謎解きにハマる理由は“成功体験”と“失敗体験”。QuizKnock発の謎解きクリエイター集団「NazoLock」山本祥彰&川上諒人の原点とは?

2026.6.22

文=ねむみえり 撮影=山口こすも 編集=高橋千里


2000年代後半から今に至るまで、一過性の流行に終わらず人気を保ち続けている「謎解き」。出題された問題や仕掛けを解き明かし、ミッションを達成する体験型エンターテインメントだ。

クイズでおなじみのQuizKnockも、周遊型謎解きゲーム『東京メトロ謎解きガイドブック 宝石をたどる路線図』を7月31日まで開催している。その謎解きを制作したのが、QuizKnock発の謎解きクリエイター集団「NazoLock」(ナゾロック)だ。

「NazoLock」とはどのようなチームなのか、そしてなぜ謎解きはこんなにも人々を惹きつけるのか。NazoLockのリーダーを務める山本祥彰と、制作ディレクターの川上諒人に話を聞いた。

クイズと謎解きを“分ける”ために、QuizKnockから独立

──まず、謎解きクリエイター集団「NazoLock」について教えてください。

山本 NazoLockは、QuizKnockから生まれた謎解き制作を専門とするチームです。QuizKnockは「楽しいから始まる学び」を掲げて、考えることの楽しさを広げる活動をしているんですが、その中で謎解きを制作する機会もあって。

最初はQuizKnockとして謎解きを制作していたんですが、クイズなのか謎解きなのかわかりづらいな、という思いもあり、2024年の7月に“謎解き専門チーム”として同じ会社の中で独立しました。

左:山本祥彰(やまもと・よしあき)1996年生まれ。早稲田大学先進理工学部卒業。2017年にQuizKnockに加入。YouTube動画出演のほか、謎解きやクイズの制作・監修を主に担当/右:川上諒人(かわかみ・りょうと)2000年生まれ。東京大学理学部卒業。2022年から株式会社batonで謎解き制作に携わる。現在は「NazoLock」制作ディレクターを担当

──山本さんも川上さんも、普段はNazoLockとしての活動がメインなんですか?

山本 僕は週5日のうち、3〜4日がQuizKnockの動画出演で、残りの1〜2日と隙間時間でNazoLockの業務をしている感じですね。

自分で謎解きを作るというよりは、ほかの社員のサポートをしつつ、最終的に完成した謎解きをチェックしてGOサインを出す役割を担っています。

川上 僕は、NazoLockの制作ディレクターがメインの業務です。最近はいろんな企業からご依頼をいただいているので、案件として謎解きを作ることもあります。

あとは、QuizKnockのリアルイベントのコンテンツのひとつに謎解きがあったり、「持ち帰り謎」(※1)みたいな自主的な制作物も出したりしているので、基本的にはずっと謎解きを作っています。

※1:家でも手軽に遊べる謎解きコンテンツ。NazoLockが制作した「持ち帰り謎」は、QurioStoreでも購入できる

謎解きにハマった原点は『IQサプリ』『リアル脱出ゲーム』

──おふたりが謎解きにハマったきっかけは?

山本 僕はなぞなぞの本ですね。小学校低学年のころからずっと読んでいて、それで何かをひらめく楽しさみたいなものを学んだような気がします。それから、『IQサプリ』(フジテレビ)など、バラエティ番組でひらめきクイズにハマっていきました。

川上 僕も『IQサプリ』はけっこう観ていたんですが、謎解きにハマった決定打は、中学生のときに観ていた『リアル脱出ゲームTV』(TBS)でした。

山本 1問で完結するひらめきクイズを出す番組と違って、『リアル脱出ゲームTV』には一連のストーリーとか伏線があったよね。

──クイズと謎解きに対して抱いている“おもしろさ”の種類は同じですか?

山本 昔は、クイズと謎解きは区別せずに楽しんでいた気がします。知らないことを知る楽しさを教えてくれたのは『Qさま!!』(テレビ朝日)で、そこから漢字にハマっていきましたが、何かをひらめいて解くことの楽しさを教えてくれたのは『IQサプリ』みたいな番組だった気がします。

川上 僕も同じ感覚ですね。『Qさま!!』とか『高校生クイズ』(日本テレビ)も小さいころから観ていたので、クイズを解けたらおもしろいという感覚と、謎解きが解けたらおもしろいという感覚は一緒にありました。

中学生になってからは、謎解きのリアルイベントに行き始めたんですよ。当時はよくSCRAPが全国ツアーをしていたので、地元の栃木県の総合文化センターで開催された「リアル脱出ゲーム」に行ったりしていました。

──初めて体験した「リアル脱出ゲーム」はなんでしたか?

川上 『名探偵コナン』とコラボした『オリエント急行からの脱出』でした。僕ひとりと、5人家族(両親・子ども3人)の、合計6人チームだったんです。

──川上さんはおひとりで参加したんですね。

川上 そうです。その家族のパパは「みんなががんばるのを応援してるよ」みたいな感じで見守っていて、ママは小1ぐらいの子と小3くらいの子にゲームの説明をするので精一杯で。実質、僕と小6くらいの子だけで謎を解いたんです。

その経験もあって、最近は、あのときのパパとママが、子供たちと一緒に楽しめるような謎解きを作りたいなと思っています。

──謎解きイベントはおひとりで参加することが多かったんですか?

川上 そうですね。当時は、まわりに謎解きにハマっている人がいなくて。でもイベント会場に行くたびに「この人、前も同じチームだった気がする」みたいな大人の方がいたんですよ。

今振り返ってみると、会場に中学生は自分ぐらいしかいなかったし、一緒のチームの大人の方がかなり優しくしてくれていたんだなと思います。自分は解ける気になっていたけど、きっと僕でも解けそうな問題を回して、いいところだけ味わわせてくれたのかなって。

山本 その大人たちに感謝だね。

「この奇跡って成立するんだ」制作側しか味わえないおもしろさ

──謎解きを制作しようと思うようになった理由を教えてください。

山本 大学生のときに入っていたクイズ研究会で、僕が主催のクイズ企画のラウンドのひとつとして、“謎解きコース”を作ったことですね。

クイズにできなかった題材を謎解きにして出したんですが、そう思うと、クイズをやってなかったら謎解きも作ってなかったかもしれない。

川上 僕は中学生のときに、クラスのレクリエーションの時間に、図書室で脱出ゲームみたいなものを作らせてもらったんです。

生徒の中で僕しか謎解きにハマっていないのに、そういうことをさせてくれたので、いい担任の先生でしたね。絶対にバスケ大会のほうがおもしろいのに(笑)。

──そういった最初の制作経験を経て、今「NazoLock」として謎解きを制作しているなかで、一番うれしさを感じる瞬間はいつですか?

山本 謎を解いてる人の顔を見たり、声を聞いたときですね。実際に作ったものが届いている安心感やうれしさと、人にいい影響を与えられてるな、ということも感じられるので。

僕って、QuizKnockのYouTubeもそうなんですが、人にいい影響を与えるために活動しているんですよ。謎解きに関しても、自分が作ったものを通して人に影響を与えられているんだな、というのをリアルで実感できる瞬間が一番うれしいです。

川上 僕も人が謎を解いてるのを見るのはうれしいですね。あと、制作側としてうれしい瞬間は、謎解きを作っているときに、奇跡的に“都合がいいもの”を発見したときです。

山本 わかるな〜。

川上 たとえば、商店街の店名で謎解きを作るとして、英語の店名を並べたら、アルファベット26文字のうち23文字が使われていて、まだ使われてない文字がFとOとXで「FOX、きつねだ!」と思ったときに、横を見たらたまたま「FOX」というお店があったとしたら、すごくうれしくなるんです。この奇跡って成立するんだ、って。

山本 これは作り手しか味わえないおもしろさですね。

──今回、川上さんが主導で『東京メトロ謎解きガイドブック 宝石をたどる路線図』を制作されていますが、特にこだわった部分や、楽しんでほしいポイントを教えてください。

川上 まず、自分のペースで寄り道して、街歩きと一緒に楽しんでほしいです。今回の謎解きはどこの駅に行くかを自分で選べる仕組みになっているので、好みに合わせて遊んでほしいですね。

あとは、“コンプリート要素”(※2)も用意していて。誰かひとりだけでもやってくれたらいいなと思って作ったんですが、想像以上に多くの人がやってくれているみたいで、みんなこんなに謎解きが好きなんだって思いましたね。

※2:メインのストーリーに加えて遊べるエクストラステージなど

山本 これまでの周遊型の謎解きにも、どのルートで行くか選べる要素があったんですが、今回は行っても行かなくてもいいルートがあるのがおもしろくて。

謎解き初心者でも熟練者でも楽しみやすいようになるかなと導入してみた発明なんですが、行かなくてもいいところにも行ってくれている人が多くて、謎解きが好きな人がこんなにいるんだと思えてうれしいですね。

“成功体験”と“失敗体験”、両方が人を惹きつける

──謎解きは2000年代後半からずっと人気が続いていますが、多くの人が謎解きに夢中になる理由はなんだと思いますか?

山本 僕的には、謎解きって「わからないものをわかりたい」という気持ちを使ったゲームだと思っていて。

それは根源的な欲求な気がするので、自然とみんな興味を持って好きになっちゃうのかなと思います。能動的に頭を使ってクリアする楽しさを知ると、そのループからなかなか抜け出せなくなるんじゃないかな。

川上 たしかに、自分で実際にチャレンジして成功したぞ、という体験は大きいのかなと思いますね。

でも、成功体験だけが人を惹きつけているのかというと、それだけでもないような気がしていて。謎解きを始めたての僕は「失敗するからおもしろい」と思ってたんですよ。

自分が解けなかった謎の解説を聞いて、「なんでわからなかったんだろう、くやしい。こんなにおもしろいなら、もっと解けるようになりたい」みたいな気持ちでハマったので。

──最後に、NazoLockが制作している謎解きならではの強みを教えてください。

山本 初心者の方でも始めやすい、というところですね。この記事を読んでくれている、あなたのためを思って作っています。

謎解きを制作するときも、“納得感”を大事にしているんです。ヒントや答えを見て納得してもらって、それを繰り返すことで、考える楽しさを味わってほしいと思っていて。

なので、初心者の方がつまずいたとしても、次またチャレンジしたいと思ってもらえるような謎解きを作ろうと思っています。僕たちが作った作品をきっかけに、謎解きにハマってくれる人が増えたらうれしいです。

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  • 『東京メトロ謎解きガイドブック 宝石をたどる路線図』

    2026年4月27日〜7月31日まで開催中

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ねむみえり

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ねむみえり

1992年生まれ、東京出身。フリーランスのライターとして働きながら、現代詩の創作も行っている。本、舞台、お笑い、ラジオが特に好き。