「準決は確定、調子よければ決勝も」コンビで同居中のエバースが『M-1』で結果を残してやりたいこと

エバース

文・編集=梅山織愛 撮影=晴知花


神保町よしもと漫才劇場に所属するお笑い芸人に自身の“出囃子”について聞く連載「大舞台で響かせたい」。今回はエバースが登場。

ドラマ『木更津キャッツアイ』(TBS)の挿入歌を出囃子にしているふたりは、よくこのドラマの登場人物たちのように“地元のツレ”に間違われるという。そんなふたりのコンビ結成の理由やふたりからあふれる“地元のツレ”感に迫った。

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佐々木隆史(ささき・たかふみ/1992年11月6日生まれ、宮城県出身)と町田和樹(まちだ・かずき/1992年4月24日生まれ、神奈川県出身)によるコンビ。ともにNSC東京校21期出身。2022年の『M-1グランプリ』では、準々決勝進出。

エバースの出囃子 木更津キャッツアイ feat. MCUの「Kisarazu Cat’s’n Roll」

──この曲はドラマ『木更津キャッツアイ』の挿入歌ですが、なぜこれを出囃子にされたんですか?

佐々木隆史(以下、佐々木) 『木更津キャッツアイ』って高校の野球部で一緒だったやつらが大人になっても一緒に草野球をやってて、その日常の中でいろいろある、みたいなドラマなんですけど観てきたドラマの中でトップになるくらい僕が好きでして。しかも僕らふたりとも学生時代、野球部だったし、それで野球ネタもよくやるし、この曲なら出囃子っぽさもあるし、とかいろいろ考慮して選びました。

町田和樹(以下、町田) すごいな、そんなにちゃんと理由があるって知らなかったわ。でも、僕も聴いたとき、めっちゃいいなとは思いました。始まります!みたいな雰囲気もあるので出やすいし。プレイボール感もあるからとかでしょ?

佐々木 ?

町田 え? それは違うの? 褒めてるんだけど。

──(笑)。でも、プレイボール感、わかります! あと、ドラマの主人公たちのような幼なじみ感がおふたりにはある気がします。

町田 それよく言われるんですよ。地元で一緒だったんでしょ?地元のツレなんでしょ?みたいな。

佐々木 お前はそういう関係性をかっこいいと思ってる感じもあるしな。

町田 お前がな、俺はまったく思ってないから。こいつNSCからしか俺のこと知らないのに、学生時代も一緒に過ごしてきたみたいな感じで、俺の学生時代を勝手に決めつけてしゃべるんですよ。そのせいで地元から一緒って言われることが多いのかもしれないです。

佐々木 そんなことないですよ。

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エバース(左:町田和樹、右:佐々木隆史)

結成当初はトガりまくってた

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──そもそもおふたりの結成のきっかけはなんだったのでしょうか?

佐々木 僕はNSC入ってすぐ別のやつと組んだんですけど、最初のネタ見せの授業のあと、そいつが辞めるって言い出して、すぐに解散したんです。だけど、そいつが代わりに一回飯に行ったやつがツッコミでボケのやつ探してたから紹介するってなって、そのとき来たのが町田でした。最初はその3人でバーミヤン行ったんですよ。

町田 そうですね、それが出会いですね。

佐々木 初対面なのになぜか町田が仕切ってて、「まあセンスありそうだし、一回やってみるか」って言われました。

町田 そんな偉そうだった?

佐々木 これは本当です。

町田 まあ、最初は誰でも下からいくのは違うと思うじゃん。

佐々木 でも、そのときに「いったん、お互いネタ考えてこよっか」って言われたんで、次にふたりで会うときに俺はネタを考えていったんですけど、こいつ何も考えてこなくて。意味わかんないですよね。そこからずっとネタは僕が書いてます。

──町田さんから「考えてこよう」って言ったんですよね(笑)?

町田 そうですね。だから絶対、考えてこなきゃだったんですけど……。なんで書いてこなかったかはマジで覚えてないです(笑)。まあ、出たとこ勝負でなんとかなるかなと思ったんでしょうね。あのときから一回もネタ持ってきたことないな~。

──でも、そのとき町田さんは佐々木さんと組みたいとは思ったんですよね?

町田 それは思ってました! 男前だなと思ったんで! ビジュアルがいいってけっこうデカいじゃないですか。

佐々木 まあ、人気も出るしね。

町田 あとは、何がよかったんだろうな~。でも、ちょっとトガってたんで、しゃべりづらいかもとかは思いましたよ。今より田舎っぽかったし。

佐々木 町田もめちゃくちゃトガってましたよ。NSCって入ったときにAクラスから成績がいい順にクラス分けされるんですけど、Aは7、8組しかいなくて、僕らは20組くらいいるBだったんですよ。だから、そんなに出しゃばれるレベルじゃないのに、CとかDクラスのやつの前を通るときはすごい肩で風切って、Sクラスみたいな顔して廊下歩いてました。

町田 (笑)。まあ、そういうときもありましたよ。変に謙虚すぎてもよくないんで、ちょっとは堂々とね。これは言いすぎですけど。でも、ふたりして間違ったトガり方をしてました。同期と仲よくするのはダサいみたいに思ってたんで、しばらくはふたりだけでいましたね。

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──いつごろからまわりの方とも打ち解けていったんですか?

佐々木 僕ら4年目のときに『M-1グランプリ』で初めて3回戦に行ったんですよ。3回戦行けるかどうかって若手にとってはけっこうでかくて、当時、同期で3回戦に行ったのは僕らとネイチャーバーガーと解散しちゃったんですけど衝撃デリバリーくらいで。そのくらいから先輩とか同期とも話すようになりました。楽しくなってきたのもそのくらいからですね。

町田 そうですね、そのくらいかかりましたね。

──ほかの人と打ち解ける期間としては、かなりかかったんですね。初めて『M-1』3回戦に行ったときは、その年までと何か大きく変えたりしたんですか?

町田 どうですかね? もしかしたら何か変えたんじゃなくて、変わらなかったからよかったのかもしれないです。もしかしたらですよ(笑)。

佐々木 かっこつけてるなー(笑)。でも、たしかにこれきっかけで、とかはないですね。もしかしたら自分たちの技術が追いついてきたのはあるかもしれないです。それまでもずっとこういうネタおもしろい!と思うものをやってたんですけど、技術がないんでうまく見せられてなくて。場数を踏んで、技術がネタに追いついて、ウケ始めた感じはありますね。ネタ自体は最初からおもしろかったもんな?

町田 はい!(笑)。特に僕がやばかったんで。

目標は『M-1』で結果を残して別居

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──今では以前のようにふたりでいる時間はそんなにないんですか。

佐々木 そうですね。僕ら週1回、stand.fmでラジオやってるんですけど、ふたりでちゃんと世間話するのはそのときくらいかもしれないです。

町田 あとは、ネタ合わせ前とかか。

佐々木 たしかに。すぐネタ合わせの話を始めると、空気悪くなるんですよ。アイドリングじゃないですけど、町田の緊張をほぐしてあげないとなんで。

町田 そんなことないけどね。今、僕ら一緒に住んでるんですけど、ネタ合わせは外に出てやるんで、切り替えるじゃないですけど、そういう時間も必要かなとは思います。

──一緒に住んでるんですね! ネタ合わせは家でやらないんですか。

佐々木 難しいところなんですけど、家だと進まないんですよ。場所を変えて、仕事です、みたいな気持ちにしないとできないんですよ。家でやってた時期もあるんですけど、まあ進まないです(笑)。半日くらい何も進まないとかざらにあったんで、スイッチ入れるためにも外でやるようになりましたね。いつでもネタ合わせできるぶん、まだがんばんなくていいや、みたいになっちゃうんですよね。

──一緒に住む理由として、ネタ合わせがいつでもできるからもあるのかと思っていました。

佐々木 もともと町田は実家に住んでたんですけど、劇場と実家の間に僕の家があったんで、僕の家を拠点に生活するようになったんですよ。コロナとかもあってUber Eatsの配達を都心でやるようになってからはよけいに。じゃあ家賃払えよ、ってなったのがきっかけだったんですけど、たしかにネタ合わせの時間が増えるとかもありました。

──では、別で暮らしたいという思いもあるんですか?

町田 それは話としてめちゃくちゃ出てます!

佐々木 そうですね。今年の『M-1』で最低、準決勝。調子よければ全然決勝も行けると思うので、結果を出して引っ越し費用を稼ぎたいです。しかも契約が切れるのが来年の2月とかなんでちょうどいいんですよ。

──つまり、今年の『M-1』での活躍は期待していいということですね?

町田 今年は行きますね。

佐々木 準決は確定なんで、引っ越しも確定です。決勝も全然、可能性あるんで。

町田 僕ら若手っていっても8年目なんで、もうそろそろ結果出さないと、と思います。

佐々木 町田がジャマさえしなければ今年は大丈夫です。

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梅山織愛

(うめやま・おりちか)1997年生まれ。珍しい名前ってよく言われます。編集者・ライター。自他共に認めるミーハー。チョコレートとかき氷が好き。

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