『KING OF PRISM』『ソードアート・オンライン』『ひるね姫』『傷物語』2017年の「国立競技場アニメ」を考察
国立競技場が登場するアニメを調べてみたら、4年前の2017年公開作品が多かった。アニメ評論家・藤津亮太がその理由を考察。「近未来」として描かれた国立競技場像に迫る。
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『プリキュア』世界の中でぐらい理想の場所で
テレビを頻繁に見ているわけではないのに、ふと目に入ってくるのが、あの数字のゼロにも似た国立競技場の俯瞰映像だ。隈研吾による木材を活用したこの競技場は、上空から見ると、約7万人を収容できる大きさのわりには案外つつましやかな存在感で、テレビ画面の中に収まっている。
アニメの中に現実のランドマークやそれに類する建築物が出てくるとちょっと楽しくなる。それは、ロケ地巡りの発展である、いわゆる「聖地巡礼」のおもしろさと似ているようで少し違う。現地をロケハンしてその成果を画面に反映するのは、リアリティを画面に与えるためだが、ランドマークは「時代」や「地域」を伝えるもっと即物的なアイコンとして使われているからだ。その点で、今一番気になる建築物はやはり国立競技場ということになるだろう。アニメは国立競技場をどのように描いたのか(そんなに力む話題でもない)。
今年3月に公開された『映画ヒーリングっど プリキュア ゆめのまちでキュン!っとGoGo!大変身!!』は、まさに「オリンピックイヤーの作品」として国立競技場が登場している。単に登場するだけでなく、本作は、国立競技場とコラボレーションもしており、コラボ商品も期間限定で販売されるほど、“オリンピックイヤー”に寄り添っている。
ちなみに、このコラボ商品はアニメキャラクターの絵を使っていない。グッズに使われている写真は、国立競技場の実景を前にステージショー用のプリキュア着ぐるみたちがポーズを取っているものなのだ。こういうグッズはなかなか見かけない。たとえプリキュアが作画でなくなっても、本物の国立競技場を見てほしい、むしろ国立競技場が主役だぞ、という強い主張を感じる。
本作の国立競技場は、すこやか市在住の主人公の花寺のどか(キュアグレース)たちが東京を訪れた際の来訪先として登場。ある意味、観光名所的扱いである。陸上部の選手でもある沢泉ちゆ(キュアフォンテーヌ)は、夢のステージに足を踏み入れ、今回の映画のキーアイテム「ゆめペンダント」(心の中の夢を現実に投影できるAR(拡張現実)的なもの)で走り高跳びのバーをフィールドに出現させる。そんなちゆを応援しようと、夢原のぞみ(キュアドリーム)たちも「ゆめペンダント」の力でスタジアムを観客で満員にする。
現実のオリンピックをめぐるゴタゴタやコロナ禍の影響ばかり先立っていたから、国立競技場が「夢の場所」という素直な扱いに少しホッとするところもある。『プリキュア』世界の中でぐらい国立競技場が理想の場所であってもいいだろう。
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