スペシャルウィークの星野源ANNがディープでカオスでクレイジーな楽しい地獄だった
2カ月に一度、『オールナイトニッポン』(ニッポン放送)の各番組に豪華ゲストが出演するスペシャルウィークがやってきた。
月曜日の『Creepy Nutsのオールナイトニッポン』には東京03、水曜日の『乃木坂46のオールナイトニッポン』には樋口日奈、木曜日『ナインティナインのオールナイトニッポン』にはドランクドラゴン鈴木拓とオリエンタルラジオ藤森慎吾、金曜日『霜降り明星のオールナイトニッポン』には浜口京子、土曜日『オードリーのオールナイトニッポン』には有村昆とジャガモンド斉藤正伸、とそうそうたる面子が並ぶなか、火曜日『星野源のオールナイトニッポン』にはYouTube番組『わしゃがなTV』からライターのマフィア梶田と、声優の中村悠一が登場した。
「あのとき一度聴いていて下地になってたものは、今俺が好きなものの大元」
ゲストのふたりが登場する前のこと。この日のオープニングトークは、星野源が昔住んでいた街に訪れたという話から。
「あのころ欲しかったものとか入りたかった店とか取り返してやろうと思って(笑)、今はもうなんて言えばいいんです? まぁ、自分で稼げるようになりましたから、ね? なりましたから、きっとあのころ悔しかった思いを晴らせるぞ」と、すべての欲望を満たそうとする星野源の貪欲さに恐れおののいた。そこから、当時プレイしたゲーム・PCエンジンや、マンガ『GOLDEN LUCKY』『スレイヤーズ』『らんま1/2』の思い出を語りつつ、アニメ『らんま1/2』1期オープニング曲「じゃじゃ馬にさせないで」を流す星野源。
「久しぶりに聴いて、懐かしい!と思うと同時に、今シンセが大好きなの。今集めに集めているシンセたちの音がするわけですよ。だから今の音楽なの、自分にとって。で、ちっちゃいころめちゃくちゃ聴いてた曲だけど、なんか時空を超えて今の音として聴こえてくるのね。あのとき欲しかったものは得られなかったんだけど、今も。でも、あのとき一度聴いていて下地になってたものは、今俺が好きなものの大元になってて、基礎になってて、たぶんあれを無意識に摂取してなかったら、今のこの音楽が好きっていうものは、もしかしたらなかったんじゃないかと思うと、確実に今に活きてるものがある」
開始10分でいきなり喰らってしまった。「あのとき一度聴いていて下地になってたものは今俺が好きなものの大元」。俺も幼少期に『らんま1/2』のシャンプーに恋をし、狂ったようにアニメを観ていた。そのときにらんまの音楽に触れていたからこそ、今こうして星野源の音楽やラジオを聴いているのだと、俺が星野源に狂わされるのはもはや必然だというのか……?
マフィア梶田による星野源の楽曲「地獄でなぜ悪い」についての話
「じゃじゃ馬にさせないで」を聴きながら動揺で意識が飛びそうになっていると、ゲストのマフィア梶田と、声優の中村悠一が登場した。まず、3人の関係性をおさらいすると、もともとは2019年放送のNHK大河ドラマ『いだてん』に星野源が出演した際、英語指導にあたっていた先生とマフィア梶田が友達ということから交友がスタートし、そのつながりで1年前に『わしゃがなTV』に星野源が出演したのがきっかけだ。
そこから何度か同番組で再共演し、思い出のCDを語ったり、それを『モンスターファーム』で復活させて戦わせたり、恋愛に関するクイズをしたり、中古車巡りをしたり、『呪術廻戦』トークを繰り広げたり、私物を公開したり、シルバニアファミリーでおままごとをしたりと、すべてをさらけ出したと言っても過言ではない3人がついにニッポン放送のスタジオに集結した。
登場の瞬間から痛烈な文化放送イジリから始まりどうなることかと思ったが、35歳になったというマフィア梶田へのサプライズバースデープレゼントを渡すというほっこり展開に、脳が左右に揺さぶられる。そのプレゼントがなんと先ほど話していた「PCエンジンDuo」。あとにも先にも令和の時代において「PCエンジンの開封音」を全国放送の電波に乗せる番組はここしかないだろう。しかも大量のゲームソフトも同梱されていたのだが、その中のひとつに『らんま1/2』が入っていたのだ。自分で種を撒き、自分で収穫する伏線回収の鬼に思わず部屋でひとり「源……」と漏らした。
そこからはラジオ版『わしゃがなTV』や、「星野ブロードウェイ」出張版など、スペシャルウィークらしいディープでカオスでクレイジーな放送がつづいたのだが、今回最も心臓を突き刺されたのが、番組終盤にマフィア梶田が話した星野源の楽曲「地獄でなぜ悪い」についてだった。
「あれは本当の閉塞感を知っている人しか書けない歌だなと思ったんですよ。すべてにおいて歌詞で表現されてることが、こっちに人生のフィルターを通して解釈できるんですけれども、あの曲聴いて地獄だとわかった上で楽しい地獄を生きているっていうメッセージ性がすごく腑に落ちたんですよね。そこからですね、もうこの人は信用できる、この人は本当の絶望をちゃんと知っているっていうふうに俺は受け取って(略)」
「地獄でなぜ悪い」という楽曲は、夜の病室を舞台に地獄に満ちた「現実」とそれに抗うための「夢」「嘘」「作り物」との関係を歌った曲で、歌詞の内容に対して飄々とした曲とのギャップが狂気と切実さに満ちていて、聴くたびにいろんな感情が混ざってグチャグチャになってしまう名曲なのだが、夢や嘘や作り物を身体の中に摂取して外に放出することでしか生きられない、ある意味どうしようもない人間たちのためにこの曲はあるのだと改めて思った。
そして、何歳になっても嘘や作り物に命を賭けて夢中になる人間たちがいることがうれしくなったし、自分もそうありたいと思った。あと、昔、家族でカラオケへ行ったときに「地獄でなぜ悪い」(本人映像)入れたら、星野源の股間がドアップになるシーンでめちゃくちゃ気まずい空気になったことを思い出した。ここは元から楽しい地獄だ……。
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