テレビ局を舞台に、スキャンダルによって落ち目となったアナウンサーと深夜番組の若手ディレクターたちが連続殺人事件の冤罪疑惑を追う渡辺あや脚本のドラマ『エルピス —希望、あるいは災い—』(カンテレ)。
袂を分かった浅川と岸本。浅川が『ニュース8』に染まりつつあるなかで、会社を解雇された岸本は村井を頼り──
今回は、ライターの木俣冬が、第9話のあらすじや見どころをレビューする。
9話まで、登場人物もストーリーも信じられない
『エルピス』第9話「善玉と悪玉」を見ながら、あと1回で終われるのだろうかと心配になっている。問題は山積みで、冤罪事件から端を発し、封印されていた大門雄二副総理(山路和弘)の別の事件が明るみになり、亡くなる人も出てしまうなか、誰ひとりとして正義か悪か方向が定まらない。とはいえ、無軌道な考察・ネタドラマではなく、確たる問題意識を感じるからよけいに奇妙なのだ。この定まらなさはきっと狙いであろう。それは最終回の予告を見て合点がいく。最終回で浅川恵那(長澤まさみ)が
「希望って誰かを信じられるってことなんだね」
10話予告より
と言っているのだ。だからこそ第9話まで徹底して、登場人物もストーリーも信じられないように見えるのだなと膝を打った。とはいえ、最終回前に予告で結論づけちゃってどうする。きっとまだ何かあるはずだ。
「善玉」か「悪玉」か定まらない人たち
最終回前に、浅川のセリフにある「善玉」「悪玉」(非常に端的なたとえだった)のごとく「善玉」か「悪玉」か定まらない人たちをまとめておく。
浅川恵那:第8話で岸本拓朗(眞栄田郷敦)の渾身のスクープを、関連ニュースを先に報道することで台なしにしたように見えたが、第9話の冒頭で、彼女が主体的にやったわけではなく上からの要請で仕方なくだったことがわかる。浅川はそんな自分に嫌気が差しているようだが抗うほどの勢いはない。
八飛署の刑事・平川勉(安井順平):岸本はスクープの出所である平川から、さらなる情報を得ようとして訴えられ、大洋テレビ退社を余儀なくされる。平川もやっぱり、ひと筋縄でいく人物ではなかった。
『週刊潮流』編集長・佐伯(マキタスポーツ):さっさとスクープ記事を取り下げるも、調子のいい人物というわけではなく、「これで諦めたわけではない」と岸本に言い、フリージャーナリストとなることを勧める。
滝川雄大(三浦貴大):浅川の同期で『ニュース8』ディレクターの滝川は浅川に親身なようで、やっぱり上層部には逆らわないタイプ。でも第9話では、岸本のスクープをそのままにしておくのはもったいないとYouTuberに売る話を持ちかける。ほんとは志があるように見えたかと思うと、おかしなことを言い出して謎めいている。岸本のスクープ潰しに関与しているのではないかと疑わしい。
村井喬一(岡部たかし):岸本に大門の娘婿で秘書・大門亨(迫田孝也)を紹介する。村井はかつて亨から大門に関するスクープを取材したが、浅川や岸本と同じようにお蔵入りになった上、バラエティ担当に左遷になったことを明かす。第1話ではいけすかないハラスメント言動ばかりしていたが、目下、最も頼れる人物になっている。
斎藤正一(鈴木亮平):大門副総理に近い存在。前半、出番が多く、悪玉候補ナンバーワンだったが、局を辞めてフリージャーナリストになってから出番が減った。浅川は、斎藤が大門派のふりをして何かを探っているのではないかと半信半疑でいる。最終回で彼の真実が明らかになるだろうか。
チェリーこと大山さくら(三浦透子):この物語の発端の人物だが、斎藤同様、前半出番が多く、自殺を図ってからは出番が減っている。が、エンディングが怪しい雰囲気なので、まだ予断を許さない。
本城章(永山瑛太):冤罪事件の真犯人ではないかと疑われている人物。いかにも怪しい素振りだが、女性を引きつける何かを持った雰囲気イケメン。
笹岡まゆみ(池津祥子):首都新聞 政治部記者。片づけられないアタフタしたおばさん記者ながら優秀。
岸本拓朗:裏表のない真実に向かってひた走る、希望の若者。だが、ひげを生やすと怪しく見え、剃ると育ちのいいお坊ちゃん、と表面的な二面性は持ち合わせている。
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