『Quick Japan』vol.172(6月5日発売)の表紙と40ページ以上にわたる総力特集「時代を変える11の夢」に登場したグローバルボーイズグループ・JO1。
その特集で、デビューシングル『PROTOSTAR』から最新シングル『HITCHHIKER』までシングル全8枚のレビューを執筆を担当した、『わたしはラップをやることに決めた フィメールラッパー批評原論』や『オルタナティヴR&Bディスクガイド』の著者・つやちゃん。
ここでは、つやちゃんがJO1のリスニングマラソンを通して改めて気づいたJO1の音楽の魅力を紹介する。
JO1、全シングルを聴いて気づいたこと
特定のアーティストのカタログを時代順にすべて聴いていくという、俗に「〇〇マラソン」と呼ばれる楽しみ方がある。ストリーミングでの“つまみ聴き”が主流になった今、実に贅沢な聴取体験だ。今回、『Quick Japan』最新号(vol.172)がJO1特集ということで、音楽面にフォーカスしたレビューを書かせてもらったのだが、その際に過去のシングル8枚、全50曲近くを通しで聴いていった。
新曲が出るたびに聴いてはいたが、すべてのシングルをまとめて通しで聴くのは初めて。いわばJO1ショートマラソン、といったところだろうか。これが、実におもしろい。ドラマでもマンガでも、最初から一気に鑑賞することで必ず発見があるというのは誰もが経験したことがあるはず。本記事では、JO1マラソンによって改めて気づいた魅力を紹介したい。
EDMの解釈がどんどんユニークに進化
まず筆者は、JO1の音楽とはまずなによりもEDMだと思っている……というと反論が来そうだが、いや、それでもやはり真骨頂はEDMだと断言したい。もちろん、「We Alright」(2021年)のようなフューチャーベース風味の曲もいいナンバーがたくさんあるし、Band Ver.で聴かせるロックのアレンジもおもしろい。
ただ、デビューシングルに収録された「無限大(INFINITY)」(2020年)がこのグループのスタート地点だったわけで、そこで展開されるのは丁寧に盛り上げる構成と「むげんだーい!」という思いきりのいい歌唱、さらにドロップでの天に昇っていくような快感だった。
EDMのビルドアップ&ドロップが持つ気持ちよさを最大限に活かしたJO1は、そのあとも同様の手法を多用していく。が、その解釈がどんどんユニークになっている、というのがひとつ目の発見。「OH-EH-OH」(2020年)になるとそこに押韻を絶妙に織り交ぜながら音の響きでもリズムを生み始めるし、「REAL」(2021年)ではエモーショナルな歌とカッコいいラップの対比が際立つ。
『MIDNIGHT SUN(Special Edition)』(2022年)のころになると、「SuperCali」に顕著なように、もはやEDMを基軸にしながらひとつのJO1ワールドを確立。『TROPICAL NIGHT』(2023年)ではさらに飛ばしまくり、「Tiger」ではもうEDMかどうかなんてどうでもよくなるくらいの世界観を打ち立てた。
そういった経験値をもってひとつの集大成を見せた曲が、オランダ人アーティスト・R3HAB(リハブ)と組んだ「Eyes On Me(feat.R3HAB)」(2023年)だろう。彼らのEDMの解釈スキルが炸裂した本曲は、ひとつの到達点として象徴的だ。
次の深化の鍵はファンク
徐々に盛り上げて弾けるような、EDMの直線的なノリを料理してきたJO1が、次に進化するとしたらファンクの跳ねたグルーヴに真正面から挑んだタイミングだろう──と思っていたら、ニューシングル『HITCHHIKER(Special Edition)』(2024年)が「Love seeker」を筆頭にファンクネス全開で驚いた。
EDMを軸にした曲を完全に自分たちのものにした彼らは、今こそが次のフェーズに進化していくときなのかもしれない。と同時に、今回ショートマラソンのおかげで、過去作の至るところにファンクの香りを見つけられた。そもそも近作では「HAPPY UNBIRTHDAY」(2024年)や「Dot-Dot-Dot」(2023年)でファンキーなディスコをやっていたし、さかのぼると「Born To Be Wild」(2021年)にもたどり着く。ハウスにファンクのノリをまぶしたような「Born To Be Wild」には、今につながるJO1の原型があるように思う。
ところで、EDMとファンクという両ジャンルの架け橋になったアーティストとして真っ先に挙げられるのがカルヴィン・ハリスである。EDM時代はリアーナなどのシンガーと、『Funk Wav Bounces』といったアルバムでは多くのラッパーとコラボレーションしてきた彼。
それらに照らし合わせてJO1の作品を振り返ってみると、たしかに、セクシーな歌声とラップという双方を巧みに楽曲に活かしてきた点は同様だ。ということは、カルヴィン・ハリスの『Funk Wav Bounces』で披露されているとおり、ラップの多彩なバリエーションというのが今後、JO1の楽曲をさらに幅広く見せていくためのポイントになるかもしれない。
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以上、さまざまな発見があった今回の通し聴き=リスニングマラソン。この先3年後、5年後と、さらなるたくさんのリリースが積み重なったタイミングで、またJO1のサウンド面についてたっぷりと振り返ってみたい。そのときは、もうショートではなくフルマラソンになっているはず。
今後も更新され続けるであろう音楽性によって、初期の曲の聴こえ方もさらに変化していくに違いない。そんな未来に想いを馳せながら、これからもJO1から届けられる音楽を楽しんでいこう。
6月5日(水)発売の『Quick Japan』vol.172では、40ページ以上にわたってJO1の総力特集「時代を変える11の夢」を実施。「Go to the TOP」に迫る合計3万字以上となるソロインタビューを収録。
また、JO1の数多くの衣装を手がけてきた韓国人スタイリストへのインタビュー、『オルタナティヴR&Bディスクガイド』の著者・つやちゃんによる8TH SINGLE『HITCHHIKER』を含むシングル全8作のディスクレビュー、さらにメンバーソロのフォトカードにもなるスペシャルページ入り。
『Quick Japan』の公式ECサイト「QJストア」では、通常の表紙とは別パターンの特装版表紙の販売もあり。
▼『Quick Japan』vol.172収録、JO1ソロインタビュー
河野純喜:「真の自分を受け入れてもらおう」5年目の今、そう思える
川尻 蓮:現状には満足していない 今より11倍強いグループになる
木全翔也:その日その日のトップを目指し誰よりも高い場所に到達する
大平祥生:日本代表は通過点 もっと大きな存在になりたい
金城碧海:「JO1がトップに立つ日が来る」という確信がある
豆原一成:“協調性”と“仲のよさ”は大前提 プロとして個性が輝くグループに
川西拓実:自分の伝えたいことを音楽に乗せて発信したい
佐藤景瑚:この先も人を笑顔にし続ける その思いはずっとブレずにいたい
與那城 奨:まだまだ満足していない やるべきことを積み重ねて、世界へ
白岩瑠姫:見えない努力があったからこそ「もっと届けばいいな」と思う
鶴房汐恩:続けることで新しい夢が出てくる それも全部叶えていきたい
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