2010年代のアイドルシーンで活躍し、同じ群馬県出身でもある和田彩花と木村ミサ(「KAWAII LAB.」総合プロデューサー)が初対面。グループ卒業後のセカンドキャリアは違えど、それぞれが過去の経験から得た問題意識を現在の活動に反映させている。
3月9日発売予定の和田彩花の著書『アイドルになってよかったと言いたい』に収録するふたりの対談から、一部を特別公開。女性アイドルの魅力を広げる“美意識”について語る。
※現在発売中の『Quick Japan』vol.182にも掲載しています
髪型もメイクも、“健康的”に意思決定してほしい
──最近は女性アイドルグループの同性ファンが増えたことで、異性ファンの目線を気にしすぎることなく、メンバー自身も自分の好きなものを追求できるようになりました。ただ、長くアイドル活動をされていた方から、「“こうあるべき”という型にハマり続けていたことで、解放されると逆に好きだったものを思い出すのが大変だった」というお話を聞いたことがあります。
和田 わかります……。私も現役時代、妹から「そのメイクはヤバい」ってよく言われていたんですよ。その年代の流行を知っている妹から外の価値観を教えてもらうことで、型にハマらないでいられた気がします。
木村 たしかに、私もよくほかのグループからうらやましがられました。髪を染めるのもメイクもネイルも自由。事務所がネイルサロンとマツエクサロンも経営していて。
私がプロデュースしているグループの子たちも、基本自由です。髪型も定期的に変えていい期間を設けて、それぞれ希望をヒアリングしています。髪型の系統が被らないようにバランスは考えますが、第3希望まで聞いて希望を叶えるように。
グループによって好みが違うのがおもしろくて、CANDY TUNEは髪を下ろした大人っぽいスタイルを好む子が多いですが、SWEET STEADYはツインテールが人気でした。現在は、それぞれのグループのイメージに近い髪型にしています。

和田 振り分けるのは大変そうですが、みんな自分に似合うスタイルがわかっているんですね。
木村 ちょっと語弊がないよう伝えたいんですが、ツインテールをやりたくなる心情として、ファンの方の声を大切にしているからなんです。本人にどうしてその髪型にしたいのか聞くと「ファンの人が喜んでくれるから」と答える。
和田 ああー……。
木村 もちろんファンの意見は大切にしてますが、もっと健康的に意思決定してほしいので、「ファンの人が喜んでくれるから」という理由だけに寄りすぎないように、「等身大でいいよ」と伝えています。
和田 若い子だとまだ価値観が定まっていないのかもしれないですね。自分を持つってやっぱりすごく難しいことだから、経験を積んだり意識的になったりしないと持てないものだと思います。
木村 20代以降になると自分らしさが見えてきて、自分の“かわいい”像をより持っているように感じます。でも、若いころは自分に似合うものを模索している段階でもあるし、アイドルの“こうあるべき”を素直に受け入れちゃうことも。
なので、一緒に可能性を広げてあげることはプロデュース側として大事なことだと思っています。自分だけだと限界があるので、この間はヘアメイクさんに来ていただいて、KAWAII LAB.の研修生たちにいろんなヘアメイクをしてもらって、どんなメイクや髪型が似合うのか見つける時間を作ったんです。
プロと研究すると、意外な魅力が見つかってすごく盛り上がりました。正解を決めてしまいがちなので、ほかの人に褒めてもらって、自分で自分の魅力に気づくって大切だと思います。
閉じていた価値観を広げて、自分で納得できるように
──和田さんはアイドルグループ時代、髪型やメイクに関する印象的なエピソードはありますか?
和田 私は、超年上のおじさんからプロデュースされることがあったんです。いきなり呼び出されて、髪を切りなさい、縦巻きにしなさい、と。
でも具体的なイメージはなくって、縦巻きというものになっていればOKなんです。ものすごく解像度が低いのに指示を聞かなきゃいけなくて、自分のほうが自分の魅力に気づいているのにって思うことがありました。
なので、木村さんのように年上のお姉さんが言ってくれるのは素敵です。

木村 そう言っていただけるとうれしいです。
和田 私たちも年上のお姉さんである蒼井優さんと菊池亜希子さんが、『アンジュルムック』(集英社/2019年発売)という本を作ってくださったんですね。その本では、年上のお姉さんから見る“かわいい”がいろんな方向性からふんだんに盛り込まれていて、私も初めての挑戦がありました。
当時はK-POPのようなはっきりしたメイクが好きだったんですけど、お姉さんたちから素敵だねって言ってもらえたのはナチュラルなかわいさ。リップの色もつけないし、ほぼノーメイクだけど、そこに個性を見出してくれたんです。それを経験したとき、自分では挑戦できなかった枠を超えて新たな自分を発見できたと思いました。
今の時代は、個性を大切にして、等身大でいることが楽にできるようになってきたけれど、逆に自分らしさのこだわりみたいなところに閉じこもってしまう側面もある気がします。
だからこそ、自分とは違う感覚を持ったお姉さんから見た“かわいい”や“おしゃれ”を教えてもらうことで視野を広げるのは、今のアイドルにとてもやってほしいと勝手に思っています。
木村 ほんとにそう思います。個性を自分で見つけることってとても難しくて、大きく外れられないんですよね。でも、まわりの人から褒めてもらえると、最初は抵抗感があっても次第に受け入れられるようになる。
これは外見だけの話に限らず、閉じこもっていた価値観を広げて、自分で納得してもらう時間はアイドルにとって大事だと思います。
和田彩花エッセイ書籍『アイドルになってよかったと言いたい』発売!

15歳から24歳まで、女性アイドルグループ・アンジュルムのメンバーとして活動した和田彩花。元アイドルである彼女ならではの視点から、“アイドル”と、フェミニズム、自己表現、メンタルヘルス、家族、恋愛、労働問題などさまざまな課題を深く掘り下げる。

本書は、2024年から連載されていた『QJWeb』でのエッセイを完全収録するほか、2019年のアイドルグループ卒業時に綴った『Quick Japan』での連載「未来を始める」も抜粋掲載。このほか、木村ミサとの対談「“かわいい”の先にある希望」も全文収録される。
通販サイト「QJストア」では、サイン入りポストカード+ブックレット付きで予約受付中。
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