東野幸治のYouTubeチャンネルがリアル『映像研には手を出すな!』と化している件(ラリー遠田)
芸能人がYouTubeチャンネルを開設することはもはや珍しいことではなくなった。物珍しさだけで見てもらえた時代はすでに終わっており、キャッチーな企画や画力(えぢから)、独自性など、武器がなければ戦えない。
そんななか、最近開設された『東野幸治の幻ラジオ』がおもしろい。芸能人YouTube戦国時代に始まったこのチャンネル、魅力はどんなところにあるのか。お笑い評論家のラリー遠田が徹底解説する。
東野幸治がいまYouTubeを始めた理由
少し前から芸能人が続々とYouTubeに参入している。今ではもう、特定の芸能人がYouTubeを始めたぐらいでは、それ自体がニュースになることはない。
そんな芸能人のYouTubeチャンネルの中で、私がいま最も注目しているのが、『東野幸治の幻ラジオ』である。東野幸治52歳、数々のテレビ番組でMCを務める大ベテランの大スターが、満を持してYouTube進出を果たした。
東野がこれを始めた理由については、最初に公開された動画で語られていた。彼の中ではもともと、自由に好きなことを話せるラジオ番組をやりたいという思いがあった。そして、この春からとあるラジオ局で新番組の企画が進んでいた。ところがスポンサーが集まらないという理由で、企画が立ち消えになってしまった。
そこで仕方なく、ラジオ代わりに自由に話ができる場所として自身のYouTubeチャンネルを立ち上げることにしたのだ。東野が所属する吉本興業では、キングコングの梶原雄太が「カジサック」としてやっているように、事務所がサポートする形でYouTubeチャンネルを立ち上げる体制がある。
だが、東野はあえて事務所を通さず、自分の力だけでYouTubeを始めることにした。彼のチャンネルには画期的な点がふたつある。ひとつは、音声のみの配信だということだ。音源は東野の自宅などで収録される。映像は一切使われない。
もうひとつは、編集を行うのが東野の実の娘であるということだ。通称「娘D」がディレクターを務め、編集やアップロードなどの裏方仕事を行う。まさに家内制手工業。東野クラスの芸能人が始めるYouTubeチャンネルとしては画期的な試みだ。
その内容もなかなか渋い。たとえば、第6回のテーマは「あなたの好きな日本映画大発表会」。好きな日本映画をリスナーから募集して、そのコメントを読み上げながら、東野がひたすら映画について語っていくという企画だった。説明があるとおり、寝る前のベッドの中で聴くのに最適な内容だった。東野の淡々とした口調が眠りを誘う。