写真を撮ることにこだわりを持つアーティストや俳優・声優による連載「QJWebカメラ部」。
土曜日はアーティスト、モデルとして活動する森田美勇人が担当。2021年11月に自身の思想をカタチにするプロジェクト「FLATLAND」をスタート、さらに2022年3月には自らのフィルムカメラで撮り下ろした写真をヨウジヤマモト社のフィルターを通してグラフィックアートで表現したコレクション「Ground Y x Myuto Morita Collection」を発表するなどアートにも造詣が深い彼が日常の中で、ついシャッターを切りたくなるのはどんな瞬間なのか。
古民家のロマン
第61回。
古民家を改修しているお店に目がない。
さまざまな職人技術があってこそ造ることができた当時の窓ガラスや骨董品などが今も丁寧に使われていたり、繊細かつ大胆にメッセージを残す色彩の少ない日本絵画を眺めると何もしていない令和の自分でも海の向こうで胸を張りたくなるような誇らしい気持ちになる。
日本ほど“洗練”という文字が似合う国はないと思うのだ。
まあ日本語なので当たり前だが。
日本の工芸品などは洋物アンティークとは違い感覚的かつ表現的な造形美は少ないものの、なによりもその職人の追及した機能性というポイント(点)の規則的な積み重ねが線となり、面となり、形となったであろう“美”を感じることができる。
僕はそこにとてつもないロマンを感じる。
確実にそこにいたと感じる技術の賜物とその職人の無言の匂いを感じるのだ。
人々の役に立つ技術に没頭し追求した時代の産物が時を跨いで引き継がれているお店はその精神が宿っている。
国内の旅先ではいつもそんなふうに思う。
突然だが小学生のころの担任に教わった「温故知新」という言葉をふと思い出した。
昔の事柄を知り、新しく物事を生み出す。
物事としては新しいものにはなるのだろうが、そこに比例せずきっと精神はどこか不変的なものなのだろう。
変化を恐れるなというメッセージをよく目に、耳にする時代だが、変化を生み出すことができるのはいつの時代も与えてもらった先人の知恵を吸収すること。
そして時代に関わらず受け継いだ不変の精神からなるものな気がしてならない。
日本から海の向こうへ。
そんな匂いを醸して旅立ちたい。
いつも古民家に来ては、鼻から大きく息を吸いながら胸を張り、そう思う。
夢。
中山莉子(私立恵比寿中学)、セントチヒロ・チッチ(BiSH)、長野凌大(原因は自分にある。)、東啓介、森田美勇人、南條愛乃が日替わりで担当し、それぞれが日常生活で見つけた「感情が動いた瞬間」を撮影する。
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