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世界閲覧20億超『喧嘩独学』に懐かしさを感じる理由。「90年代ヤンキーマンガ」から受け継ぐ“成り上がりの妙”とは?

2024.5.1

文=ちゃんめい 編集=高橋千里


ヤンキー・不良マンガの歴史は深い。若者たちを中心に「ヤンキー文化」が全盛だった1980年代から90年代にかけて、彼らのように喧嘩や非行に明け暮れる“不良少年”を取り上げる作品が次々に登場。

すでに文化が衰退した現代においても、ヤンキー・不良マンガの主人公たちはビジュアルや“拳を振るう理由”を時代に合わせてアップデートさせながら、マンガの中で輝き続けている。

フルカラー・縦読みデジタルコミック「webtoon(ウェブトゥーン)」で全世界での累計閲覧数が20億を突破(※2023年12月時点)した『喧嘩独学』もそのひとつ。4月10日よりテレビアニメ化もされ、話題になっている。

本作は“動画配信”が物語のキーになるなど今らしさを感じさせるが、若い世代だけではなく30〜50代にもぜひおすすめしたい作品だ。その理由と魅力に迫る。

テレビアニメ版も大人気放送中!『喧嘩独学』とは?

『喧嘩独学』を「今っぽい作品」とひとくくりにしないでほしい

スクールカースト最下層のいじめられっ子が、喧嘩の動画配信を武器にのし上がっていくアニメ『喧嘩独学』。

全世界で100億回閲覧(※2023年8月時点)された『外見至上主義』をはじめ、世界的ヒットwebtoonを連発する漫画家・T.Jun氏が手がけた作品ということもあり、アニメ化前から絶大な支持を集めている。

『喧嘩独学』の主人公は、スクールカーストの最下層としてクラスメイトから虐げられている志村光太。勉強や運動ができるわけでもなく、周囲から一目置かれるような美貌も、経済的な豊さもない。

何ひとつ武器を持たない光太は、学校の不良にして登録者数70万人の迷惑系配信者のハマケンからオモチャのように弄ばれている。

そんなある日、光太はハマケンの取り巻きであるカネゴンと取っ組み合いの喧嘩をしてしまう。その様子が偶然にも動画配信サイトにアップされてしまい、意外にも大反響を呼んだことで、ふたりは「喧嘩の動画配信」に需要があると気づく。

喧嘩を配信すればたくさんの人から見てもらえて収益が手に入る。それによって、普段アルバイトで稼いでいる額とは比べ物にならない大金が一瞬で得られ、入院中の母の治療費を工面することができる。

金さえあれば、貧困の環境から脱することができる。インフルエンサーとして注目を浴びれば、クラスでの立ち位置も変わる……。

光太は、「喧嘩の動画配信」がこれまでの人生はもちろん、スクールカーストも全部ひっくり返す唯一の切り札であると気づき、カネゴンとタッグを組み「喧嘩独学」というチャンネルを立ち上げる。

拳ではなく“動画配信”でのし上がる主人公、そして近年盛り上がりを見せているwebtoon発の作品……。どこか現代の手触りやカルチャーをフルに感じるが、だからといってアニメ視聴前から「今っぽい作品」とひとくくりにしたり、気後れすることなかれ。

なぜなら、本作は80〜90年代にヒットしたヤンキーマンガの系譜を汲む作品でもあるからだ。

元祖・いじめられっ子の成り上がりマンガ『疾風伝説 特攻の拓』

『疾風伝説 特攻の拓』1巻/佐木飛朗斗、所十三/講談社

喧嘩が強いわけでも、格闘経験があるわけでもない、いじめられっ子の少年が喧嘩に没頭していく……。

理由はどうであれ、ごく普通の一般人が陰か陽かでいえば“陰”の世界に身を投じていく様子は、90年代に一世を風靡した『疾風伝説 特攻の拓』を思い出す。

『疾風伝説 特攻の拓』の主人公・浅川拓も、またいじめられっ子の少年である。ある日、暴走族のメンバーと出会ったことをきっかけに、もっと強くなりたいと自分自身の成長を誓い、不良の世界へと足を踏み入れていく。

そのあとの展開はもちろん、現代ではすっかり一般的となった“自分を変えたいと強く願う、いじめられっ子による成り上がりストーリー”の祖ともいうべき本作の存在は、やはり思い出さずにはいられない。

主人公の“策士”な一面で『カメレオン』を思い出す

『カメレオン』1巻/加瀬あつし/講談社

また、『喧嘩独学』で描かれる成り上がりの過程では、同じく90年代に人気を集めた『カメレオン』の空気を感じる。

『カメレオン』は中学時代にいじめられっ子だった矢沢栄作がヤンキーとして高校デビューを果たし、一目置かれる存在になろうと奮闘するコメディ作品だ。

注目すべきは、ヤンキーとの抗争に巻き込まれるも、悪知恵やハッタリで切り抜けていく矢沢の“策士”な一面。

実は、喧嘩の動画配信でのし上がろうと意気込む光太も、身体を鍛えるなど地道な努力は重ねるが、基本的には「喧嘩初心者がどうやったら勝てるのか?」と、自分でも勝てる方法を試行錯誤して見つけていく策士だ。

たとえば、相手が感情的になった瞬間に喧嘩を仕掛ける(相手が平常心を欠いているため勝率が上がる)など、拳や強さといった真正面からではなく、裏をかいてのし上がっていく。

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まだまだある!作中に漂う80〜90年代ヤンキーマンガの描写

ほかにも『喧嘩独学』の喧嘩シーンで描かれる、容赦のない暴力と屈辱。アニメでは、原作以上に顔をしかめたくなるほど痛々しいし、時にはこちらも心が沈むくらいの絶望を感じる。

この手加減のない喧嘩シーンには、時代を超えて愛され続ける骨太なヤンキーマンガ『ろくでなしBLUES』や『クローズ』を重ねてしまう。

ヤンキーマンガにおいて、暴力描写はある種の魅力として語られることが多いが、たしかに暴力や屈辱が重ければ重いほど、のし上がっていく過程が輝いて見えるのかと。

ヤンキーマンガにおける暴力描写の価値と、『喧嘩独学』という物語に没頭してしまう理由を垣間見た気がする。

「喧嘩をする理由」が生み出す圧倒的共感性

かつてのヤンキーマンガや成り上がりストーリーのエッセンスを感じる『喧嘩独学』。若い世代はもちろん、長い間マンガを愛してきた30〜50代にとっても、きっと懐かしさと胸アツで心満たされる瞬間があるはずだ。

そして、過去の名作ヤンキーマンガに想いを馳せるのと同時に、ぜひ光太が喧嘩をする理由に注目してほしいのだ。

ここで少し思い出してほしい。かつてのヤンキーマンガに心を動かされたり、どこかひとつのシーンに共感したりすることはあっても、じゃあ自分も主人公と同じように喧嘩ができるか?と聞かれたら……。

──友情のため、自分のプライドのため、トップの景色が見たい。さまざまな理由で、かつてのヤンキーマンガの主人公たちは命をかけて拳を奮ってきたけれど、その喧嘩への初期衝動に自分を重ねる人はそう多くないのではないだろうか。

だが、光太の初期衝動は非常にシンプル。喧嘩をすることでお金が手に入る、貧困環境から抜け出せる、スクールカーストをひっくり返せる……。根源的欲求がトントン拍子で満たされるのだとしたら。

もちろん、いかなる理由があろうと暴力には賛同できないが、もしも自分が光太だったら、同じように恐れずに拳を振るい続けるかもしれない。

そんな『喧嘩独学』に漂う圧倒的共感性は、次第に光太への応援心につながり、動画チャンネル「喧嘩独学」のいち視聴者であるような一体感と熱狂を生むのだ。

テレビアニメ『喧嘩独学』本PV

声やモーションが加わり、より各キャラクターたちの息吹を感じるアニメ版では、懐かしさ、胸アツ、そして一体感もひとしお。ぜひ、この機会に本作を喰らってみてほしい。

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テレビアニメ『喧嘩独学』

フジテレビ「+Ultra」にて毎週水曜24時55分から放送、各種配信サービスにて配信中。

テレビアニメ『喧嘩独学』公式サイトはこちら

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ちゃんめい

マンガライター。マンガを中心にエンタメ系のインタビュー、レビューの執筆や、女性誌のマンガ特集に出演。毎月100冊以上マンガを読む。

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