橋本倫史『観光地ぶらり』が第10回「斎藤茂太 旅の文学賞」を受賞

2025.6.3

一般社団法人日本旅行作家協会が、「斎藤茂太 旅の文学賞」の選考会を5月30日に開催し、第10回受賞作を『観光地ぶらり』橋本倫史(太田出版)に決定した。授賞式は東京・内幸町の日本プレスセンター内レストラン・アラスカで、7月24日に行われる。

旅に関わる優れた著作を表彰

「斎藤茂太 旅の文学賞」は、当協会創立会長の故・斎藤茂太氏の功績をたたえ、その志を引き継ぐために2016年に「斎藤茂太賞」として創設。節目となる第10回目を迎える本年より、賞の名称を「斎藤茂太 旅の文学賞」に改称した。2024年に発表された紀行文、エッセイ、ノンフィクションのジャンルから旅に関わる優れた著作を表彰する。

また、「斎藤茂太 旅の文学賞」受賞作の選考と同時に第7回「旅の良書」10冊も選出された。基本的に中学生以上を対象として、旅のさまざまな魅力を読者に伝える優れた書籍を選出するもので、「斎藤茂太 旅の文学賞」の選考過程でセレクトしたすべての作品を対象として、「斎藤茂太 旅の文学賞」の選考システムを活用して同実行委員会が選考・選出し、日本旅行作家協会の理事会の承認を経て認定する。今年が第7回目の発表となった。

「文学としての完成度が最も高かった」

今回の選考にあたり、最終選考委員の下重暁子は、「最終候補に残った3作品のうち、文学としての完成度が最も高かったのは『観光地ぶらり』だった。著者は旅とは何かについて考察し、その本質を追い求めている。取り上げたのは自分の趣味に合った場所なのだろうか、ちょっとひとくせあったり、ひねりがきいていたりして興味深い。そのとりあげ方が実に見事。椎名さんが『日本を改めて見直す機会をつくってくれた』と評されたが、まったく同感である。3人の著者の中では最も若く、今後の可能性を感じる。ただ、本のタイトルがよくないのも選考委員の一致した意見だった」と評している。

第10回「斎藤茂太 旅の文学賞」最終候補作

■『観光地ぶらり』橋本倫史(太田出版)
日本各地の「観光地」を巡り、その土地で生きる人とのふれあいやその土地の歴史を知ることで、日本の近代の歩んできた足跡をたどるノンフィクション・エッセイ。

■『テヘランのすてきな女』金井真紀(晶文社)
謎めいたイスラム教国家イランに生きる女性たちを訪ね歩き、語りと絵で記録したインタビュー&スケッチ集。風紀警察や女子相撲部など、知られざる素顔に迫る。

■『インド工科大学マミ先生の ノープロブレムじゃないインド体験記』山田真美(笠間書院)
名門インド工科大学で客員准教授を務める著者がインドで体験した「ノープロブレム」じゃない人や出来事を紹介。インドの不思議な魅力を感じられる1冊。

最終選考委員

下重暁子(作家・日本旅行作家協会会長)
椎名誠(作家・日本旅行作家協会副会長)
大岡玲(作家・東京経済大教授)
芦原伸(ノンフィクション作家・日本旅行作家協会副会長)

第10回「斎藤茂太 旅の文学賞」受賞作

『観光地ぶらり』橋本倫史(太田出版)

第7回「旅の良書」(順不同)

■『テヘランのすてきな女』金井真紀(晶文社) 第10回「斎藤茂太 旅の文学賞」最終候補作

■『インド工科大学マミ先生の ノープロブレムじゃないインド体験記』山田真美(笠間書院) 第10回「斎藤茂太 旅の文学賞」最終候補作

■『貨物列車で行こう!』長田昭二(文藝春秋)
貨物鉄道に魅せられた著者が、全国の貨物路線や貨物駅を実際に訪ね、添乗体験も交えてレポート。貨物列車に乗らなくては見ることのできない貴重な場面が満載。

■『馬の惑星』星野博美(集英社)
モンゴル、アンダルシア、モロッコ、トルコ。馬にまたがり「馬の地」を旅した著者が、土地の歴史や人々の暮らしをたどった、さすらいの旅の記録。

■『辺境、風の旅人<わたしの旅ブックス55>』芦原伸(産業編集センター)
世界の辺境を歩いてきた旅の達人が、特に忘れ得ぬ10の旅を選び抜き、静かな筆致で綴った、著者の人生を重ねる一冊。

■『家から5分の旅館に泊まる』スズキナオ(太田出版)
自分の輪郭が薄れるような時間を求めて、近所の旅館や町を歩き、人や言葉に出会う。今注目すべき書き手が、前向きな言葉に疲れた人に送る、旅のエッセイ集。

■『ホーボー・インド<わたしの旅ブックス56>』蔵前仁一(産業編集センター)
南インドからラダック、西ベンガルまで、インドをぐるりと方々(ほーぼー)歩き回った旅の記録。食をテーマに、美しい各地の写真とともに綴る、旅心を刺激する1冊。

■『かながわ鉄道廃線紀行』森川天喜(神奈川新聞社)
かつて鉄道少年たちの胸を躍らせ、時代の波とともに消え去った神奈川の鉄路。その11の廃線跡を訪ね歩く。ニュースサイトの好評連載を書籍化した1冊。

■『旅と食卓』河村季里(角川春樹事務所)
最高の美食に酔い、画家ゆかりの地を訪ねる、パリと南仏のレンタカーひとり旅。五感で旅を味わい尽くし、記憶を呼び起こし、生と死を思案する旅のエッセイ。

■『ヘタレ人類学者、沙漠をゆく』小西公大(大和書房)
インドの砂漠に通い続けて約30年。アウト・カーストの人々との交流を通じて脱・二項対立の生き方を見つけた、自称ヘタレの人類学者である筆者のフィールドワークの記録。

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