SKY-HIが描く“才能を殺さないために。”その先へ「新たなJ-POPを掲げていい時代が来た」【BMSG『Greeting & Gathering ’26』レポート】

2026.7.6
BMSGビジネスカンファレンス『Greeting & Gathering ’26』より/撮影=ハタサトシ

撮影=ハタサトシ

文=羽佐田瑶子 編集=森田真規


2026年6月29日、芸能事務所/レーベル「BMSG」が関係各社に向けてビジネスカンファレンス『Greeting & Gathering ’26(以下、G & G)』にてCEOのSKY-HIこと日高光啓がプレゼンテーションを行い、所属アーティストによるショーケースも行われた。

“才能を殺さないために。”というミッションを達成するための環境をより確かなものへと整え、2030年に迎える創業10周年に向けた新たなスローガン「BEYOND THE FIRST FIVE YEARS. BMSGは、第二創業期へ。」を発表したSKY-HI。彼は以下のような夢をカンファレンスで明かした。

「(ザ・)ビートルズやマイケル・ジャクソンのように、階段を登って、登って、一番上までたどり着いたところにポップはあると思っています。J-POPをリブランディングして、新たなJ-POPを掲げていい時代が来たと思います」

ここでは、昨年も『G & G』に参加してQJWebにレポートを寄稿したライター・羽佐田瑶子によるレポートをお届けする。

第二創業期へ──BMSGが掲げる次の5年

実家ライブ、貯金1億円の投資、社員は自分ひとり──無謀ともいえる挑戦から始まったBMSGは、5年の歳月を経て、現在では所属アーティスト35名、BMSG TRAINEEは23名を有する巨大なクリエイティブチームへと成長した。

デビュー5周年を迎え、9月から世界4都市を回るワールドショーケースの開催を控えているBE:FIRSTや、『MUSIC AWARDS JAPAN 2026』をはじめアーティストに贈られる新人賞を数々受賞したHANAなど、所属するアーティストたちの活躍も目覚ましい。

2026年には、STARGLOWとふみのがデビュー。STARGLOWは、イギリスの音楽総合メディア『NME』が発表した「The NME 100: Essential Emerging Artists For 2026」に日本人アーティストで唯一選出された。

女性ソロシンガーふみのは、7月期のフジテレビ系ドラマの主題歌に抜擢された。今年2月には「Obsessed」が世界的ヒットを記録したAyumu Imazuとのパートナーシップ契約を締結。“才能を殺さないために。”奮闘するBMSGとして、所属するアーティストへの思いを語るところから約1時間に及ぶカンファレンスが始まった。

節目となる5年目を経て、次なるステージとなる10周年に向けて、「BEYOND THE FIRST FIVE YEARS. BMSGは、第二創業期へ。」をスローガンとして掲げたSKY-HI。第二創業期でも、スタートアップの芸能事務所として「業界にある既存の構造的な課題を解決するために、今まで培ったリソースや資金も全額BETして、未来への投資にとにかく注ぎ込みたい」と語った。

新しい音楽プロデューサーの発掘・育成

第二創業期の3つのテーマのうち、1つ目に語られたのが「音楽ファースト」。オーディション番組に近いスタイルで、BE:FIRSTやMAZZELなど数々のアーティストを誕生させてきたSKY-HIだが、その手法は古来のオーディションとは異なるものだった。

サバイバル形式で緊張感のある番組を作るのではなく、夢を持って集まった人たちをしっかり育成する「育成プログラム」として、プロデューサーが表に立ち、ダンスレッスンやボーカルレッスン、場合によっては作詞作曲などクリエイティブの能力もサポート。「心を込めて育成することを、世の中に発信できたのではないかなと思います」と、これまでを振り返った。

HANAが誕生した『No No Girls』では、プロデューサーにちゃんみなを迎えるなど、SKY-HI自身が手を動かすことに縛られず、才能豊かなプロデューサーやクリエイターを迎え入れてきたBMSG。

「制作者や関係者へのリスペクトを欠かさない、という強い気持ちがある」ことから、あらゆる制作物にスタッフ全員のクレジット掲載を徹底するなど、アーティストを輝かせる側の人間も大事にしている。

そこで期待されるのは、次なるプロデューサーの存在だ。カンファレンスでも「プロデューサーの育成もがんばっていきたい」と明確に語られた。それは、才能のあるソロアーティストを埋もれさせない、もっと輝かせたい、という音楽業界で長らく活躍してきたSKY-HIの葛藤でもあった。

「それぞれのグループに、個性の強いソロアーティストのプロデューサーがついています。個性の活かし方として、誰かを手がけたときにより輝くっていうのは、ないことはない。アーティストのセカンドキャリアとして、もっとその才能が報われてほしいと思う方が何人か頭に浮かぶので、プロデューサー自身も発掘・育成したいと思っています」

SKY-HI/撮影=ハタサトシ
SKY-HI/撮影=ハタサトシ

MAZZELが示した育成モデルの成功例

「音楽ファースト」ではあるが、それは音楽だけに真摯に向き合うことを指していない。アーティストの可能性として、彼ら彼女らがやってみたいこと、なりたい像があったとき「すぐにチャレンジできる導線を作っておく」という。それは、チームとしてパンプアップしてきた、今のBMSGだからできることだろう。

「音楽に関するトレーニングは絶対に必要なのですが、これから先、作詞作曲に関してはAIが相当台頭してくると思います。そのときに、人間としてどれだけの外れ値を持っているかが重要になってくるので、画一的な育成ではなく、本人がやりたいことをサポートしたい」

メンバーの個性に合わせてさまざまなトレーニングをしているという事例で挙げられたのが、活躍が目覚ましいMAZZELだ(SKY-HIは彼らの個性をマンガ誌に例え、『週刊少年ジャンプ』や『ヤングジャンプ』、『別冊マーガレット』もいると話した)。

「作詞作曲やダンスに取り組む子もいれば、グッズの企画、ドラマや映画、バラエティ、ファッションショー、ラジオパーソナリティなどそれぞれやりたいことをやって、結果を残してきたグループです。“Be My Self”の精神のもと、本人が挑戦したがっている領域にマネジメントが積極的にパスを出していきました」

特に人気となっているのが、YouTube「MAZZEL ROOM(通称:まぜべや)」だ。再生回数100万超えを連発し、その成果もあってファンクラブの会員数が1年で5倍以上になっているという。

「YouTube人気だけならおもしろいお兄さんたち止まりでしたが(笑)、彼らのたゆまぬ努力によってパフォーマンスの素晴らしさにも気づいてもらえた。オーディション後の一過性の盛り上がりではなく、育成に成功して長く愛されるグループという具体例を作ってくれたのがMAZZELです」と、SKY-HIは誇らしげに語った。

アーティストの人生を支える仕組みの確立

2つ目に語られたのが「サステナブルなエンタメ構造」への挑戦。プラスチックの削減やオンラインサロン「B-Town」などで継続的に取り組んできた課題だが、今回から新たに所属アーティストが安心して人生設計を描けるように支援する「Unseen Life Plan(あんしんライフプラン)」を導入する。

BMSGビジネスカンファレンス『Greeting & Gathering ’26』より/撮影=ハタサトシ
BMSGビジネスカンファレンス『Greeting & Gathering ’26』より/撮影=ハタサトシ

これまでも、コンプライアンス研修やマネーリテラシー講座など、社会人としての各種研修をしてきたBMSGだが、このプランでは会社が個人の積立額と同額を支援する資産形成サポートとなっている。

「一般的な社会人経験がないままアーティストとして成功すると、金銭感覚が狂ってしまうことは少なくありません。アーティストはスポーツ選手に近いところがあるので、第一線で活躍し続けられる人はほんのひと握り。現役のうちに、稼げるだけ稼ぐことを目標にすると、本来やりたい音楽を見失ってしまい、いつしか音楽が仕事になってしまいます。そういったことを避けたい気持ちから、資産形成を会社が一緒に整えることで、将来への経済的不安を少しでも軽減したいと思っています」

3つ目に語られたのは「市場の拡大」について。過去4回開催されたダンス&ボーカルプロジェクト『D.U.N.K. Showcase』をきっかけに、所属事務所が異なるアーティストのコラボレーションがテレビなどで一気に加速し、日本の音楽業界の雰囲気がガラリと変わった。

「日本の市場はどんどん小さくなっていくので、内側で取り合っている場合ではないと思っています。ライバルだけれど仲間ですよね。そういう思いで『D.U.N.K.』を開催していますし、アジアのお客さんもたくさん参加してくださったので、海外とのハブのような場所にできたらいいなと思っています」

多くは語られなかったが、「2026年、とある海外プロジェクトを始動させたいと思っています」と予告をしたSKY-HI。「2つ、3つとさまざまなことが動いています。日本発の音楽市場を拡大していきたい」と語った。

「新たなJ-POP」を世界へ

その思いの根底には、BMSG TRAINEEの存在がいる。

「BMSG TRAINEEであるKAITOは小学校6年生、LEONは中学1年生です。順調に行けば20年後も第一線で活躍できるアーティストなのですが、経済的な視点で20年後を考えたときに、日本市場だけで活動することはないでしょう。どんどんグローバル展開をして、ほかの国のアーティストが日本のトップチャートを席巻する時代もやってくるでしょうから、日本が生み出す音楽のクリエイティブ力への自信をきちんとつけたいなと思います」

昨年も、自身が影響を受けてきたカルチャーとして、渋谷という街やJ-POPの存在を話していたSKY-HI。カルチャーとしてのJ-POPは大きなものだったが、今ではK-POPが世界を席巻している。そのムーブメントは「東方神起、BIGBANG、少女時代、BTSとさまざまなアーティストがバトンをつなぎながら、世界的な渦を作ったのではないか」と話す。

日本から発信されるJ-POPがグローバルで“ポップ”な存在になるためには、ポピュラリティを獲得しなければならない。

「ビートルズやマイケル・ジャクソンのように、階段を登って、登って、一番上までたどり着いたところにポップはあると思っています。J-POPをリブランディングして、新たなJ-POPを掲げていい時代が来たと思います」

具体的かつ大きな夢として、最後に話されたのが毎年恒例になっている『BMSG FES』の海外公演だ。その場所はアメリカだとSKY-HIは明確に語る。

「10周年までに、アメリカで公演をしたいと思っています。それは夢を超えて公約でもいいのかもしれませんが、『このカンパニーやばい』というのをお見せしたい」と力強く話して、プレゼンテーションを終えた。

BMSGビジネスカンファレンス『Greeting & Gathering ’26』より/撮影=ハタサトシ
BMSGビジネスカンファレンス『Greeting & Gathering ’26』より/撮影=ハタサトシ

BMSG TRAINEEが担う未来

続いて、BMSG所属アーティストによるショーケースが行われた。

1組目は、BMSG TRAINEE。BE:FIRSTのSOTAがコレオグラフを担当し、BMSGが誇るダンス選抜によって『BMSG FES’25』で披露された「Boogie-Woogie feat. Maddy Soma」を、BMSG TRAINEEの9名で披露した。

BMSG TRAINEE/撮影=ハタサトシ
BMSG TRAINEE/撮影=ハタサトシ

BMSGらしい楽曲と振り付けを完璧に踊りこなす彼らは、デビュー前とは思えない存在感で会場を掌握。センターに立つ人間が誰であろうと、それぞれの個性を発揮しながら、チームとしてのまとまりも見せる。

続いて、RAIKI・RYOMA・RYOTOの3名による歌唱パフォーマンス。BE:FIRSTの「夢中」をカバーした。けっして先輩をマネするのではなく、ピュアな歌声で自分たちらしく奏でる。高音パートが目立つ楽曲だが、基本をしっかり押さえつつ、RAIKIをはじめ安定感のある歌声で魅せた。

BMSG TRAINEE/撮影=ハタサトシ
BMSG TRAINEE/撮影=ハタサトシ

「TRAINEE期間はつらい下積みではなく、青春の過ごし方のひとつでありたい。もっと出目を増やしたい」と前半パートで語っていたSKY-HIは全員の名前を紹介し、大きな拍手を送った。

BMSG TRAINEE/撮影=ハタサトシ
BMSG TRAINEE/撮影=ハタサトシ

ふみのが歌う「東京」という現在地

2組目は、2026年1月にデビューしたふみの。HANAを輩出した『No No Girls(通称:ノノガ)』のファイナリストである彼女は、ソロアーティストとしてステージに立つ。ラベンダー色のJazzmasterに、ジーンズにタンクトップという彼女らしいスタイルで登場したふみのは、ちゃんみなが贈ったデビュー曲「favorite song」を披露。

ふみの/撮影=ハタサトシ
ふみの/撮影=ハタサトシ

ロックサウンドに負けない歌声は、『ノノガ』のファイナルに比べてさらに力強くなっていた。2曲目はアコースティックギターに持ち替えて、新曲「東京」を初披露。フジテレビ系水10ドラマ『Tokyo middle 30』の主題歌にも決まっている本曲について、ふみのは「描いていた夢や希望が、いざ目の間に来たときの現実とのギャップに葛藤する気持ちや、それでも生きていかなきゃいけない今を歌っています」と紹介した。

ふみの/撮影=ハタサトシ
ふみの/撮影=ハタサトシ

歌詞には「東京の街は星が見えない かといって光も消えない」と歌われ、ギャップに苦しむだけではなく、そこに光を見つけているところに、前向きな彼女らしさを感じた。

ふみの/撮影=ハタサトシ
ふみの/撮影=ハタサトシ

STARGLOWが見せた次のステージ

3組目は、同じく2026年1月にデビューしたSTARGLOW。品川ヒロシがMV監督を務めた新曲「Good Boys Anthem」を披露した。MV同様に歌を中心として自由なパフォーマンスをするロックアンセムは、これまでの彼らとはまた違った一面を引き出していた。

STARGLOW/撮影=ハタサトシ
STARGLOW/撮影=ハタサトシ

RUI・TAIKI・KANONの3人は、TRAINEE時代を含めると、『G & G』には4回目の参加となるという。これまでとは違い、グループとしてステージに立てる喜びを噛みしめながら、RUIが「立ってくれませんよね?」と来場者に呼びかけると会場は総立ちとなり「USOTSUKI」をパフォーマンスした。

STARGLOW/撮影=ハタサトシ
STARGLOW/撮影=ハタサトシ

半年間で個々の成長に限らず、メンバー間でアイコンタクトをしながら一つひとつのステージを楽しんでいる様は、「満足せずに高いレベルを目指したい」という彼らの思いを裏づけるようだった。

STARGLOW/撮影=ハタサトシ
STARGLOW/撮影=ハタサトシ

たった3組だけでも、それぞれ音楽性やパフォーマンスが異なる。それぞれのやりたいことと個性が輝いたまま同じステージに立てるのは、パフォーマンスへの絶対的な自信、のようなものが共通して根底にあるからだろう。

“才能を殺さないために。”その先へ

「何が社会にとって、アーティストにとってよいことなのか、熱がある方と循環型の関係性を育てて、学びと共創が生まれる場所にしたい」と昨年話していたSKY-HI。“才能を殺さないために。”という創業時からのテーマが、漠然としたものから少しずつ具体性を帯びていると『G & G』を通じて感じた。

たとえば、才能を殺さないためには、アーティスト自身の人生も考えなければならない。彼ら彼女らは、アーティストである前にひとりの人間であり、豊かな表現を生み続けるためには確かな暮らしが必要である。

社会人と呼ばれる人間が自立する過程で学ぶ、金融知識やコンプライアンスといった現実を前に、「Unseen Life Plan」や研修は、自らの才能を最大限発揮できる心の余裕につながるのではないだろうか。

=LOVEのプロデューサーや実業家として活躍する指原莉乃も、アイドルグループを卒業したあと資産形成に不安を抱いていたと語っていた。彼女のように賢く、自ら学ぶ人は例外的で、夢を理由に人生を犠牲にしている人は少なくない。アーティストの尊厳を、また違った角度からサポートするBMSGの試みに期待したい。

会社としての在り方を刷新してきたBMSGだが、今後は「音楽」をどう広げていくか、という基本に立ち返ることになるだろう。K-POPがひとつのジャンルとして確立され、SNSきっかけのヒット曲が目立つ昨今、BMSGとしてどのような戦略を図るのか。

デビュー以降リリースを連発し、タフなスケジュールをこなしながら力をつけてきたHANAの1stツアーは、パフォーマンスと楽曲で魅了するという純粋な音楽体験そのものだった。

その姿のまま、ロサンゼルスのフェス『Zipangu』やジャネット・ジャクソンの日本ツアーへの出演など海外にも音楽を届け、フェスでは「Blue Jeans」を海外ファンが合唱するという光景に音楽の力を感じた。

BMSGが大事にするパフォーマンスに対する絶対的な自信は、才能を開花させ、どんな国でも通用する力になるのだと、デビュー2年目の彼女たちの堂々とした姿から思う。

昨年から「海外の音楽コミュニティの一員にならなければいけない」と、広い視野で音楽市場の拡大を試みるSKY-HIは、これまでも惜しみない投資で、才能が輝ける場所を開拓してきた。

世界に届くポップスを目指すBMSGは、『D.U.N.K.』のように同じ志を持った同士と肩を組み、誰もがバトンを握りしめている状態で世界へ飛び出そうとしているのかもしれない。バトンが手渡されてできた渦から、“新たなJ-POP”を見せてくれることを期待する。


STARGLOW

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BE:FIRST(ビーファースト)、MAZZEL(マーゼル)に次ぐ3つ目のボーイズグループとして、SKY-HIが主宰するマネジメント/レーベル「BMSG」から誕生した5人組ダンス&ボーカルグループ「STARGLOW(スターグロウ)」。 2025年9月19日、オーディションプログラム『THE LAST PIECE(ラストピース/通称:ラスピ)』の最終回で発表されたSTARGLOWのメンバーは、RUI(ルイ)、TAIKI(タイキ)、KANON(カノン)、GOICHI(ゴイチ)、ADAM(アダム)の5名。同日がSTARGLOWの結成日となった。
2025年9月22日、プレデビュー曲「Moonchaser」でプレデビューを果たした。

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羽佐田瑶子

(はさだ・ようこ)1987年生まれ、執筆・編集。女性アイドルや映画などガールズカルチャーを中心に、インタビュー、コラムを執筆。主な媒体は『クイック・ジャパン』『She is』『BRUTUS』『TV Bros.』『CINRA』など。岡崎京子と女性アイドルなど、ロマンティックで力強いカルチャーや人が好き..