韓国人のお義父さんが襲来!? 日本を楽しんでもらうため、おもてなしコースを考えるも……

本日は晴天なり

ピン芸人・本日は晴天なりによる連載「バツイチアラフォーの幸せだけじゃない日常」

先日、韓国に住む義父から突然、「明日、日本に行く」と連絡があったという。5年ぶりに日本を訪れる義父に日本を楽しんでもらうため、夫婦でおもてなしコースを考えたそうだが、なかなか思いどおりにはいかなかったそうで……。

行く行く詐欺、4度目の正直

私の旦那さんは韓国人なので、お義父さんも韓国人で韓国に住んでいる。

そんなお義父さんから突然、「明日、日本に遊びに行く」と連絡があった。しかし、それを旦那から聞いた私の第一声は「え~? ほんとかなぁ?」だった。

お義父さんは“行く行く詐欺”の常習犯。最初に「来週、日本に行く!」と言われたのは、半年前のお義父さん自身の誕生日。年末の大掃除でもこんなに掃除したことないってくらいにすみずみまでピッカピカに掃除して、ベタなサプライズで喜ぶという義妹からの情報をもとに、風船やキラキラ短冊、HAPPY BIRTHDAYの飾りをポチり、客人用の布団を買いに行こうとした矢先、「やっぱり行けなくなった」と連絡が来た。

仕事の都合もあるし仕方ないかと気にしていなかったが、そんな感じの行く行く詐欺が続くこと3度。毎回、行くと言われるたびに準備をしているが、2日前くらいに仕事で行けなくなったと連絡が来るのだ。

今回も「明日行く」との連絡だったので、「はい、ダウト! “明日行く”は急すぎて現実味がない!」と、断定してのんきに過ごしていた。すると、夜中の2時くらいに空港に向かってると連絡が来た。

慌てて四角い部屋を丸く掃除、床に散らばった小物や洋服は押し入れに隠し、見えてるとこだけ大急ぎで片づけた。

お義父さんと会うのは今回で2回目。

日本語が一切話せないお義父さん、韓国語がほとんど話せない私。言葉もろくに通じないので、会うのは想像以上に緊張する。

我が家に到着するやいなや、私のことを愛してやまない旦那はお義父さんに「うちの奥さんは、歌もうまくて、ダンスも踊れるコメディアンで、MCもできる世界一おもしろい嫁だ!」と自慢する。ハードルスーパーバカ上がり状態だ。愛されているのは痛いほど伝わったが、本当にやめてほしい。

散歩に出かけスーパーに立ち寄った際、お肉売り場で私が何気なく「韓国風焼き肉って書いてあるのにメキシコ産だね~」と言うと、旦那が意気揚々と通訳した。しかし、お義父さんのリアクションは「ふ~ん」のひと言。こちらもジョークで言ったつもりはないが、旦那の嫁自慢でハードルが上がってるぶん、普通の発言もスベってると思われるのでは!?と、不安になってしまう。旦那の嫁自慢がお義父さんの脳にひと言も残っていないことを願った。

日本と韓国の違いを満喫

5年ぶりに日本に来たというお義父さんは「YouTubeで日本の広告が流れてるぞ! 不思議だ!」とか、「トイレとお風呂が別だからスリッパがなくても足が濡れないな!」(韓国はユニットバスの家がほとんどなので)など、日本と韓国の違いを楽しんでいた。

急遽ではあったが、できるだけ日本っぽいところを案内しようと旦那と相談しておもてなしコースを考えた。

1軒目は焼き鳥店へ。西洋人っぽいお客さんが2、3組ほど座っており、お義父さんも旦那も声をそろえて「外国人多いな~!」と言っていた。ふたりも外国人だろ!と思いつつ、メニューを選ぶ。お義父さんは「野菜は食べたくない! 肉だ! 肉!」と言った。

そこで、店おすすめのレバーを頼んだが、お義父さんの箸が進まない。韓国ではスンデ(豚の血液やもち米などの腸詰め)をおいしそうに食べていたし、「俺は中国に出張でよく行ってたが、中国ではムカデを食べるらしいぞ!」なんて言ってたので、てっきりゲテモノ得意アピールだったのかと思いきや、どうやらレバーは怖くて食べられないとのことだった。

旦那も全部を通訳してくれるわけじゃないので、あとから知ったのだが、どうやらもも肉などが食べたかったらしい。野菜は食べたくないと言われ、選択肢から「ねぎま」を外したのが間違いだった。

私は酔わないと韓国語をしゃべれないなと、お酒を飲んだ。レバーをよけるお義父さんに「アッパ、エギエヨ?(お義父さん、赤ちゃんですか?)」なんて声をかけたりして、自分的には少しリラックスしてきたなと思ったが、たった1杯で吐いた。極度に緊張していたのだろう。

国籍関係なく楽しめるカラオケ

2軒目は生バンドカラオケへ。お義父さんは、自宅マンションにカラオケルームを作るほどカラオケやバンドが好きなので、日本に来たら連れて行きたいと考えていた。

入口のお兄さんに「外国人、大丈夫ですか? 外国の歌あります?」と尋ねると、「僕モ外国人デス~」と言われた。

ここでメンバー紹介!
ドラム! 長身で立派なヒゲのお兄さん(メキシコ人)!
ベース! 帽子にメガネのお兄さん(アメリカ人)!
ギター! 金髪のお兄さん(たぶん日本人)!
ボーカル! お義父さん(韓国人)!
一夜限りの多国籍バンドによる、生バンドカラオケスタート!!

日本でいうところの昭和歌謡曲的な曲調の歌をしっとりと歌い上げるお義父さん。

平日の早い時間だったためか、しばらく貸し切り状態だったが、途中で白髪の男性がひとりで来店した。ひとりで生バンドカラオケにやってくるなんて、よっぽど歌が好きな方なのだろう。

その白髪の男性は、なんと超若者ソング・tuki.の「晩餐歌」を歌い始めた。40歳の私ですら推しがTikTokでカバーしているのを聞いて最近知ったばかり。元キャバ嬢の悲しき習性なのか、間奏で私は「え~! こんな新しい歌を!? すごーい!!」と大声で褒めちぎった。

そんななか、お義父さんは私にも歌ってほしいと頼んできた。私が歌うのは和田アキ子さんの「古い日記」。

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この曲を選んだのは、白髪紳士へのメッセージでもあった。紳士よ、ここに若者はいません。歌謡曲を歌うのです。というか歌謡曲を歌ってほしいのです。

しかし、そんなメッセージは届くこともなく、昭和の曲を歌う私と令和の曲を歌う白髪紳士のツーマンライブは続く。

2、3曲ずつ歌ったところで、お義父さんが再びステージへ。韓国語の曲を歌ったことで、白髪紳士がこちらが韓国人客だと気づいた。すると、サービス精神なのか、白髪紳士もBTSを歌ってくれた。おもてなしの「Dynamite」。しかも、軽く手を上げてファンサまでしてくる。

私は、またも元キャバ嬢の悲しき習性を発動し「え~! BTS!? すごーい!!」と大声でハシャいだ。一方のお義父さんはそもそもそれがBTSの曲だとわかっておらず、「何? 誰の曲!? え? おじいちゃんがBTS歌ってんの!? スゴイね!」と言っていた。もちろん韓国語なので紳士には届いていない。

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そのあと、X JAPANを歌い始めた白髪紳士をひとり残し、我々は店を去った。

お義父さんの本当の目的

3軒目は普通のBarへ。酔っ払った旦那は、もう自分がどっちの言語を話してるかわかっておらず、ずっと韓国語で私に話しかけてくる。税金の話、コロナ禍の話、買ったばかりのスニーカーからキュッキュッと音がして子供みたいで嫌だった話、などなど。親子の会話は尽きず、私は静かにふたりの話を聞いていた。

シメの4軒目はとんこつラーメン屋へ。韓国でのラーメンは袋ラーメンだけで、日本で食べるようなお店のラーメンは存在しない。とんこつラーメンが一番日本っぽいのでは?と思い、お気に入りの店に連れて行った。しかし、韓国のラーメンは辛いのが普通なので、日本のラーメンはしょっぱすぎたようだ。ここでもお義父さんはひと口ほどしか食べることができなかった。

焼き鳥もラーメンもほとんど食べられなかったお義父さん。絶対にお腹空いてるはずだよな~と思っていたら、帰りにコンビニで、たまごサンドふたつとアイスクリームを買って、家でムシャムシャ食べていた。韓国に行ったときはわからなかったが、どうやらお義父さんは超子供舌だということが判明した。

ちなみに、近年は日本でもキャッシュレスの店が増えたが、焼き鳥店もBarもラーメン屋でもカードが使えず、お義父さんは現金のみの店が多いことに驚いていた。「脱税天国じゃん!」と、ホリエモンとほぼ同じこと言っていたが、ぐうの音も出なかった。

私が韓国に行ったときは、道端の屋台ですらキャッシュレスだった。キャッシュレスといっても、口座から口座へ直接送金されるシステムらしく、私は経験したことがない方法だったが。

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韓国の道端の屋台

2日目は私が推しの舞台の観劇に行ったため、お義父さんはどこにも行かず、家でずっとYouTubeを観ていたとのこと。私の推したちでいっぱいだったYouTubeの履歴は、釣りとスルモッパン(お酒を飲みながらご飯を食べる動画)で埋まっていた。

「どこか行きたいところはないのか」と尋ねても、「特にない」と答えるお義父さん。本当に、ただ単純に息子に会いに来たんだろう。

強いて言うなら、ハンバーガーが食べたいと言っていた。日本らしい店に連れて行ってあげたい旦那のおもてなし精神もわかるが、もうマック連れてってやれよと思っていた。

そして、3日目の早朝にお義父さんは帰国した。

嵐のような2泊3日が過ぎ、ホッとしたが、帰国後すぐに連絡があり、長期休みがあるから今度は1週間ほど泊まると張りきっていた。

次は、毎日ファミレスに連れて行こうと思う。

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太田プロダクション所属のピン芸人。キャバクラバイト歴10年、身長173センチの長身女子。推し事が中心の日常も、YouTube『本日は晴天ちゃんねる』にて垂れ流し中。

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