新生w-inds.が20周年イヤーに放つ『20XX “We are”』。メンバー脱退、コロナ禍を経て初めて抱いた「伝えたいメッセージ」
Da-iCEやJO1、BE:FIRSTなど、今でこそメディアで目にする機会が増えたボーイズグループ。現在の彼らが活躍できているのは、w-inds.の存在があったからと言っても過言ではないだろう。
2001年のデビュー以来、w-inds.は幾度も紆余曲折を乗り越えてきた。そして2021年11月24日、彼らは20周年イヤーの一環として3年ぶりとなる14枚目のオリジナルアルバム『20XX “We are”』をリリースした。今年3月に発売されたベストアルバム『20XX “THE BEST”』からの流れも感じさせながら、“ふたり体制になったから”だけではすまされない強いメッセージ性は、まさしくw-inds.の新境地と言えるだろう。
ボーイズグループの道を切り開き、日本のポップスを背負ってきたw-inds.に、今の赤裸々な心境を語ってもらったインタビューをお届けする。
目次
w-inds.第4章、攻めた音楽をつづけていきたい
──2020年6月からふたり体制になりましたが、今のw-inds.は第2章というイメージをお持ちなのでしょうか?
千葉涼平 第2章なのかな?
橘慶太 厳密には第4章じゃない? 第1章がデビュー、第2章がプロデューサーのもとを離れた「New World」以降、第3章が僕がプロデュースをし始めた「We Don’t Need To Talk Anymore」以降、そして今。
千葉 言われてみれば、そうか。
──w-inds.が活動をしてきた20年間で、ボーイズグループのあり方も変わりましたよね。
橘 僕たちがデビューしたころは“歌って踊る”だけですごかったけど、今では“歌って踊る”が当たり前になって、自分たちで歌のメロディをつけるのも普通になってきている。ボーイズグループに限らず、今や作曲に参加するのは世界中の音楽家において最低限でするべきことになってきていますよね。求められるものが増えてきたというか。大変ではあるけど、やりがいはすごくあると思います。自分で作ったものを歌って踊ってパフォーマンスできるってすごく楽しいことだと思うし、少なくとも僕たちは本当に楽しいので。今のタイミングでデビューするグループに「うらやましいな」って思う反面、「なんかよかったな」って胸をなで下ろす気持ちもありますね。
──その「なんかよかったな」は、具体的にどのような想いなんですか?
橘 「彼ら自身がいいと感じたものをパフォーマンスさせてあげたい」という気持ちが強いんですよ。デビュー当時から、僕たちもいろいろな曲をもらいました。本当にめちゃくちゃいい曲ばかりだし、今でも全部大好きです。でも、「今の自分がやりたい音楽はこれじゃない」っていうことは何回もあった。
千葉 ええ、何度もね。
橘 後続のボーイズグループには、“アイドルは曲を選ぶ権限がない”という経験をしてほしくないんです。もちろん事務所が「この曲をやれ」と言うからには、ファンの人や世間から求められているということはあるでしょう。でも、言われてやらされている状況って心のどこかが苦しいし、無理して人を楽しませるのは健康的じゃない。みんなが自分たちの魅せたいものを魅せて、受け取った人が喜んでくれるっていうのが健全じゃないですか。それが、ずっと全員がハッピーでいられる方法だと思うので。やりたいことをやっているボーイズグループがいっぱい増えてほしいし、w-inds.も先陣を切って攻めた音楽をつづけていきたいですね。
──今のw-inds.は、魅せたいもの100%だと。
橘 ずっとワガママを言っていたら、(自分の意見が)通るんだなって(笑)。
千葉 奇跡だったけどね(笑)。
日本のポップスを担う存在として
──先ほど「“歌って踊る”が当たり前になった」という話もありましたが、本当にパフォーマンス力が高いグループが増えましたよね。
橘 ダンスがうまい人は、本当に多いですね。昔はこんなにいなかった。
千葉 みんなテクニックがありますね。
橘 スキルもあるし、体の使い方もいい。体幹がぶれなかったり、手がしっかり伸び切っていたり、自分の角度があったり。与えられた振りを踊るように言われているだけじゃない、というか。仮にやらされている感のある子がいたとしても、昔のレベルと比べたらじゅうぶんうまい。「すっごい練習しているんだろうな」って思いません?
千葉 思いますね。
橘 韓国のグループは特に練習量がすごい。日本は基本的に仕事優先のスケジュールですけど、韓国のアーティストは練習優先ですからね。
千葉 しかも、個々を活かしたグループの魅せ方が主流になってるじゃないですか。ダンスの魅せ場ではダンスがうまい人たちが出てきて、歌の聴かせどころでは歌のうまい人が前に出てくる。この切り替わりが無理なく、テンポがいいんですよね。
橘 フォーメーションや構成が考えられていますね。w-inds.がデビューしたころより、ダンスパフォーマンスとして格段によくなっていると思います。僕たちも、あと5人くらいほしいですね(笑)。
──「Beautiful Now」や「Strip」などのMVは、そういう感じですよね。
橘 キャリアを武器に、一流のダンサーを集めまくる(笑)。
千葉 みんなトップアーティストです。
橘 僕らがこんな性格なんで、現場がすっごい楽しいんですよ。自分たちで言うのもあれですけど(笑)。本当に和気あいあいとした雰囲気で撮影して、終わったらみんなでご飯に行ったりもします。
──後続のグループにも、橘さんのように総合プロデュースできる人が出てきてほしいと思いますか?
橘 トラックまで作る人は本当にごくわずかなので、僕の居場所がなくなるから来ないでほしい。というのは冗談ですけど(笑)、キツ過ぎるので来ないほうがいいって、みんなに言いますね。
千葉 純粋にしんどいよね。
橘 知れば知るほど、時間を使わなきゃいけなくなるんですよ。僕はミックスまで自分でやるので、最終的に仕上げるってなると莫大な時間をかけなきゃいけない。本当はそんなところまでやる必要ないんです(笑)。メロディをつけられればじゅうぶんだから。
──橘さんは作曲をする上で「日本特有のメロディやサウンド感を大事にしている」と過去のインタビューで言われていましたが、“日本らしさ”をどのように定義されていますか?
橘 すごく雑な言い方をすると、日本のメロディってトラックをイメージしていないんです。メロディだけを考えて、メロディが作られている。一例を挙げるなら、海外のサウンドがメロディをトラックの一部として扱ってほかの楽器と棲み分けているのに比べ、J-POPはどんな音が入ってきてもメロディがいる。常にメロディがメインというか。
──ではw-inds.が大事にしてきた“日本らしさ”も、“メロディを主軸にしたトラック”だと。
橘 そうですね。ただ、すべてがそうなっているわけではありません。僕が目指しているのは、メロディを主軸にしながらも海外のように計算されたトラックなので。
──“J-POPらしさ”と“日本らしさ”って、似て非なるものだと思うんです。w-inds.は“J-POPらしさ”も追求していたりするんですか。
橘 3、4年前くらいに“J-POPらしさ”を勉強していた時期もあるんですけど、曲を作り始めたら具合が悪くなっちゃって(笑)。
千葉 それ言ってたな、慶太。
橘 自分がやりたいわけじゃないものを研究したら、気持ち悪くなっちゃったんですよ。それまでパッパと曲を作れていたのに、全部がわからなくなって、すごく考えなきゃ作れなくなった。1年間くらいよい曲ができず、曲作りが嫌いになりそうでした。やばいと思って、諦めました。J-POPは、すごく難しいですね。
──何事もスマートにこなす印象のある橘さんをもってしても、J-POPは難しいんですね。
橘 作ってる方々は、本当にすごいです。コード進行もそうですし、音の重ね方も独特で、僕にはできる気がしなかった。自分の色じゃなかったので、ほかの人に任せたい気持ちが強いかな。
──w-inds.はJ-POPをやっているグループではなく、ポップスをやっているグループなんですね。
橘 「ポップスを作りたい」というのは、ずっと言っていますね。ヒップホップやクラブミュージックのトラックメイカーなら、日本でもすごくいい人がいるんですよ。ただポップスとなると、海外に並ぶプロデューサーって実は少なくて。ポップスのトラックメイカーでもっといい人が国内に増えてほしいという想いはあるし、自分たちがそこを担っていきたい気持ちは強いですね。