お笑い芸人として活動しながら、キャバクラで働いていた経験のある、ピン芸人・本日は晴天なり。
キャバクラには数多くの“拗(こじ)らせおじさん”たちが来店するが、その中には群を抜いたクセを持つおじさんが存在するという。そんな“拗らせおじさん”の中から、今回は横柄な態度でキャバ嬢だけでなく、スタッフからも嫌われていた「態度最悪おじさん」を紹介する。
開店前から始まる横暴な振る舞い
店長も思わず「人に対してよくあんな態度できるよな~」と漏らした“態度最悪”おじさん。
そのおじさんは週2日、必ずフライング来店する。19時オープンの店に、18時45分にはやってくる。従業員はだいたい開店の30分前に出勤して掃除や開店準備を始めるので、週2のフライング来店はとても迷惑だった。
キャバ嬢もタイムカードは出勤1分前までに押せばセーフだったので、開店2分前に着替えることが多く、「女の子がまだ支度していて店の準備もすんでいなくて……」と伝えても、「大丈夫だから、いつもの俺の席!」とヅカヅカ店内に入ってくる。
相手が困ってるときに「大丈夫」というワードを放つ人間はモラハラ野郎の可能性が極めて高い。これを読んで、ちょっとくらい早めに入れてやれよと思った方もまた、モラ予備軍なので注意が必要である。
「いつもの俺の席」というのも、このおじさんが自分の席だと勝手に言っているだけだ。常連のお客様はみんなだいたいお気に入りの席があるが、空いてたらそこに座りたいな~くらいの人が多い。
店の混み具合によって席移動をお願いすることも少なくない。普通のお客様は「あ~はいはい」と移動に応じてくれるが、このお客様は必ず渋ってきて、移動する代わりに別のサービスを要求してきた。
それが理由かは定かではないが、彼はいつの日からか、席の移動がなくても来店するたびに必ずスナック菓子の盛り合わせのサービスを受けるようになっていた。このおじさんはそれをVIP待遇だと思い込み、新人のキャバ嬢には毎度「俺だからこれ(スナック盛り)出てくるんだよ」と自慢し、一目置かれてるかのように思っていたようだが、こちらからすると厄介な客の目印にしかならない。
本当のVIPはスナック盛りくらい余裕で支払うくらいお金持ちだし、そもそもサービスがなくても快く移動に応じてくるはずだ。
座り方にもにじみ出る態度の悪さ
私が働いていた店は早い時間帯に来店すると安くなるシステムがあり、当時は19時台に来れば1時間4,000円、20時台は5,000円、21時台は7,000円だった。そのあと何時間いても1時間の料金は変わらない。
彼はフライングで来るのでもちろん1時間4,000円なのに、6万8000円ぐらいの態度を取ってくるのである。いつも偉そうな座り方で、ソファーにもたれかかり、溶けたようにずり落ちて座っている。イメージしづらい人は「偉そうな座り方 ソファー」で検索して、一番上に出てきた画像を参考にしてほしい。
私はその姿を「小さめのジャバ・ザ・ハット」と呼んでいた。ちゃんと座ると低身長がバレるから、小さいのはあくまでもずり落ちて座っているからだっていうのをアピールしたいからなのか、ただただ一番偉そうな座り方を追求した結果なのかわからない。もしかしたら家にいるときのようにリラックスしたかっただけなのかもしれない。が、どんな理由にせよ行儀が悪過ぎて、他人に軽々しく見せる座り方ではなかった。
そんな座り方をしているくせにいっちょ前に短い腕を回して座ろうとする。ホストがよくやっている両手を広げて女の子の肩に手を回すアレだ。
たまにその姿勢のままイタズラ半分セクハラ半分で私の顔をひょいと触るようなムーブをかましてくるが、私はいつも背筋をピンと伸ばしていたので、少し逆側に揺れるだけでかわすことができた。サービスでもらったスナック菓子のカスがついた汚い手で顔を触られてたまるかよ!と何度言おうとしたことか。座り方が悪かったので、食べこぼしのカスも全部スーツに落ちていた。
職務を放棄するほど不快なセクハラ発言
話す内容も基本的にはすべて失礼だった。
「おばさんのほうが落ち着くんだよね~。若い子は何話していいかわからないからさあ~」。身のほどをわきまえた発言のようにも思えるが、この“おばさん”は30歳くらいの子のことを指していた。20個下をおばさんと呼び、年が近いと思っている感覚にゾッとした。
自分より年下を遠慮なく「おばさん」呼ばわりするおじさんは多い。自分だけ老化が止まってるとでも思っているのだろう。逆に若い子しかダメというおじさんもいるので、そういう人と比べたら僅差でマシなのかもしれない。
お客様のニーズに応えるのがキャバ嬢の仕事だとしても、私も人間だ。どうしても話したくない話題があったり、思わず気持ち悪っ!!と思ってしまう話題もある。お客様のキャラクターや話し方によって同じ話題でも平気なこともあるが、それは稀で、ほとんどの場合がただただ気持ち悪く、ましてやこんな態度最悪おじさんなら「俺の好きな映画はさ~」といった話すら、不快に感じるほどだった。ちょっとした下ネタなんかはもう嫌悪感の塊。
「君、さては変態でしょ?」。自分の好みの性癖であってほしいと願う質問のひとつだ。彼はその夢を叶えてくれるのがキャバ嬢だと信じているタイプだった。
その証拠に、実際に私が変態に見えたわけではなく、ほとんどの女の子にこの質問をしていた。もしかしたらこの世代は“変態=いけないもの”だと徹底的に教え込まれてきたのかもしれない。変態がバレたらもうこの世の終わり、絶対に人にバレたらダメな禁断の領域的な。
オタク=キモいといわれる時代もあったが、今はそんな風潮はない。同じように、変態もそこまでアブノーマルなイメージはなく、まあ人にはそういった一面もあるよね~くらいだが、50代にとっては、背徳感をくすぐり、抑えられていた欲望を掻き立てる魅惑のキーワードなのかもしれない。
「君、さては変態でしょ?」
「変態って何をもって変態ですか?」
「何をもって変態だと思う?」
私はキャバ嬢としてお客様のニーズに応えなくては、という意識より、どうしても嫌悪感が勝ってしまった。さらに、ちょっとズレてる子のフリをしてこう答えた。
「そうですね。たとえば、電化製品……冷蔵庫や洗濯機に欲情したら変態ですよね?」
「う~ん……そうじゃなくてさ……」
この場を盛り下げる返しはプロとして失格だったかもしれないが、キャバ嬢から望みどおりの答えが返ってこなかった場合、職務を放棄するほど嫌われている可能性が高いと考えてくれていい。キャバ嬢はほとんどの場合、お客さんの望む答えを用意できるから。
このおじさんに限らず、どうしてもエロトークに乗っかりたくない、気持ち悪い!と思うときは、過度な性癖があるかのようなワードを出して、相手を萎えさせるようにしていた。
「君は、どんなS〇Xが好きなの?」
「私、相手を壁に張りつけて四肢に釘を打ちたいんですよ」「う〇こを食べてほしいですね!」など。
そして最後に、「それ、やらせてくれますか? やらせてくれる人、探してるんです」と言う。
もちろん相手の答えは即「No」だが、こちらが誘って相手が断っているため悪者にはならない。好かれも嫌われもしないので、返しとしてはおすすめである。こういう話に勃起するような男は、キャバクラなんてとっくに飛び越えて専門の店でちゃんと楽しんでいるので、鵜吞みにして乗っかってくる男はいない。
人として有り得ない!暴言連発
態度最悪おじさんの極めつきは暴言。
来店してからもうすぐ1時間のところでボーイさんが、「1時間経ちましたけど延長しますか?」と、お客様に延長するか、お会計するか聞くため声をかける。彼はこれが少しでも早いと舌打ちをしてブチギレるのだ。時間ピッタリでも文句を言われるので必ずちょっと遅めにいかないとならなかった。
そして、お会計がすんでからもダラダラと居座りつづけ、ボーイさんが「お時間ですので……」と伝えに行くと、また「うるせーな! 帰るって言ってんだろ!」「言われなくてもわかってるわ! バーカ!」「おい、急かすなよ! まだひと口残ってんじゃねーか!」などなど。言わなきゃ帰らないし、言っても帰らないので地獄だった。
1時間4,000円でこんな暴言まで吐ける人はキャバクラにしかいないと信じたい。そしてこんな人は地球上の全員から嫌われているに違いない。
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