写真を撮ることにこだわりを持つアーティストや俳優・声優による連載「QJカメラ部」。
土曜日はアーティスト、モデルとして活動する森田美勇人が担当。2021年11月に自身の思想をカタチにするプロジェクト「FLATLAND」をスタート、さらに2022年3月には自らのフィルムカメラで撮り下ろした写真をヨウジヤマモト社のフィルターを通してグラフィックアートで表現したコレクション「Ground Y x Myuto Morita Collection」を発表するなどアートにも造詣が深い彼が日常の中で、ついシャッターを切りたくなるのはどんな瞬間なのか。
わたしの原風景
第94回。
夏を目がけた温もりの午後、ベランダの花がぼやけ色に咲いた。
西陽と混ざる曖昧な白、早まる虫の知らせ。
ふと懐かしさを覚えた。
物心のついた幼いころ、同じ景色を見ていた気がする。
保育園は昼寝の時間。
わたしは母に連れられ、ひとりお別れをした。
園庭は木々の影に揺れ、まぬけな風が横をつまずく。
そこに西陽が混ざり込んでわたしの原風景が完成した。
それは事象ではなく感情というか、もともと持ち合わせて生まれてきた心模様を認識した瞬間のようだった。
ゆるやかに切ない、でも不思議と温かい。
これから生きていくことを知ったような感覚。
儚さを帯びて永遠を伝えてくる日々。
それらがわたしの心の痣(あざ)。
そんなことをふと感じたいつかの昼下がり。
NAOYA(ONE N’ ONLY)、中山莉子(私立恵比寿中学)、セントチヒロ・チッチ、工藤遥、RUI・TAIKI・KANON(BMSG TRAINEE)、森田美勇人、南條愛乃が日替わりで担当し、それぞれが日常生活で見つけた「感情が動いた瞬間」を撮影する。