Kroi『nerd』:PR

『nerd』からスタートする、Kroi“第2章”「聴いたことがない音楽を創り出したい」

2021.11.17
Kroi

文=森 朋之 撮影=西村 満 編集=森田真規


2021年6月にメジャー1stアルバム『LENS』をリリース。R&B、ファンク、ヒップホップ、ロックなどを縦横無尽にミックスアップさせたサウンド、語感の気持ちよさと鋭利なメッセージを兼ね備えた歌詞、そして、自由という概念をリアルに体現したステージによって音楽ファンの支持を拡大しつづけているKroi(クロイ)から、新作EP『nerd』が届けられた。

先行配信された「Juden」、リードトラック「WATAGUMO」などを含む本作からは、音楽性、サウンドメイクを含め、このバンドの創造性がさらに拡がっていることが伝わってくる。バンドの“第2章”の始まりを告げるEP『nerd』を軸にしながら、ライブに対するスタンスや音楽シーンにおける立ち位置などについて、メンバー5人に訊いた。音楽性やライブの雰囲気そのままの、自由奔放なトークセッションを楽しんでほしい。

「自由にやるから、好きなように聴いて」というスタンス

──新作EP『nerd』の話の前に、まずはKroiのライブについて聞かせてください。みなさん、ステージの上でもめちゃくちゃリラックスしているように見えるんですが、“普段の雰囲気のままでやろう”みたいなことを意識しているのでしょうか?

関将典 「こういうライブにしよう」みたいな話はしてないですね。

千葉⼤樹 うん、それはないです。

 それぞれ「こういうフレーズを弾こう」みたいなことは考えていると思うけど、ライブ全体に関しては「まずは自分たちが楽しむ」というだけなので。

内⽥怜央 あとは空気を読みますね。会場の雰囲気だったり、お客さんの感じを見て、「今日はこの世界に入って、そのままの俺らで遊ぶ」というか。たとえばイベントの場合、前のバンドがガンガン盛り上げてたら「俺も盛り上げるか」とか。

長谷部悠⽣ そのほうが自分たちも楽しいですからね。自然体でライブをやって、いい演奏になることもあるし、ならないこともあるんだけど。

 ハハハハハ(笑)。リアルだな。

内田 “ガチャ感”はあるよね。

──やってみないとわからない、と。

 そうですね(笑)。うまくいかなくても、しょげるわけではないし。

[Live Digest] Kroi Major 1st Album “LENS” Release Tour “凹凸” (DVD in “nerd”)

──益田さんはどうですか? ライブに関して。

益⽥英知 4人と違って、俺は毎回緊張してますね。

内田千葉長谷部 ハハハハハ!

益⽥ 緊張から入って、お客さんやメンバーの雰囲気に感化されながら、少しずつリラックスするというか。

 メンバーの中で唯一、ライブ前にルーティーンもあるよね。

益⽥ うん。寝て、ストレッチして、レッドブルを飲む(笑)。

長谷部 確かに毎回やってる(笑)。

内田 俺も緊張はしますけどね。“ガチャ”でいいのが出るかもわからないし。

(左から)長谷部悠⽣、益⽥英知、千葉⼤樹、内⽥怜央、関将典
(左から)長谷部悠⽣、益⽥英知、千葉⼤樹、内⽥怜央、関将典

──Kroiのライブは、そこも魅力なのかも。決められたことをこなすのではなく、どうなるかわからない危うさがあって、それが解放感につながっているというか。

 うれしいです。アーティストのほうがガチガチに作ってると、お客さんもそれに沿った見方しかできない気がして。

長谷部 気張ってるライブがよくないわけじゃないんですけどね。

 うん。自分たちは「俺らも自由にやるから、好きなように聴いて」というスタンスが合ってるだけで。

内田 それぞれに得意なやり方があるからね。ただ、レアなライブはやりたいかな。

聴いたことがないジャンルを創り出したい

Kroi New EP “nerd” Track Preview

──新作『nerd』について聞かせてください。1stフルアルバム『LENS』のリリース時に「次からは第2章」とコメントしていましたが、今回の制作に関しても、そういう意識はあったんでしょうか?

内田 “第2章”というのは、外に向けて「次はすごいです」とアピールしているのではなくて、自分たちに「次は新しいものを作る」と意識させるために言ってたんですよね。たぶんメンバーも、“ここまでが第1章”みたいなことは考えてなかっただろうし。

 ただ、怜央が言ってることには納得していて。(1stアルバムのリリース後は)新しいステップというか、自分たちの気持ちを入れるタイミングでもあったので。

千葉 少なからず意識してましたね、そこは。

内田 俺が考えていたのは、「聴いたことがないジャンルを創り出したい」ということなんですよ。実験的なことを押し進めることも、そろそろ始めたいと思っていて。ずっとルーツは大事にしてきたんですけど、さらにステップアップしたいし、「これは新しい」という音楽を作っていきたいので。

内⽥怜央(Vo.)

長谷部 うん。常々、「バンドは変わっていくことがおもしろい」と思っているんですよ。Kroiとしても個人的にも、アルバムを出す前から「次は変わりたい」「新しいことをやりたい」と思っていたし、とにかく変化したくて。それが退化なのか進化なのかはわからないけどね。

長谷部悠⽣(Gt.)

内田 進化の方向性は一方ではないからね。ただ前に進んでいけばいいというものでもないし。

 動きがなくなることが一番よくないので。

──なるほど。これまでの活動でも常に変化を繰り返しているし、聴く人によってかなり印象が異なるバンドだと思いますけどね、Kroiは。

内田 そうだったらうれしいです。

──似ているバンドもいないし、どこかのシーンに属しているわけでもなくて。

内田 そうなんですよ(笑)。

千葉 うしろ盾がない(笑)。

千葉⼤樹(Key.)

 昔はライブハウスのブッカーの人に、「Kroiはどういうバンドに当てればいいのかわからない」って言われてましたね。結成は2018年なんですけど、そのころはバンドよりもトラックメイカーとか、ソロのシンガーが目立っていて、(Kroiは)カウンター的なところがあったのかも。

内田 そのころは日本で流行っている音楽をちゃんと聴いてなかったんですよ。自分たちも「こういう方向性でやっていこう」みたいなことを決めてなかったし、「新しいことをやる」「ぶっ壊してやる」って(笑)、ただ好きなようにやってただけで。

千葉 それがよかったんだと思います。「こういう活動をしたら、こうなる」みたいな考え方が怜央にはなかったし、それがKroiらしさにつながったんじゃないかなと。

益⽥ 顔色をうかがわないというか、トレンドを意識したり、同調しないで、やりたいことを発信することが大事なんだと思います。それが受け入れられるかどうかはわからないけど、自分たちがいいと思うことをつづける姿勢は持っていたいし、そうすることでジャンルに縛られず、自由度も増すのかなと。

益⽥英知(Dr.)

内田 ただ、今はKroiの立ち位置も見えてきてるし、まわりのことも一応、見てはいますけどね。そうじゃないと、「新しい!と思ってやったことが、実はめちゃくちゃ凡庸だった」みたいなこともあり得るので(笑)。

 インプットするとかではなく、音楽シーンを把握するのは大事かもね。メンバー全員、邦楽を聴いてた時期がどこかで止まってるので(笑)。

関将典(Ba.)

「Juden」は“呪い曲”

──新作『nerd』の収録曲についても聞きたいのですが、6曲ともテイストがまったく違っていて。よーい、ドン!で、全員がバラバラの方向に全力で走り出した、みたいな……。

 めっちゃいいですね、その表現(笑)。

千葉 「何をやってるんだ、お前ら!」って(笑)。

内田 自然とそうなっちゃうんです。たとえばリード曲を作るときは、“同じ方向性で、少し違う”という感じの曲がいくつかできるんですけど、アルバムやEPに向けて制作すると1曲1曲がバラバラになるんですよね。作りながら飽きてくると、まったく違う方向の曲を作りたくなるので。

──途中で飽きることって、けっこうあるんですか?

内田 ありますね。ちょっと壁にぶち当たると、すぐにほかのフォルダを開いて違う曲に取りかかるんですよ。なので曲が大量にできるし、方向性もいろいろなんです。曲を作るのはめちゃくちゃ好きなので、悩む時間がもったいないんですよね。壁にぶち当たった曲も、メンバーに渡せば解決してくれるし。みんな、凄腕なので。

──目の前で言うのはアレですけど、皆さん、うまいですよね。

内田 そうなんですよ。

 ありがとうございます(笑)。

長谷部千葉益⽥ ハハハハハ(笑)。

──演奏がうまいって、当たり前ですけど大事ですよね。アイデアがあっても、技術が伴わないと曲に結びつかないので。

内田 そう。高校のころはそこがコンプレックスで。自分の頭の中で思い浮かんでる曲をうまく表現できなかったんですよ。なので、暗かったですね。

千葉 性格に影響してたんだ(笑)。

内田 今は健康だけどね(笑)。

Kroi - Juden [Official Video]

──EPのリリースに先駆けて、オーセンティックなファンク・ナンバー「Juden」が先行配信されました。新しさを追求した結果、ファンクに辿り着いたというか。

千葉 バレた(笑)。

内田 「Juden」は“呪い曲”ですね。

──ファンクの呪い?

内田 というか(笑)、良くも悪くもナチュラルな曲になったのかなと。メンバーのフレージングにしてもビートのアプローチにしても、わりとナチュラルな感覚が出てるんですよね。

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森 朋之

(もり・ともゆき)音楽ライター。1990年代の終わりからライターとして活動を始め、延べ5000組以上のアーティストのインタビューを担当。ロックバンド、シンガーソングライターからアニソンまで、日本のポピュラーミュージック全般が守備範囲。主な寄稿先に、『音楽ナタリー』『リアルサウンド』『アエラドット』な..

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