テレビっ子のライター“てれびのスキマ“が、昨日観た番組を記録する連載「きのうのテレビ」。バラエティやドキュメントの中で起こった名場面、名言、貴重な会話の数々を書き留めます。2020年から毎日欠かさず更新中。
『まんが未知』
3週にわたって放送された、藤田和日郎による宮下兄弟へのアドバイス。
3回の集中連載掲載が決定した宮下兄弟に藤田は、前週の放送で「出したからには(批判は)言われますわ」と必ずSNSなどで批判が来ると語り、「でもスルーして」「聞かんでいい」と言っていた。
「一番最初にロケットで打ち上がっていくふたりなの。ロケットが打ち上がっていくときに、鎖がいっぱいそれに絡みつくのよ。だけどいちいち反応して、それを一つひとつ反省材料にしようねとか、そんなことよりも、今は星を見ようぜ」と手を上に指す。めちゃくちゃカッコいい。
以前の藤田のアドバイスなどによりブラッシュアップされた、3話までのネーム。2話までは「魔王」に新たなキャラクター性が宿って飛躍的によくなり、藤田も「あなた方は見つけたね!」と絶賛していたが、3話を読むと若干顔を曇らせる藤田。
最後、驚きの展開になるのだが「“驚かし”は人の心に残りづらい。やっぱり人の心に残るのはキャラクター」と語る。読者が「そういうふうに言ってもらいたかった」と思うセリフを登場人物に言わせるのが理想だと。
宮下もそれはわかりつつ、その感情をあえて入れなかったと意図を説明する。「物語を作るときに長い目で見ちゃう癖がある」「この段階ではその感情がわからないほうが物語を作りやすい」と。
藤田も「その考え方はわかる」と理解を示しつつ、「物語を作るということと、新人の漫画家が集中連載を描くことは別物」だと諭す。「物語がつづくかどうか約束されていない3回で、本当だったらもうちょっと先にやりたかったことを、いかにみんなに向けてブチかませるか。今、覚悟を試されてる」と熱弁。
読み切りを描いていた漫画家が連載できるとなったとき陥りがちなのは「目線が遠くに行っちゃう」こと。「それが危険。一番おもしろいところがどんどん先になっちゃう。感動的な話をどれだけ最初に持ってこられるか。それが連載の一番の勝負どころになってくる」。
藤田は宮下兄弟へ「3話で終了という気持ちでぶちかまして、ようやく人の心に引っかかるものができる」と、短期集中連載の極意を語るのだ。
いつもながら藤田は、マンガを描く同志でありライバルとして、同じところに立って親身になって語ってくれるから感動する。熱さと理論が最高レベルで噛み合っていて凄まじい。すべての表現者必見の3週だった。
『漫勉neo』
寺田克也に密着。ペン入れから色塗りまで、衝撃的に迷いがなくてうまかった。向きが逆になっている龍を描くときも、画面を逆にしたりせず、下描きもなくそのまま描いていく。
筆のタッチを活かし、カスレやはみ出し、塗り残しも気にせず採用する。それは、何かに見えるから。
1本線を引いたとして「これは何に見えるでしょう?」という「見立て能力」が大事だという。寺田「たぶん、絵の才能っていうのは、見立て能力に負うところが大きいんじゃないかと俺は踏んでる」。
同じようなキャラクターのデザインにはしたくないという話で、寺田が「やっぱりなんか自分の中の少年が怒るじゃないですか」と言うと、浦沢も「あの子は厳しいよねぇ。どんな鬼編集者より厳しいよね」と言い合うシーンがたまらなった。そういう自分への厳しさがあるからこそ、第一線でずっとやってこられているに違いない。
寺田の作品はエグい・ヤバい表現をしつつも、絶対に本当の下品にならないと評す浦沢に、その理由は「愛嬌じゃないですかね」と語る寺田。「ユーモアに近い。なんか愛嬌は絶対に見つけるみたいな、対象物を好きになるっていうのが、絵を描く上では俺の中で重要」と。
10年来の仲のよさでお互いを理解し合っているふたりの会話は、深く心地いい。
同じように、子供のころに手塚治虫のマンガに魅了され、大友克洋やメビウスに強く影響を受けたふたりだが、現在の作風はまったく違う。
「僕はいっぺん女子柔道を描いてみようかというところにハンドルを切った」とマスを常に意識する浦沢に対して、「俺はどっかでやっぱり自分の中にいる『こういうのを描いてよ』っていう男の子がずっと狭い部屋にいる」と語る寺田。
浦沢「いろんな絵描きさんが寺田さんをいいなあって言うのは、そこに邁進しているという憧れもあると思う」。
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【連載】きのうのテレビ(てれびのスキマ)
毎夜ライフワークとしてテレビを観つづけ、テレビに関する著書やコラムを多数執筆する、てれびのスキマによる連載。昨日観た番組とそこで得た気づき、今日観たい番組などを毎日更新で綴る、2021年のテレビ鑑賞記録。
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