたりした。お金の話になると活き活きする森田社長はどこまで儲かるのか、4月以降も気になる。
テレビ東京の深夜バラエティなら、『勇者ああああ』がアルコ&ピースの「ホーム」だろう。「ゲーム知識ゼロでもなんとなく見られるゲーム番組」として始まり、4月で丸3年。プレゼン企画「ゲーマーの異常な愛情」などゲーム番組らしい企画もあるが、「ハリウッド軍団 VS 二郎会」や「野田ゲー」といったコアな企画も惜しげもなく繰り出し、その様はまさにゲーム番組の皮を被ったオオカミ。特徴的なキャスティングについては、演出・プロデューサーである板川侑右氏による当サイトの連載「『勇者ああああ』芸人キャスティング会議」で読むことができる。