“BLソムリエ”がおすすめする、雨上がりみたいにスッキリした気持ちになれるBL作品

2020.3.15
BLソムリエアイキャッチ

構成=鈴木 梢 監修=BL作品レビューサイト「ちるちる」


商業BLレビューサイト「ちるちる」が認定した“BLソムリエ”が、『QJWeb』読者の方々のためにとっておきのBL作品をお選びする「BLソムリエが選ぶとっておきの1本」

今回は、雨上がりみたいにスッキリした気持ちになれる作品や、男子高校生の尊い日常を描いた作品などをお選びしています。

雨上がりみたいにスッキリした気持ちになれる

「読み終わったあと雨が止んだようなスッキリする気持ちになる作品ありますか? 高校生、大学生ものが好きです。できるだけ最近発売されたものでお願いします」(増田ひかる様・女性)

吾妻香夜『ラムスプリンガの情景』
引用:ちるちる

BLソムリエとっておきの選書コメント>

「雨が止んだようなスッキリする気持ち」と伺いまして、映画『ショーシャンクの空に』が思い浮かびました。言わずと知れた有名な洋画ですが、こちらと近い気持ちになれるラムスプリンガの情景はいかがでしょうか。年齢的に攻めは大学生ですが、学生とは異なりますので、先にお詫び申し上げます……。

本作は80年代のアメリカが舞台。宗教と夢、変化がテーマの作品です。自給自足で生活する宗教団体「アーミッシュ」。アーミッシュの子供は酒やタバコ、セックスなどが禁止されていますが、16歳の「ラムスプリンガ」と呼ばれる期間だけすべてを許され、田舎から出て街で生活します。

そこで出会ったのが、アーミッシュの攻と、ダンサーの夢破れ身体を売る受。受との絆を捨てアーミッシュとして生きるか、家族と絶縁してふたりで人生を歩むか……。マリアナ海溝のように深いストーリーなため、読後に感想文が書きたくなること必至です。

永遠に見守りたいこの日常

「男性同士のカップルがひたすらいちゃついている作品を探しています。付き合うまでの過程を描いたものも好きですが、すでに付き合っているふたりの日常みたいなものが見たいです。絵柄はクセがなくて綺麗なものがいいです」(鈴華様・女性)

佐岸左岸『春と夏となっちゃんと秋と冬と僕』
引用:ちるちる

BLソムリエとっておきの選書コメント>

カップルがひたすらいちゃついている日常といえば、まさにぴったりのものがございます。春と夏となっちゃんと秋と冬と僕は、田舎町に暮らす高校生のナツオとシマのカップルを描いたBLマンガです。

この作品にはドラマティックな物語もなければ、激しい感情の揺れ動きも描かれません。ただ淡々と、ふたりのカップルが毎日を過ごす様が描かれています。ページをめくるたびに心に沁み入る、何気ない日常の中の瞬間……まさに「尊い」の極地。もう、永遠に見守りたいこの日常。

なんといってもナツオの無邪気なキャラクターと、それを包むシマの慈愛が魅力的。お互いに大好きすぎるのが伝わってきて、見ているこちらも幸せな気持ちになれます。豊かな自然と流れる時間を鮮やかに映し出す美しい絵柄と圧倒的な描き込み量にもうっとりしてしまいます。ぜひ、ふたりのかけがえのない日常を見守っていただければと思います。

優しい気持ちになれる、高校生恋愛のリアル

「高校生同士の、優しくかわいらしく、読んでいる側も優しい気持ちになれる内容の作品がありましたらぜひ教えてください」(たまき様・女性)

たなと『あちらこちらぼくら』上
引用:ちるちる

BLソムリエとっておきの選書コメント>

質問者さんは、癒されたい気分なのでしょうか。「甘々」や「おもしろい」というよりもあくまで「優しい気持ち」になれる作品なら、ほのぼの日常系の『あちらこちらぼくら』がおすすめです。

BLカテゴリでありながら、限りなく「匂わせ」ジャンルに近い立ち位置。攻め受けの概念も最後までほぼありません。ほのぼの日常系ですが、ここで描かれているのは恋愛の「リアル」。本作はふたりのゴールまでの道のりをエグいほどに焦らします。読者の方々もきっと身に覚えのあるであろう、青春時代特有の不安定な友人関係、お互いがお互いの距離を測る絶妙な空気感……。本作を読んでいると、実際に体験したコミュニケーションの感覚がフラッシュバックします。

ではなぜこの作品を推すかというと、こんなに焦れ焦れなふたりがたまらなくかわいらしいからです。BL特有の萌え設定がなくとも、高校生男子がありのままに日常を送っているだけで尊いのだと気づかせてくれる、高校生BLの金字塔です。

今回は、3名の方々にとっておきのBL作品をお選びいたしました。これからも皆さまからのご要望を心よりお待ちしております。

今後のご回答のペースとしましては、
【第5回】3/19(木)までのご相談 → 3/29(日)にご回答
【第6回】4/2(木)までのご相談 → 4/12(日)
を予定しております。

※編集部が選ばせていただいた一部のご質問にお答えいたします。あらかじめご了承ください。

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