タイ発の青春映画『親友かよ』が、6月13日より上映されている。
ヒット作『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』制作チームが描く、映画作りを通して成長していく高校生たちのかけがえのない日々に、「心が温まった」という今年43歳のみなみかわ。本作から、“親友の定義”を考える。注目の新作映画を熱血レビューする「シネマ馬鹿一代」第13回。
空手を休んだN君、音信不通のI君、名古屋へ行った後輩芸人
自分は親友コンプレックスである。
私の価値基準では、人生でできる親友の数というのは1〜2人。どれだけ多く見積もっても3〜4人。どんな悩み事も相談でき、そして定期的に連絡を取っていて、なおかつ結婚式でスピーチや、乾杯の音頭を任せてくれる人……という、私の中でクリアしなければならないいくつかの親友基準がある。
初めて親友ができたのは小学1年生のころだった。N君。家が近かったからなのか? 学校に行く途中にN君の家があるため、毎日彼の家に寄っては学校に通い、放課後もいつも公園でブランコをして遊んだ。
「いつも一緒におんなぁ」そう友達に言われるほど仲がよかった。
小学2年のころ、週2回N君と近所の空手教室に通っていた。最初は一緒に行っていたが、N君がなぜか休みがちになった。
「なんで昨日空手休んだん?」私が聞くと「しゃっくりが止まらなくて……」と気まずそうに言うN君に、思わず笑ってしまった。
しかし空手の練習がとてもしんどかったので「N君せこ」という意味不明な感情が現れた。ケンカとかもしていない、仲が悪くなったとかでもない。違うクラスになったのをきっかけに、遊ばなくなった。
じゃあ、N君とは親友じゃなかったのか……と親友探しの旅に出かけた。
中学になるとバスケ部に熱中。みんなと仲よかったが、特にI君と仲よくなった。いつも冗談を言い合い、ふざけ合って腹抱えて笑うみたいなこともたくさんあった。
ケンカしたり、仲直りしたりと、もう親友っぽいじゃないか。
高校は別の学校へ通うことになったが、大学生になってまた連絡を取るようになり、共通の友達と週1回くらいで遊ぶようになった。するとある日、急に連絡が取れなくなった。のちに風の噂で「男だけで遊ぶのが嫌になった」と伝え聞いた。
嘘だろ? いくら若いからってそんなダイレクトな理由はこっちも引くよ。その理由を聞いてから、共通のグループとも遊ばなくなった。以来、I君の姿を見ていない。
彼は親友ではなかった。
私には親友はいないのか……。
あ、いる! 高校のアメフト部の友達は今でも連絡を取る! 体罰が許された時代の地獄の3年間。あの地獄を共有したみんなは、親友といって間違いない。
あ……でも……結婚式に呼ばれてない……。全員。逆に結婚式でスピーチしたことのある人から、親友サーチしたほうがいいんじゃないか?
いる。後輩の芸人。今は名古屋で活動している元プリンセス金魚の大前(りょうすけ)。付き合いも20年くらいだ。今でも定期的に連絡は取るし、名古屋に行けばメシを食う。お互い悩みも言える仲だ。最近結婚してスピーチを頼まれた。
親友じゃないか……大前が!
が、私は覚えている。10年以上前、お互い東京で泥の水を啜っていたとき。
「みなみかわさん相談なんですけど、名古屋でラジオのレギュラーが決まりそうなんです。まずは半年なんですけど……どう思います?」
私は名古屋へ行ってほしくなかった。しゃっくりで空手教室を休まれたときと同じ気持ちで、この地獄から抜け出すなんて「せこい」と思ってしまった。が、しかし先輩として必死に答えた。
「まあ半年ならいいんちゃう……」
彼は名古屋に旅立った。そしてラジオのレギュラーどころかいろんな仕事をして、持ち前の明るさとがんばりでいろんな方に愛され、半年どころかもう10年以上経つ。その結果アナウンサーと結婚した。
私は純粋にこう思った。裏切られた。彼はイチ後輩で、親友などではない。私に親友など必要ない……。
親友の定義
映画『親友かよ』を観た。

高校3年生のペーは転校先で隣の席になったジョーと知り合う。人懐っこいジョーに対し、会話に乗り気になれないペー。そんな矢先、ジョーは不慮の事故で亡くなってしまう。ペーはジョーの遺品の中に、彼が書いたエッセイを見つけ、それが実はコンテストで受賞していたことを知る。ある日、ペーは高校のOBから、短編映画のコンテストに入賞すると学科試験を免除され、大学の映画学科に入学できると聞く。そこでペーはジョーの親友だと名乗り、ジョーのエッセイを利用して彼を偲ぶ短編映画を撮ることを画策。そこにジョーの本当の親友・ボーケーや映画オタクたちが現れ、学校全体を巻き込んで映画撮影が進んでいくかに見えたが、ペーはジョーの思いもよらない秘密を知ることになる。

淡い青春ムービーが、今年43歳の私の心をじんわりと温めてくれた。
親友に定義などない。時間の長さも、まして結婚式のスピーチをやるかどうかなんてまったくの論外。
どんな人間にもある親友と友達のライン。それをおぼろげに明確にしてくれる作品。
N君もI君もアメフト部も大前も、私にとって間違いなく親友なのだ。
みなさんもそう思う人はたくさんいるはず。観てほしい。
映画『親友かよ』

2025年6月13日(金)より新宿シネマカリテ、渋谷シネクイント、池袋HUMAXシネマズほか全国順次公開
監督・脚本:アッター・ヘムワディー
プロデューサー:ワンルディー・ポンシッティサック、バズ・プーンピリヤ(『バッド・ジーニアス 危険な天才たち』『プアン/友だちと呼ばせて』)
出演:アンソニー・ブイサレート、ピシットポン・エークポンピシット、ティティヤー・ジラポーンシン
製作:GDH559Co.,Ltd.
制作:Houseton
英題:NOTFRIENDS
原題:เพื่อน(ไม่)สนิท
字幕翻訳:橋本裕充
字幕監修:高杉美和
協力:大阪アジアン映画祭
後援:タイ国政府観光庁
宣伝:平井万里子、斎藤慈子
宣伝美術:寺澤圭太郎
配給:インターフィルム
関連記事
-
-
マヂカルラブリー×岡崎体育、自分を一番出せるキャパ「大勢の人を笑わす方法を知らない」【『DAIENKAI 2025』特別企画】
『DAIENKAI 2025』:PR -
ジュースごくごく倶楽部、対バンで見つけた自分たちのかっこいい音楽とボーカル阪本の成長【『DAIENKAI 2025』特別企画】
『DAIENKAI 2025』:PR