10年目も思いどおりに進まない『大宮セブンライブ』。観客との距離の近さは今も変わらず

2024.7.13
大宮セブン

文=釣木文恵 編集=梅山織愛


7月7日でオープン10周年を迎えた大宮ラクーンよしもと劇場。一日大宮セブン尽くしだったこの日、実に3時間にわたるスペシャルライブとして行われた『大宮セブンライブ~10th anniversary~』の様子をレポートする。

改めて浮き彫りになる『大宮セブンライブ』の特殊性

7月7日の大宮ラクーンよしもと劇場は実に賑やかだった。劇場に並べられた大宮セブンの等身大パネルがリニューアル。バルーンで作られたフォトスポットが出現し、ロビー入口には大宮セブンとは切っても切れない存在、オートバックス大宮バイパスからの祝花も。そんななか、『大宮セブンライブ~10th anniversary~』が賑々しくスタートした。

七夕ということもあり、まずは全組が浴衣姿でネタを披露。すゑひろがりずが盛り上げてタモンズにつなぎ、ジェラードンとGAGのコントのあとは囲碁将棋、マヂカルラブリーで締めくくる。6組のバランスのよさを改めて噛み締めていると、全員集合のオープニングがスタート。

大宮セブン
すゑひろがりず
大宮セブン
ジェラードン

マヂカルラブリー村上はこの日、白地の浴衣を着用。体型も相まっておすもうさん感があふれてしまったことから、囲碁将棋・文田大介から「ごっつぁんです」などとイジられる。10年間を振り返り、かつて大宮に存在したガードマンのこと、壁が薄すぎたことなど、初期のころの異様ともいえる雰囲気を懐かしむ面々。

マジカルラブリー村上

そして、この回からGAGとして大宮セブンに再加入した安田ファニーをフィーチャーしたコーナー「安田空白の449日間を取り戻せ!7分でわかる大宮セブンダイジェスト」へ。安田不在の1年数カ月の間に行われた『大宮セブンライブ』のエッセンスを抽出し、安田がひとりで経験していくことで空白を埋めるというもの。しかし、「やっちゃん(安田)のためだけに時間を割きたくない」(村上)という理由ですべてのチャレンジを7分間でやらなければならない。

安田はセブンメンバー全員にキスしたり、電飾を身にまとって客席を1周したりと奮闘していく。それぞれに忙しく活躍する大宮セブンメンバーが唯一集まるのが、月に一度の『大宮セブンライブ』。毎月全組欠けることなく集合する上、持ち回りで自分たちの発案によって企画をやるという負担の大きなことも今に至るまで続けられている。このコーナーでは、いかに大宮セブンライブが貴重で特殊な場か、そしてほかでは見られないようなライブをやっているかが改めて浮き彫りになった。そもそもの企画テーマがおかしなもの、テーマと内容が結びつきづらいものもあるため、安田は「これなんなんすか」「意味がわからない」とぼやきながらさまざまなチャレンジに挑む。そんななかで、安田は紙粘土工作が妙にうまいという長所も見つかった。

思いどおりに展開しない大宮セブンの魅力

続いて、スペシャルゲストとして大宮駅の駅長が登場。今年3月、「鉄道のまち大宮 応援隊」に大宮セブンが任命されたときに安田が入っていなかったことから、追加で任命するためにわざわざやってきたという。しかし、任命証を渡す段になり、「私と勝負をして勝ったら任命します」と突然言い放つ駅長。しかも勝負内容はあるある、大喜利、モノボケという完全なるお笑いバトル。一戦目はあるあるというよりは豆知識を披露して客席の感心を引き出した駅長の勝利。大喜利でも爆笑をかっさらった無敵の駅長。モノボケではハプニングも味方につけてさらに盛り上げる。駅長のあまりの強さに任命が危ぶまれたが、「私の負けです」という駅長の宣言により、無事に丸く収まった。

大宮セブン
「鉄道のまち大宮 応援隊」に任命されたGAG安田ファニー

事前に観客に募った「大宮セブンにやってほしいこと」に応えるコーナーでは、投げキッスがクイズ大会になったり、この日発売となった『埼狂のはじまり』を官能小説風に読み上げてほしいというリクエストがGAG福井俊太郎とタモンズ安部浩章によるコントに発展したりと、どれもひと筋縄では行かない。この、けっして観客が思ったとおりには展開しないことこそが、ずっと変わらない大宮セブンの魅力なのだろう。

大宮セブン
『埼狂のはじまり』を読み上げるGAG福井とタモンズ安部
大宮セブン
ファンからのリクエストに応える囲碁将棋・文田

配信は2時間で終了したが、そのあと会場では10周年を振り返り、怪談風にトークするコーナーが。しかしここでも、ジェラードン・アタック西本による大宮セブンとまったく関係のない話が強烈なインパクトを残して幕を閉じた。

閉演後、大宮セブン全員との写真撮影タイムが実に4年ぶりに限定復活。舞台の上でどこまでも遠くへ行ってしまう様子と、観客との距離の近さ。この先も、大宮セブンは私たちに思いがけない姿を見せてくれることだろう。

『大宮セブン10周年記念本「埼狂のはじまり」』

■大宮ラクーンよしもと劇場10周年記念公演『大宮セブンライブ~10th anniversary~』
2024年7月7日(日)配信開始17:00/配信終了19:00
見逃し視聴は7月14日(日)17:00まで ※販売は7月14日(日)12:00まで
配信チケット:2,500円(税込)
詳しくはこちら

この記事の画像(全41枚)


この記事が掲載されているカテゴリ

Written by

釣木文恵

(つるき・ふみえ)ライター。名古屋出身。演劇、お笑いなどを中心にインタビューやレビューを執筆。

QJWebはほぼ毎日更新
新着・人気記事をお知らせします。