2026年4月14日(火)に発売された総合カルチャー誌『Quick Japan』vol.183では、にじさんじ所属のVTuber、甲斐田晴/ローレン・イロアス/3SKMの3組がそれぞれ表紙&巻頭特集を飾る3バージョン同時展開企画「春のQJ×にじさんじ祭り!」を実施。
甲斐田晴 ver.では、特集テーマである「特別な人間になれるわけじゃなくても」という言葉にも内包された甲斐田が体現する“等身大の覚悟”について掘り下げている。
QJWebでは本特集の中から、甲斐田のソロインタビューの一部を抜粋。ROF-MAO、VΔLZの一員としてはもちろん、ソロのアーティストとして着実に歩んできた6年間の軌跡を追う。
目次
ターニングポイントは加賀美ハヤトの言葉
──甲斐田さんは今年でデビューから6周年を迎えます。これまでの活動を振り返ったときに、ターニングポイントだったと感じるのはいつでしょう?
甲斐田 いくつか思いつくんですけど、やっぱりROF-MAOというユニットの発足と、1曲目のデジタルシングル『透明な心臓が泣いていた』をリリースしたことは今振り返ってもすごく大きかったなと思います。それから、たしかデビューから半年くらいのタイミングだったかな。加賀美(ハヤト)さんに相談してアドバイスをいただいたことがあるんですけど、それは自分の中で大きなターニングポイントだったなと感じていますね。
──当時、加賀美さんにはどんな話をされたんですか?
甲斐田 そのころはデビューから少し経って活動にも徐々に慣れてきた時期で、だからこその悩みも生まれつつあったんですよね。ちょうど同時期に、チーム制のゲーム企画で加賀美さんと1週間くらい同じチームになる機会があって。同期ユニットであるVΔLZでの活動について相談したら、「VΔLZの甲斐田晴じゃなくて、甲斐田晴のいるVΔLZにしていくのが大事なんじゃないですか?」と言ってくれたんです。その言葉は自分の中に今でもすごく残ってます。
──当時はまだROF-MAOも結成前だと思いますが、加賀美さんに相談されたのはなぜだったんでしょう?
甲斐田 今でもわりとそうなんですけど、そもそも自分って、人に対して自分からアクションをかけるのが苦手なんです。だから当時、企画を通じて偶然にも先輩方としっかり話せる機会ができたので、その機会を活用して同じチームにいた加賀美さんに相談させていただいた……というのが正しいのかな。でも今にして思えば、響く言葉をポンと投げてくれる人がたまたま相談相手だったというのはラッキーとしか言いようがないですね。その言葉があったから、自分の色を殺してVΔLZの活動を進めていくんじゃなくて、自分の力を発揮しようともがく中でVΔLZが大きくなっていけばいいんだ、と思えるようになったなって。それまではユニット活動と個人の活動って別物だと思っているふしがあったんですけど、実際にはユニットも個人の力量の集合体なんだという視点を新しく持てたのがそのときだったというか。あれは自分にとって、けっこう大きな意識改革でしたね。
「やりたくないことはしない」という芯は譲らない
──甲斐田さんはROF-MAO、VΔLZ、ソロ活動のそれぞれの場で違った顔を見せてくれる印象があるのですが、ご自身では各活動におけるスタンスや役回りの違いをどう捉えていますか?
甲斐田 それぞれの場で求められているものが明確に違うよな、とは感じてますね。ROF-MAOでは一番の後輩という立場だし、まわりが頑丈な人間ばかりなので……たとえば無人島に行って急にそのへんの岩で寝てくださいと言われても、僕以外の3人は普通にできちゃうんですよ(笑)。でもROF-MAO全員がそうだと視聴者の方に企画の過酷さが伝わりにくいから「彼らが特殊なのであって、普通はこんなことできないですよ」というのをしっかり伝える役割かなとは思ってます。ROF-MAOでは“やられ役”であることがほとんどなので、ちゃんと大きい声で「やられた~!」って言うのも自分の役割かなって。一方でVΔLZでは取りまとめ役というか、ユニット全体の進行方向を決めていくような提案をすることが多いかもしれないですね。自分が最初に軸を提示して、それにみんなで肉づけしていくようなイメージが近いのかな。そういう意味では、それぞれの役回りの違いは自分でも多少意識してると思います。……その上で、ソロでの活動に関しては自分の好きなものを発信していくというスタンスでいることが多いのかなと。特に音楽面においては、ユニット活動以上に自分の好きなようにやらせてもらっている感覚が強いですね。だから仮に同じ曲をパフォーマンスしたとしても、ユニットでやるときとソロでやるときで編曲も変わったりするんだろうな、とは想像します。
──ソロ活動においては特に自分の「好き」を重視されているんですね。これまでに、甲斐田さん自身がやりたいことと世の中のニーズにギャップを感じられた経験ってありますか?
甲斐田 音楽面に関しては特にそのギャップに悩んだりもしますね。やっぱり、自分が好きでやりたい音楽と世間で流行している音楽に微妙にズレが生じてくることはどうしてもあるので。普段の配信に関しても、「自分が今やりたいゲームと自分に求められている配信は違うのかも」と感じた時期はちょっと悩んだりもしました。
──そのときはどのように折り合いをつけたんでしょう?
甲斐田 自分のやりたいことと、リスナーがやってほしいと言ってくれることをどちらも叶えてしっかりバランスを取る、というのが自分の中の答えではありましたね。ただ、その上で「やりたくないことはしない」という芯は譲らないようにしようとも思ってます。活動をする人間にとって柔軟に意見を取り入れることはすごく大切だと思うんですけど、人からの意見をすべて取り入れてしまうとたぶん、本人にとっても楽しくないし、まわりから見ても魅力的な配信者じゃなくなっていくというのが僕の持論で。
──甲斐田さんが個人的に「しない」と決めているのは、たとえばどんなことですか?
甲斐田 リスナーの方から「かわいい」と言われるための行動はしない、というのは自分の中のポリシーのひとつですね。たとえば……ショート動画でちょっとしたダンスをしたりすることがあるんですけど、その中でほかのライバーさんたちが投げキッスをしていたとしても自分はしない、とか。そういうとき僕は、タバコを吸ってるふりをすることで投げキッスっぽく見せたりする(笑)。そういう工夫で自分の中のバランスを取る、みたいなことはするかもしれないです。

スタッフやチームのみんなと「甲斐田晴」を大きくする仕事
──したくないこととは反対に、これだけは貫くと決めていることはありますか?
甲斐田 個人プレーじゃなく、まわりの人たちと一緒に「甲斐田晴」を大きくしていきたいというのは活動初期からずっと変わらないところですね。会社のスタッフさんやお仕事をする相手の方がいてこそ今の自分があると思うし、僕の活動を追い続けてくれて、それを広げようとしてくれるファンの人たちがいるから甲斐田晴がここまで大きくなれたと思うので。それと、さっきの話とも重なりますけど、「人を楽しませて自分も楽しむ」というのも大事にしています。やっぱり配信者を続ける上で、自分が楽しくなくなっちゃったら終わりだと思いますし。
──自分の楽しいことを軸にしつつまわりにも楽しんでもらうためにバランスを取る、というのは甲斐田さんらしいですね。求められていることに誠実に応えてくれる仕事人……というイメージを甲斐田さんに抱いている人は少なくないと思います。
甲斐田 ええっ、本当ですか? ありがとうございます。
──だからこそ甲斐田さんの仕事観というか、VTuberという職業をどのように捉えられているのかは伺ってみたいなと思っていました。
甲斐田 僕は実は、求められていることに応えようという意識はそんなに強くなくて……どちらかといえば「仁義を通す」みたいな感覚のほうが強いのかもしれないです(笑)。だからもし誠実に応えていると思っていただけるのであれば、それはたぶん、応援してくれている人たちをがっかりさせることがないように仁義を尽くそう、と思ってるからかもしれないですね。
──「仁義」の感覚があるんですね。
甲斐田 そうですね。その上で、僕はVTuberを職業だとはあまり思ってないかもしれないなって。というのも、配信を見る方ってやっぱり楽しみたくて集まってくれているはずなので、僕が楽しんでいない姿は見せたくないなと思うんです。もちろんゲーム大会とかでうまくいかなくて苦しんでる姿を見せることはあって、そういうときはリスナーの方にももどかしい思いをさせるかもしれないんですけど、最終的には自分のがんばっている姿を見て元気がもらえるとか、何かしらプラスになるものを感じ取ってもらえるようにしたいとはずっと思ってます。VTuberとして大切なのはそこかなって。……ただ一方で、自分が楽しむということは活動初期からずっと意識してやってきたんですけど、ROF-MAOとかが少しずつ、ありがたいことにみなさんの力で大きくなっていくにつれて、責任みたいなものが生じてきているなと感じることはあって。
──なるほど。
甲斐田 後輩も増えてきましたし、自分が率先して新しいことに挑戦していかなきゃいけないよなとは思います。ちょっとおこがましい言い方をするなら、後輩の方に「この先輩たちすげえ」って思ってもらえるような活動をしなきゃいけないと思うし、VTuberというものを知らない層の方たちにも「VTuberって意外とおもしろいじゃん」って思ってほしいなと。そういうある種の責任感も徐々に生まれてきたかもしれないな、とは個人的にここ数年で思うようになりました。
【続きは本誌でチェック】オーイシマサヨシとの対談&6人のクリエイターとの音楽誕生秘話も!

『Quick Japan』vol.183(甲斐田晴 ver.)は現在大好評発売中。特集では、これまでの活動やVTuber&シンガーソングライターの原点などについて語るソロインタビューのほか、甲斐田を知る4つのペルソナ、原点となる音楽や作品紹介、オーイシマサヨシとの音楽対談や、6人の共同制作クリエイターからのコメント、これまで発表した「作品目録」などを収録。
さらに同時発売のローレン・イロアス ver.、3SKM ver.も40ページにわたり充実の内容でお届け!
※「甲斐田晴 ver.」にはローレン・イロアス、3SKMの特集は収録されません
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