EXO・レイ主催、中国の音楽リアリティショーがすごい。100日間の異文化生活、高クオリティの舞台が見せるアジアポップスの変革

2024.6.11

TOP画像=『百分百出品(Show It All)』YouTubeサムネイルより

文=LIL'OGI 編集=菅原史稀


『クイック・ジャパン』のコンセプト「DIVE to PASSION」にちなんで、「私だけが知っているアツいもの」について綴るコラム企画「DtP」。

本稿ではビートメイカー/プロデューサーとして国内外のアーティストにビートを提供するLIL’OGIが、中国の音楽番組とその出演者を通じてアジアポップスの新たなムーブメントを捉える。

グローバルグループを招く中国の音楽リアリティショー

中国では2024年3月から『百分百出品(Show It All)』という音楽リアリティショーが放送されている。K-POPグループ・EXOのメンバー、レイが主催を務めることで話題を集めた同番組の趣旨は、近年ブームのオーディションとは異なり、デビューを目指す中国の練習生グループが各国からメジャーグループを招き、100日間の異文化体験生活を送りながらともにステージを披露するなかで成長を遂げていくといったものだ。ここに出演するグローバルグループこそ、筆者が今最も注目する存在である。

本稿を執筆時点ではマレーシアのDOLLA、タイの4EVE、PiXXiE、アメリカのBoys World、フィリピンのG22、BINIといった各国を代表する人気グループが参加しているのだが、豊富なバジェットと高いクオリティを誇る中国ハイテク・エンタメの舞台で披露するパフォーマンスは圧巻。各グループのファンダムからの大きな反響はもちろんながら、活動拠点のみならず中国の若者たち(主に女性)からも支持を集めるようになっているのだ。

一方、それぞれの名が日本ではまだ一般的ではないのも実情である。その大きな理由となるのは、各組にとっての自国におけるエンタメ・インフラが現時点ではK-POPに遠く及んでいない状況だろう。実際、彼ら・彼女らはすでに備えていたパフォーマンス・クオリティの高さ、そして個性を『百分百出品』を通じて中国のエンタメ・インフラを活用することにより、他国へ発信することができている。

翻っては、T-POP(タイポップス)やP-POP(フィリピンポップス)などアジア諸国のポップスは、K-POPと同等の土俵を用意することさえできれば、魅力を今よりも広く届けることができるのではないかと思うのだ。

K-POPによるアジアポップスの変革はUSヒップホップと重なる

同時に、長年ヒップホップシーンを観測してきた筆者の目には、同番組の盛り上がりからも伝えられるK-POPのスタイルがかたちを変えてアジアに広がっていく様は、かつてヒップホップが全米へ波及していったさまと重なるように映っている。

もともとヒップホップはNYで生まれ他地域へと波及していったが、当時の日本では「ヒップホップはNYが本場」という風潮が強く、他地域のヒップホップに対して偏見の目を投げかける者も少なくはなかった。やがて西海岸や南部で確立された各自のローカルスタイルもUSヒップホップとして広く認識されていき、現在に至っている。

同様にアジアポップスシーンでも、K-POPやT-POP、P-POP、そしてJ-POPといったようにそれぞれ形成されているローカルスタイルがアジアのムーブメントとしてひとつの盛り上がりを作り上げているのである。「J-POPやK-POPより知られていないから」という理由で他地域のポップスに対して偏見を持ち、目を向けないままでは、今一番ホットな変革を見逃してしまうだろう。ぜひ『百分百出品』を入口に、さまざまなアジアポップスの魅力をたしかめてほしい。

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LIL’OGI

ビートメイカー/プロデューサー。Anarchy、AK-69、DABO、UZI、Fiend(ex-No Limit、Ruff Ryders)など国内外のアーティストにビートを提供している

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