NON STYLE石田&おいでやす小田、10点満点のツッコミをしようとしていた時代を語る

2024.5.17

文=ねむみえり 編集=田島太陽


NON STYLEの石田明が、今話したいゲストたちを呼んでお酒とともに熱いトークを繰り広げるYouTube、『NON STYLE石田明のよい〜んチャンネル』。

おいでやす小田をゲストに迎えた回では、小田にとっての分岐点の話から始まり、石田が小田を褒めまくるターンに突入。小田の持つ特殊能力や人たらしな部分を石田が指摘しながら、小田のネタ作りの話題へ。そのダイジェストをお届けする。

2016年、レジェンドたちに褒められ始めたことが自信に

小田ですよ。明日『ラヴィット!』(TBS)?

僕、今日『ラヴィット!』でした。

『ラヴィット!』出てるね〜。

そうですね。ありがたいことに。

小田が『ラヴィット!』に出まくってるなんて、まじで当時を知っている人からすると気色の悪い話やねんな。

10年前とか、大阪時代とかのことですよね。まあそうですね。

すごいよな。

何が起こるかわかんないですよね、ほんまに。

小田の中で、「ここでちょっと俺の人生変わったな」みたいなのはなんかあんの?

変わったなというか、確信っていうとあれですけど、なんかいけるかもっていう感じになったのは、2016年ぐらいにいきなり、松本(人志)さんと(笑福亭)鶴瓶師匠、藤山直美さん、斎藤工さんあたりが、めっちゃおもしろいって言ってくれたんです。

いろんなところで?

いろんなとこで。別に合わせたわけじゃなくて、いろんなところで「あいつおもしろいな」って。鶴瓶さんもラジオで言ったりとか、藤山直美さんも。

藤山直美さんが言うの、すごいな。

藤山直美さんは、前からマネージャーさん介してめっちゃ連絡くれてたんです。「ほんまにおもしろいと思ってる」みたいなんで。それで、オファー自体は2020年の『M-1(グランプリ)』出る前から来てたんですけど、3年ぐらい前にテレビで共演したときに、「心から好きな芸人ベスト3」というので、3位は忘れましたけど、2位が千鳥さんで、1位僕なんですよ。

えー、すげえ。

そういうレジェンドの方が、口々にその年ぐらいに言い出したんですよ。ほな、僕はちょっと自信ないけど、この人らの見る目が間違ってるわけないよな、という自信になりました。強くなった気がしたというか。だから落ち込んだり、自信なくなることもあるけど、いや、客観的に見たらけっこうすごいんかも、みたいな。

おいでやす小田には特殊能力がある

特殊能力を持っていると、俺は思うねん。

特殊能力?

普段、レベル1のボケって言われへんねん。芸人いっぱいおるけど、みんなレベル1のボケって一番最初にやっぱ思いつくやんか。これをみんな言わへんねんけど、おいでやす小田がマイク持ってたりとか、(その場に)おったら、レベル1のボケ出せるねん。これほんますごいなと思う。

いや、うれしい。

俺は『ラヴィット!』のスタジオにおってもそうやねんな。俺はたぶん、あのスタジオにおる中で、(麒麟)川島(明)さんの重みを一番感じてんの、俺は、俺やと思うねん。

それはそうですよね。いざっていうときは。

みんなは重力はたぶんそんなに感じてへんと思う。川島さんが本気出したときの圧とかも、俺は自分でわかってる。そんななか、その重力を軽くしてくれる存在というか、小田がおったら、ほんま軽はずみなボケでも全然。

それめっちゃうれしいです。ほんまに目標としていたことなんで。願わくば全員が「俺が一番小田イジるのうまい」って思っててほしいんですよ。

ほんまにお前は、今までにいなかったタイプの人たらしやと思うねん。

人たらしっていうほど、人間的な付き合いはないですけどね。

やけど、その場限りの。

それ、ええんすか? でもほんまにそうっす。その場限りのというか、お笑いに限って。それは、僕もそれでいいやってなったんですよね。10年以上前とか、ほんまに付き合いがんばってたときもあるんですよ。局の人と行け、先輩と行けとか、付き合いが身を結ぶっていう風潮が今より色濃くあったんです。でもやっぱり僕は無理やったなってなって、あきらめたんです。あきらめたけど、舞台では関係なくやってくれるっていうのはわかったんですね。ほなもうええやんってなった。

僕、よしもと漫才劇場に入るの遅かったから、入ったときには後輩ばっかりなんです。楽屋でも輪に入れないわけじゃないけど、後輩にちょっと気を遣われてる。楽屋ではひとりでおって、(向こうで後輩が)わちゃわちゃやってて、で、そのまま舞台に一歩踏み入れた瞬間、全員がイジってきたときに、僕この状況に笑けてきて。さっきまで、隅っこで大人しくしてたおっさんを全員イジってきてるってなって、めっちゃおもろいってなったんですよ。で、もう僕は無理してコミュニケーション取って積み重ねていくのをはしょっていけるかもな、みたいに思って。

飲み会にがんばって参加するのをやめたという小田。石田と飲むのも今回が初めてかと思いきや、12年ほど前に道頓堀で一回飲んでいたことが発覚し、石田の血の気が多かった時期の話へ。その後、劇場入りが遅かった小田の下積み時代の話に移っていく。

背水の陣で今の芸風に振り切った

でもほんま、俺のおいでやす小田の印象ってめちゃくちゃ薄いのよ。若手のころ。一応知ってはいて、なんか言われたときに、「あーあいつな」とはなって。だけど、全然わかってない。(相方のNON STYLE)井上(裕介)はバスケのチームが一緒やった、みたいなので。

そうなんですよ。僕、井上さんにはそのころからだいぶかわいがってもらってました。span!の水本(健一)が井上さんと仲よくて、(僕が)バスケやってたの知ってたから声かけてくれて。行ったときはみなさん初めましてですよ、先輩も後輩も劇場入りしてたから。唯一の地下芸人みたいな感じでしたね。

そのころはもう、うんともすんともやった?

うんともすんとも。最初のオーディションすら受からなかったですからね。

でもやってること変わってないわけでしょ。変わってるの?

漫才やってましたね。漫才で、できるツッコミを装ってやってましたね。

そんな時期あんの。

ありますよ。

めっちゃかっこええやん。いや、俺めっちゃ好きやわ、そういうのん。それも経て、今この一個目のツッコミ、全力で言うっていう。めっちゃかっこいい。

どこがかっこいいんですか。できなかったんですよ。

めちゃくちゃかっこいい。俺もう、そういうの今みんなに言いたいねん。みんな10点満点取ろうとしすぎてるねん。違うねん。

わからん。

でも、お前もその10点満点取ろうとした時期があったわけでしょ。

もちろん。15年ぐらい前は(フットボールアワーの)後藤(輝基)さんに憧れてたんで、後藤さんみたいなツッコミをして、後藤さんが『M-1』優勝したときの衣装をまねて、ちょっと似た安い古着でそろえて着てました。でも、だいぶおもんなかったと思います、僕。

そもそも、(小田の)声質とたとえツッコミってあんま合わへんもんな。

ほんまにそうです。長いともう、人間が感情乗せて言う言葉じゃないんで。

後藤さんも声通らへんから、あっちに行ったわけで。声通る人はやっぱそっちがいいねん。

さらにうまい具合があるんだと思うんですけど、僕は振り切ったというか、背水の陣みたいなことですからね。ネタでもそうですけど、絶対シンプルなほうになってしまいますよね。ほんまにブチギレてるときって、人間なんか「うわー」とかじゃないですか。それに振り切りました。

小田が今のスタイルを確立していくようになるまでの話から、話題は石田が感動したという、小田のネタ作りの仕方についてへ。

小田はバッティングピッチャーのような存在

俺、急に小田に、ルミネ(theよしもと)の楽屋で「小田どうやってネタ作ってんの?」って聞いたの覚えてる? そんときは「ツッコミフレーズから」みたいなことを言ってて、ツッコミフレーズから考えてんねやって。

それもあります。珍しいですよね。

珍しい。そんな人、あんまおらへん。ツッコミフレーズから考えて、こんなちゃんとフレーズを入れてるけど、音で強くしてるわりに、実はそんなワード残してないねんな。これがまたすごい。ほんまはもっとワード残したいはずやねん。そこらへんも、もう俺やっぱ人それぞれやなと思って感動してしまって、NSCでも毎回言うねやんか。小田はこうやって考えてるって。

いやいや、何してんすか。恥ずいって。もっといるでしょ、言うべき人。

いや、おんねんけど。ツッコミフレーズから考えてんのに、こんな今さ、嫌な言い方に聞こえたらごめんやけど、普通にバラエティやってたら、一個目のツッコみ、大声でやってるやつが。

めちゃくちゃ嫌やな。けど、それはそう。

わざとやんか。

もう僕はそうやと思って。

わざとやから、そこでネタ作るときはちゃんとそっちから作ってんねやと思って。俺なんて小田がバーンいく前までは、「ボケにはボケに見合ったツッコミのサイズがあるから」ってずっと教えてきて。でも小田が出てきてから、すぐ前言撤回して、「基本ボケにはボケに合ったサイズのツッコミがあって、これは絶対そう。ただ例外として、1のボケにも10のツッコミにも全部12で返すみたいな答えを最近出した、おいでやす小田っていうのがいると。だから間違いではない。ただ、お前らの中でルールを作らないと、これは作られへんから、そこがんばれよ」っていう話はよくすんねん。本来、間違ってるやんか。でも、全部ホームラン出してくれるみたいなピッチャーなわけですよ、あなたは。ボケからしたら、もうそれたまらんすよ。

おいでやす小田のバランス感覚を石田が絶賛:動画全編紹介

おいでやす小田をゲストに迎えたシリーズは全4本が公開中。

2本目では、小田の『ラヴィット!』での活躍ぶりについてのほか、『THE SECOND』を生み出した小田の功績、石田が参加した『R-1グランプリ』の会議などについてトーク。

3本目では、小田の一番の親友といえる三浦マイルドとの関係性についてや、小田が『笑イザップ』のピン芸人編の講師として出演を決めた話から、小田がバランサーであるということを石田が熱弁。小田が勝てないなと思った芸人についても。

4本目では、小田が選んだ「優しい芸人TOP3」の中に入る石田の優しさについてのトークから始まり、ふたりの話はネタを審査する難しさに移っていく。後半は『ラヴィット!』の曜日ごとの忘年会・新年会の話から、テレビ番組収録後は眠れないという話へ。

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ねむみえり

1992年生まれ、東京出身。フリーランスのライターとして働きながら、現代詩の創作も行っている。本、舞台、お笑い、ラジオが特に好き。

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