『THE SECOND~漫才トーナメント~』グランプリファイナルが5月17日に行われ、既報のとおり結成18年目のツートライブが熱戦を制して3代目王者の座をつかんだ。本稿では、生放送を終えたばかりのふたりが喜びの声を届けた記者会見の模様をお伝えする。
優勝するぞ!とは思っていなかった
司会進行を務めるギャロップと小室瑛莉子アナウンサーの呼び込みで会見場に姿を現したツートライブは、「意味わからん、意味わからん!」「訳がわかってないです!」などと戸惑いの言葉を発しながらおずおずと席に着いた。優勝することをまったく想定していなかったと言い、多数の報道陣を前にフラッシュを浴びている現在の状況がうまく飲み込めていない様子だ。
周平魂は「『楽しく漫才を1本でも多くできたらええな』というぐらいの空気感でしか考えてなかったので、チャンピオンと言われてもまだピンとこない。“チャンピオン”? どういう意味なん?」と混乱気味に切り出し、準決勝突破時に金属バット、吉田たち、モンスターエンジンら関西勢が袖に集まってくれた瞬間が一番「泣きそうになった」タイミングだったと述懐する。そこからはリラックスして決勝に臨めたと話し、「そしたらなんのこっちゃあらへん、チャンピオンですわ」と唐突にイキり芸を差し込んで笑いを取った。

一方のたかのりは決勝戦の対戦相手・囲碁将棋のネタを見て「おもしろすぎる。たぶん優勝するんじゃないですか?」と感じていたそう。「3本目はウケるウケへん関係なく好きなネタをやろうと思ってたんで、『優勝するぞ!』みたいなのはまったく思ってなかったです」と振り返る。するとギャロップのふたりが「結果的にそのマインドがよかったんじゃないか」「大会を楽しもうとしたことが勝利につながったのでは」と勝因を分析した。

噛んだことがいいほうに働いた
優勝を果たした今改めて感謝を伝えたい相手を問われると、周平魂が「まずは俺を産んでくれた女」と即答。これを契機に「お母さんて言え! ほんでお前、お父さんのことなんて言うてんねん」「きっかけの男」「なんちゅう言い方してんねん!」「……これ、営業でやってるネタです(笑)」と、持ちネタをねじ込んで場を和ませたのち、ふたりそろって家族への感謝を口にした。

博多華丸や有田哲平、東野幸治といった大御所芸人の前でネタを披露した際の心境については、「僕はシャットアウトさせてもらいました」とたかのり。「普段やってる、森ノ宮(よしもと漫才劇場)の昼寄席やと思ってやってました。テレビとかも意識せず、お客さんに対してっていう感じで。じゃないと持たなかった」と明かすも、片や周平魂は立ち位置的に彼らの姿が嫌でも目に入ったと主張。「どんだけシャットアウトしようと思っても、華丸さんの目ん玉がふたつ奥で光ってるんですよ」と熱弁する。
ギャロップ林健が「そのわりに落ち着いて見えた」と評すると、「2本目、3本目と落ち着いていった感じですね」と周平魂。「僕らは基本的にネタの立ち上がりが遅いんですけど、1本目の最初からバチーンと笑ってもらえた。『何これ? ウケすぎてる!』と思ってたら、一発噛んで。『今噛んだぞ。でも落ち着けよ。ウケすぎてるのは別にええことやぞ』みたいな感じで、もうひとりの自分と2軸で走ってる感覚でした」と、特殊な心理状態にあったことを明かす。それを受け、たかのりは「どっちかがそういうモードになったらどっちかが落ち着くんですよ。今回は周平が噛んでくれたことによって僕は落ち着けました」と補足した。
ネタ選びは直前まで悩んだという。ミルクボーイ、金属バット、デルマパンゲとともに行った漫才ツアー『漫才ブーム10年間ツアー』で好感触を得た5本程度の中から厳選したとのことだが、1回戦で披露した『脱法ジビエ』のネタは当初候補から外していたのだそう。しかし周平魂が「なんの気なしに録音を聞いて一番笑った」ことから採用に至ったとの経緯が明かされた。「今まで積み重ねてきたニュアンスをギュッとできたネタでもありますし、これで勝負できたのはうれしかった」と感慨深げだ。

賞レースでは評価されなかった
続いて、優勝特典として与えられたフジテレビ22番組への出演権の話題に。『ぽかぽか』や『ネプリーグ』といった人気番組名が挙げられていくと、たかのりは「不安やなあ。優勝する準備なんか正直してなかったですからね、僕ら。芸人人生で“優勝”なんてないと思ってたんで」と率直な思いを吐露。周平魂は「自分がチャンピオンになる人生なんかあるんや?っていう驚きで、ずっと意味わかんないですもん」と、改めて困惑の表情を浮かべ、「(番組出演の際は)ずっとふわふわしますよ」との方針を示した。
また、決勝進出が決まった際に飛び出した「俺らの漫才って、おもろいと思ってもらえるんすね」というたかのりの名フレーズにも言及。「劇場で評判のよかったネタでも、賞レースで4分ネタにすると『あんまりやな』と言われることが18年間ずーっと続いてきたんすよ。だから点数がついたときは『俺らの漫才って、点数で評価してもらえるんや』と素直に感動しました。それがあの言葉につながった」との背景が語られると、すかさず周平魂が「あれ、僕が言わなかったでしたっけ?」と涼しい顔で手柄の横取りを試みた。
優勝の決め手については、「バカらしいことに焦点を絞って18年間やり続けてきたことが評価されたのかな」と自己分析する周平魂。「甲本ヒロト(ザ・クロマニヨンズ)さんや三浦知良(アトレチコ鈴鹿クラブ)さんのように、同じことをずっとやり続ける人に俺は心を動かされるんです。このままふたりで漫才を変わらずやり続けられれば」との決意も口にした。
たかのりは「毎月単独ライブを10年以上やってきて、お客さんのウケ具合に動じなくなったというのはあると思います。……でも、そういうことでもないよな。運ですわ! ラッキーです!」とキッパリ。「チャンピオンとなるとずっしりする感じになりがちだけど、僕らは芸風的にイジられてなんぼなんですよ。そこは消したくない。先輩後輩関係なくイジられて返していく、そのおもしろさを出していければいいかな。変わらずで!」と確信に満ちた目を輝かせた。

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