初進出も常連もその実力はお墨つき『M-1グランプリ2023』ファイナリスト9組の魅力
ついに『M-1グランプリ2023』のファイナリストが決定した。過去最多エントリーとなった8540組から激戦を勝ち抜いたのは、カベポスター、くらげ、さや香、真空ジェシカ、ダンビラムーチョ、マユリカ、モグライダー、ヤーレンズ、令和ロマンの9組。12月24日(日)に行われる敗者復活戦で残る1組が決まり、同日の決勝戦で10組が戦う。
本記事では、YouTubeのリアルタイム配信で準決勝を観たブロガーのかんそうが、ファイナリスト9組の魅力を語る。12月24日(日)に控える決勝戦の参考として、ぜひご覧いただきたい。
カベポスター(2年連続2回目)
「マイナスイオンが出ているのでは?」と錯覚するほど心地いい声と、脳内に情景が浮かんでくるような独特の言葉選びが秀逸で、一つひとつ丁寧に笑いの方程式を構築させながら、後半で一気に爆発させていく。
ネタ作りを担当しているボケの永見大吾は、2020年からSNSで継続的に「世界で1人は言ってるかもしれない一言」を投稿しており「言葉」の探求を常に続けている。彼らにしかデザインすることのできない漫才をして、日本中をカベポスターで埋め尽くしてほしい。
くらげ【初】
横浜DeNAベイスターズの大貫晋一に激似の杉昇と、坊主頭にアロハシャツの出で立ちをしている渡辺翔太のコンビ。「このネタといえばくらげ」というよりも、新しいシステムを次々と生み出す独創性の高さが魅力で、ネタによってはボケ・ツッコミの概念すら覆してくる。
くらげの中には、命の危機を察知するたびに若返る不老不死の能力を持つ「ミズクラゲ」という珍しい個体も存在する。彼らも、出てくるたびに「今度は何を見せてくれるのか」とワクワクさせてくれる漫才の不老不死だと思った。
さや香(2年連続3回目)
2021年からは石井がボケ、新山がツッコミと漫才のかたちをシフトチェンジし、その結果『M-1グランプリ2022』では準優勝という成績を残した、今大会の優勝候補筆頭コンビ。
理解できるようでまったくわからない独自の理論を展開させる石井に対し、振り回されながらも「バケモンにはバケモンをぶつけんだよ」と言わんばかりに、それ以上の暴論をぶつけ相殺させる新山。さや香の漫才を見ていると、インファイター同士のボクシングの試合を見ているときと同じ爽快感がある。
真空ジェシカ(3年連続3回目)
もはや決勝の常連となりつつある彼らだが、漫才中だけなく、どんな局面においてもボケ続ける異常なメンタリティこそ魅力なのではないだろうか。
決勝進出者発表会見では、今年は昔のゆってぃの電子マスクを被り周囲を混沌の世界へと誘っていた(ちなみに昨年はMicrosoft Officeのイルカを出現させていた)。さらに、昨年の決勝敗退時にも『キングオブコント』2本目前の赤い布を羽織るスタイルで待機をするなど、画面から消える最後の1秒までふざけ続けていた。今年はいったいどんな格好をしてくれるのか、そこにも注目したい。
ダンビラムーチョ【初】
昨年の敗者復活戦で、3分間ひたすら森山直太朗の『生きとし生ける物へ』を歌い続け、人々に衝撃を与えたダンビラムーチョ。
そのネタを始め、近年は大原優一の芸人離れした美声による歌ネタが最大の武器なのだが、ただの飛び道具としての歌ではなく、そこにはしっかりとした理屈がある。気が遠くなるほどの試行錯誤を重ねた結果、彼らが最もウケるかたちとして導き出されたのが「歌」であり、「漫才か否か」という狭い理屈をねじ伏せる凄まじいパワーがある。
もともとは歌があまり得意ではなかった原田フニャオの歌唱力を向上させるために、原田のツッコミに対し普段は何も言わない大原が歌の指導をし、原田は本番直前まで壁に向かって歌の練習をしたというエピソードがあるなど、ネタを完璧に仕上げるために一切妥協をしないその姿はまさに職人。
マユリカ【初】
夜道に立っていたら卒倒してしまいそうなほどに白目が恐ろしい阪本と、マッドサイエンティストの笑い方をする中谷。一見とっつきにくそうな印象を受けるが、2021年にはラジオ関西のPodcast番組『マユリカのうなげろりん!!』の企画で、本格的なビキニ写真集『Perfect!!』を発売し、青い海と照りつける太陽をバックにアイドル顔負けのスマイルを見せるなど「怪しさ」と「かわいさ」を両立させている稀有なコンビ。幼稚園で出会った幼なじみという関係性からくる阿吽の呼吸は古き良き漫才の匂いを感じさせる。
モグライダー(2021年大会以来2回目)
『M-1グランプリ2021』で初の決勝に進出し「美川憲一がさそり座の女以外である可能性を全部消したい」という漫才で一躍ブレイクを果たしたモグライダー。
存在そのものが笑いの権化と言っても過言ではないほど天然を爆発させるともしげと、ミスをひとつも逃さず鬼のような口調で鋭くツッコミ続ける芝大輔、大御所の芸能人たちによけいなお世話をする漫才は、どこまでがネタでどこからがアドリブなのかわからず、見るたびに脳を溶かされる。
ふたりのキャラクターが世間に浸透してからも、そのキャラクター性は一切失われることなくより磨きがかかっており、錦鯉が優勝したときのように、むしろ追い風となるに違いない。
ヤーレンズ【初】
長らく「いつ決勝に行ってもおかしくない」と囁かれていた実力派のコンビが、ついに決勝の舞台に躍り出た。柔らかそうな雰囲気からは想像できないほど、凄まじいほどのテンポで進む漫才。
しかもただ速いだけでなく、老若男女が理解できる広いボケが続いたかと思えば、『HUNTER×HUNTER』で団長の手刀を見逃さなかった人が「オレでなきゃ見逃しちゃうね」と言いたくなるような狭いボケも入れ込んでくる、その振り幅の大きさはまるでサザンオールスターズの楽曲。何番手になろうが、確実に爆笑をかっさらってくれるはず。
令和ロマン【初】
芸人でありながら超がつくほどのお笑い好きのコンビで、ボケの髙比良くるまは『月刊芸人』の中で「誰よりも近くでいっぱいM-1を観るために勝ちたい」と語るほど、M-1への情熱は人一倍強い。
自身のYouTubeチャンネルでは「ニッポンの社長が夕方のチャイムをサンプリングした曲を使う」「マユリカの中谷さんが間違えて誕生日にもらったラブドールと一緒に出てくる可能性ある」など準決勝の展開をあらゆる角度から徹底的に想定していた。
この動画は半分以上ネタかもしれないが、芸人目線とファン目線のふたつを持っているからこそ、自分たちを俯瞰的に見て「どうすれば最大値でウケるか」を分析し、的確に実践しながらアップデートしているような印象があり、令和ロマンの漫才は見るたびにどんどんおもしろさが増している。
ひと言でいえば「進化の化物」。決勝という舞台を経験する彼らがこれからどこまでおもしろくなるのか楽しみでしかない。
ファイナリストの紹介は以上。12月24日は、お笑いファンにとって間違いなく最高のクリスマス・イブ。もはやプレゼントなどいらない。当日は昼からピザとチキンとビールを用意して、万全の状態で楽しみたい。
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