ピン芸人・本日は晴天なりによる連載「バツイチアラフォーの幸せだけじゃない日常」。
前回も元旦那の浮気癖について書いたが、浮気による事件はまだまだあるそう。今回はその中でも特に忘れられない“100万円没収事件”を紹介。さらに、浮気を繰り返されながらも結婚に至った理由、そして別れに踏み切った当時の心境を振り返る。
前回の記事はこちら
何度浮気されても「一緒にいてくれるだけでじゅうぶん」と思い、結婚。離婚した今だからこその後悔
だんまりを決め込んだ彼とのバトル
ある年のクリスマス、ライブ出演を終え、帰ると彼はすでに眠っていた。だから何気なく彼のスマホを確認したら、彼は出会い系サイトで出会った女とLINEでやりとりをしていた。(前回も書いているが、彼のスマホを勝手に見ることは了承済み)
出会い系サイトで連絡先を交換し、やりとりを開始するいつものパターン。私との出会いとも同じパターン。
「顔写真ちょーだい」と女に言われ、ネットから拾ってきたような見ず知らずの男性の自撮り写真を「これが俺です。ブサイクでごめん」と送り、年齢もサバを読んでいた。
よりによってクリスマスにこの浮気未遂が発覚したことにより、私はいよいよブチ切れた。100万円払うか、「僕はこれからも浮気しま~す!」と宣言してる動画を撮らせろ、と2択を提案。「どちらも無理なら別れます」と伝えた。その結果、彼の口から出た言葉は「全部無理!(どっちもやりたくないけど、別れたくもない)」だった。
私は「“無理”は問屋が卸さないだろ!」と声を荒らげた。だが、話してるうちに彼は過呼吸になり、ハァハァ言いながら自室へ消えていく。私はそんな彼を追いかけて、話のつづきをしようとするも、彼はベッドに潜り込み、ピクリとも動かなくなる。「ねえねえ!」「ねえってば!」「お~い!」と呼びかけても微動だにしない。
そうしてるうちに私がバイトの出勤時間になってしまい、やむなく退出した。
起きてる彼に会ったのは、それから3日後。
もとから生活リズムがバラバラなので、同じ家の中にいてもずっと会えずにいた。
何も言ってこないので私から彼の部屋に話しに行ったら、3日前と同じように何を言ってもだんまり決め込んで、ベッドに横たわり、天井の一点を見つめていた。
「ねえ!」「ちょっと!」「何これ!」「どーゆう状況!?」体を揺すっても人形のように動かない。1時間くらい体を揺らし、声をかけつづけたが、精神が蝕まれた人のフリをされて取り合ってもらえなかった。
本当に精神を蝕まれていたら、これ以上責めるわけにはいかないので、こちらもフリなのかマジなのかを見極めなくてはならない。そこで、私は彼のズボンを下ろし、股間のあたりにマジックで「起きろ」と落書きした。それがくすぐったかったのか、クスクス笑い出したので「はい~、笑った~! そっちの負けェ~!!!」と、化けの皮を剥がした私の勝利かと思われたが、また何もなかったかのように態勢を持ち直し、精神が蝕まれた人のフリを始めた。
そして、この日も私のバイトの時間が来てしまい、何ひとつ話せなかった。
翌日はちょっと趣向を変え、相手が部屋から出てきたタイミングで「これちょっとコピーしてほしいな!」などと何気ない感じで話しかけた。すると「コンビニでやってよ……」と答えた。
どうやら今回の騒動と関係ない話には応じるらしい。しかし、その流れで「それでさ、動画撮るか100万円くれるか……」と話し出すとすぐに押し黙り、遠くを見つめる。精神を蝕まれたフリをすれば、なんでも許されるとでも思っていたのだろうか。こんなことしようと考える時点で、ガチで病んでいた可能性もあるが、私は“その手があったのか!”とむしろ感心していた。
ここで私の中にある考えが湧く。こちらも応戦したらどうなるのか?
3度目のお部屋訪問。
私が「話し合いをしたい」と伝えると、今回は天井を見つめるのではなく、振り絞るような声で「今は顔も見たくないんだよ」と言ってきた。普通にショックだったし、腹が立った。なぜ浮気をしようとした側が被害者ムーブなの? ここ数日、私がずっといじめてるみたいになっているけど、発端は彼だ。
「この脳チンクソボケナス野郎が~~~~~!!」と言いたいのをぐっと抑え、泣きながら這うように部屋を出ようとした。そして私がハァハァと呼吸を荒くすると、彼はすっと起き上がり、私の口元に袋を持ってきた。過呼吸を軽減させるための対処法だ。(今はこの方法はよくないとされているそうです)
相手を動かすという意味で作戦は成功したが、過呼吸がフリだとバレるとまずい。この日はハァハァしたまま引き下がった。
100万円じゃ消えない不安
これまでは彼の押し黙り病みムーブの粘り負け、私が「ま、いっか」と思い込み、普段どおりに振る舞うことで終結してきたが、今回ばかりは折れてやらんぞ、と意気込んでいたので、進展がないまま数日が過ぎた。
ひとりぼっちで年を越し、新年を迎えてからは実家に帰ってお正月を過ごし、いよいよひとり暮らしをする家まで探し始めていた。
10日ほど経ったころ、家に戻ると彼は私の部屋の扉を静かに開けた。彼は明らかに衰弱していて、紙か?というくらい顔が青白くなっていた。
「ごめん」と謝ってきた。「出会い系は単なる暇つぶしだった」と。
だけど、謝ったからといって許しはしない。「浮気の前科があるやつが何言ってんの? その暇つぶしで大事な人が傷ついてるんだよ?!」。彼は何を言っても平謝りだった。
そこで「じゃあ、もう動画撮るのね?」と言うと、なんと「100万円払う」と言ってきた。芸人なら100人中100人が動画を撮影するほうを選ぶだろう。
客観的に見るとかわいそうだなとも思う。セックスしたわけでもなく、ちょろっとやりとりしただけで、100万円払うはめになってるんだから。ただ、それくらい私が傷ついたことをしたんだとわかってほしかった。傷ついた心を癒やすため、私は彼から没収した100万円をオタ活に使った。
一度浮気をされたら、またされるかもしれない、という疑念をこの先もずっと抱くことになる。一緒にご飯を食べてるときも、電車に乗ってるときも、友達と笑ってるときも。心のどこかで、彼は浮気してるかもしれないという不安を抱いてしまう。この先も私が不安を抱えつづけると考えたら、100万は安いものだろう。
だけど100万円を払ったことで、彼はもうなかったことになったと思ったのか、そのあと浮気の話を少しでも掘り返すと、「何度も謝ったじゃん……」みたいなテンションになった。一生つきまとう不安を与えておいて、その態度を取ることに私はずっと引っかかっていた。
大事なことが話せなかった結婚生活
結局、私は彼と結婚した。浮気性以外の部分は尊敬できるところが多かったし、なにより私みたいなどうしようもない女と結婚してくれるだけでじゅうぶんと、幸せになれない考え方で一緒にいつづけることを選んだ。
プロポーズはどちらもしていない。強いて言うなら私が「嵐の20周年に籍を入れたい」と言ったので、それがプロポーズだったのかもしれない。
それなりに幸せな結婚生活だったが、交際期間が6年と長かったせいか、淡々と日々は過ぎていった。
我々は付き合っているころから深刻なセックスレスだった。新婚だと知ると「じゃあ、ヤリまくってんだ?」と、デリカシーも想像力も恐ろしいほど欠如している輩が現れるが、少しは考えて発言してほしい。
ほかの女とはガンガン出会おうとするくせに、私には手を出さない。「なぜしないのか?」と恥を忍んで聞いたこともあるが、「できないものはできない」「こっちは誰かと浮気されてもまったく気にならない」などと言われ、理解に苦しんだ。
何か大きな理由があったわけではなく、「俺が寝ている途中でベットに来られると眠れない」と言われ、いつの日からか寝室が別になった。自室のソファーで眠る生活は虚しかったが「私みたいな女は結婚できただけでじゅうぶんでしょ」と、懲りずにまた恋愛不幸癖の悪いとこが出ていた。
“100万円没収事件”のときと同じく、彼とは大切な話が何もできなかった。今後のこと、子供のこと、ふたりで考えたい大切なことを話させてもらえない。ちょっとでも触れると、過呼吸になったり、だんまりしたり、「明日早いのにそんな話してこないでよ」と言われたり。「じゃあ、話せるタイミングで声かけて」と言っても、向こうからはその話は持ちかけてこなかった。
ちゃんと話したい私とうやむやでいたい彼。何事もなかったかのように「新しいスニーカー買ってあげようか?」などと言ってくるが、そんなご機嫌取り求めてない。うやむやなのが嫌で彼に対して優しくできないでいると、「お前はほんと冷たいよな」と、また被害者ムーブ。傷つけてるのは私のほうなの?と罪悪感を募らせた。
大きな問題が解決してないと、小さなことでも揉める。縄が絡まったまま縄跳びしてどんどん絡んでいくような感じだった。
あっさりと決まった離婚
ある日、またいつものように言い合いになり、彼が自室に戻ろうと階段を上がり始めたとき、いつも一方的に私が遮断されるから、今日はこっちが先にシャットアウトしてやる!という気持ちで扉をバンッ!と閉めた。私の中で何かが切れた音のようにも思えた。
そして、ついに家を出た。これが最後のチャンスと言わんばかりに「話したいことがあったら連絡して」と伝えて。私を失いたくないならちゃんと向き合ってほしかった。
しかし、一カ月半後に来た連絡は「そろそろ帰ってきたら?」という何事もなかったかのような文面。どういうつもりで「帰ってこい」と言っているのか。「何、考えてるの?」と聞くと、「毎日死にたいと思っているよ」という返信。私に罪悪感を抱かせるいつもの手段だ。
私は心を鬼にして「離婚届けをもらってきました」と送った。このひと言を送るまでの間、私には想像を絶する苦しみと葛藤があった。しかし、彼から来た返事は「じゃあ離婚ってことで」のひと言。あっさりし過ぎていて、泣いた。
もっと話し合いたいとか別れたくないとあがいたりするのかと思ったけど、それですませるんだから、私が罪悪感を抱く必要ないよね……本当に離婚したくなかったら、必死で食い止めるよね……応じたってことは、それがすべてだよね……。と、必死に言い聞かせた。
本当はどう思っていたかなんて言われなきゃわからないし、考えたところで、離婚に同意したのが答えだ。
私たちは話し合うこともなく、出会ったときと同じようにメッセージのやりとりで別れを決めた。結婚から1年と15日。私たちは離婚した。
花火のような一大事件があるわけじゃなく、静かに重苦しい感情がいくつも重なって離婚に至った。
本当によく「なんで離婚したの?」と聞かれるが、説明するのは難しい。いくつもの要因があって糸が切れたのだから、離婚の理由を聞いてくるなんてまだまだお子ちゃまね♪
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