むしゃくしゃしたらセブンイレブンの春巻きを食べる

2020.1.15

文=くどうれいん


会社員のくどうれいんさんが、働きはじめてからいつのまにか定着した儀式のようなもの。それは「むしゃくしゃしたらセブンイレブンの春巻きを食べる」こと。

なぜ、むしゃくしゃしたときに選ぶのが、セブンイレブンの春巻きなのか。からあげ棒でもフランクフルトでもなく、もちろん玄米ブランでもなく、春巻き。それも、セブンイレブンの。

その理由を知ったとき、あなたはきっとすでにセブンイレブンに向かっているはず。

むしゃくしゃ飯

働いている。よくよく、くよくよ残業している。丸い背でキーボードを叩きながら眉間にしわを寄せ、ティン!とエラーに鳴くパソコンに舌打ちをしそうになって、19時を過ぎていて、お腹が空いていると気づく。お腹が空くとへそのまわりががらんと空いて、その隙間に突如として勤労や人生や国への憎しみが雪崩れ込んでくる。あー。破壊だ。会社を、社会を、世界を破壊。山を踏み、川を飲み、ビル、食べていいか? 巨大化していく自分に歯止めがかけられない。まずい。財布とスマホだけ持って会社を出る。家に帰れば母の作った夕飯はあるが、おそらく帰宅できるのは22時を過ぎるだろう。それまでの間自分のご機嫌をとらなくては。あたたかく光るセブンイレブンに吸い込まれるようにして入店。店内の菓子棚を探しているような素振りをしつつ、視線はしたたかにレジ横のホットスナックの棚を確認する。入店即最短距離でホットスナックの棚に向かうことができないわたしはなにを守ろうとしているのだろうか。キレートレモンを掴み、あたかも“ついでに”買うかのような声色で、言う。
「あっ、その春巻きも、ひとつ」

むしゃくしゃしたらセブンイレブンの春巻きを食べる。働きはじめてからいつのまにか定着した儀式のようなものである。からあげ棒やフランクフルトではなんとなく脂っこさの罪悪感があるが玄米ブランでは物足りない。そういう気難しいわたしの規定を「いやいや、お惣菜ですので〜、夕飯の、一部ですので〜」と掻い潜るのが春巻きという存在である。

他社のコンビニでも春巻きを出しているが、セブンイレブンのものはパリっと感が全然違う。商品名も〈パリッと五目春巻き(豚肉と筍)〉でちゃんと自負がある。袋の点線を破り、綺麗に折りたたまれた四隅をうっとり眺めて齧りつく。「っつい!」何度も食べているはずなのに毎回五目餡の熱さにたじろぐ。だが、これがいい。しゃきしゃきのたけのこにしょっぱすぎない餡が絡んで美味しい。カリカリむわむわの春巻きの皮は咀嚼するたび咀嚼!と言わんばかりの音を立ててきもちいい。ばり、ばりばり。ビルを食べたかったわたしの気持ちは手のひらサイズの春巻きに置き換えられて満たされる。

きょうもよくむしゃくしゃしましたね、ご立派ご立派、おお、よしよし。茶色い小さなビルをきょうもひとつ胃の中に落として、わたしが炎を吐くことができるのはいつになるのだろう。

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