私の生きた証「和楽器バンド“解体新書”」
――音源が最高なのはもちろんですが、初回限定ブック盤についている『クイック・ジャパン』プロデュースによる「和楽器バンド“解体新書”」も特別な一冊になっていますよね。
町屋 このブックレットは、かなり深い内容になっていますね。メンバーみんなの生い立ちから掘り起こされているので。
いぶくろ 関係者には見てほしくないですね(笑)。かなり赤裸々に語っていると思います。
神永 僕らって和楽器奏者だけどバンドマンであって、活動自体がちょっと珍しいじゃないですか。だから、自分のやってきたことや信念を話そうとすると関係者を否定しているような文章になってしまうので……それを正しく伝わるようにするのに苦労しましたね。
鈴華 和楽器隊は言っていたよね。「伝えたいこととちょっと違う! どうしよう!?」って(笑)。
いぶくろ せめぎ合いの結果が詰まった内容になっております(笑)。
神永 各楽器の写真もすごく間近で撮っていただいたので、客席側からでは見ることができない細かいところまで堪能していただけると思います。
――和楽器バンドの入門編としても濃密なブックレットですよね。
鈴華 手元に届いたとき、本当にワクワクしました。私の人生が、生きた証が、作品になってるんだなって。本を手に持って、じっくり読む喜びはアナログ派ならでは。ぜひその楽しさを、多くの人に感じていただきたいですね。
目指す先があるから惑わされない
――昨年のユニバーサルミュージックとのグローバルパートナーシップ契約だったり、『TOKYO SINGING』の“東京”というテーマだったり、2020年は和楽器バンドにとって、世界へ向けて羽ばたいていく年になる予定だったんじゃないかな……と思ったのですが。
町屋 コロナ禍に関係なく、わりと助走の年になる予定だったんです。
鈴華 まだ移籍したてなので、「売り方とか変わっていくんだろうな……」と思っていて。昨年の12月にミニアルバム『REACT』をリリースして、これからどうなっていくのかなというタイミングでコロナ禍に突入した感じです。
――アルバムの発売予定を伸ばしたり、ライブが延期になったり、“助走の年”を予定されていたとしても、コロナの影響は少なからずありましたよね。ネガティブな気持ちにはならなかったんですか。
鈴華 一切ないですね。私たちが一番大事にしてきたのは、活動の多い時期や少ない時期があったとしても、とにかくこのバンドを長くつづけること。せっかくこんなにも愛されているバンドなので。だからコロナ禍に直面しても、まったく動揺しなかったんですよ。
神永 これまでも常に半年先、1年先がどうなるかわからない状況で、わくわくしながら進んできたのもあるし。
鈴華 もちろん、チームが同じ方向を向くために目標として年間計画表を定めたりしますけど、あくまでも目安。それが絶対という感覚は一切ないんです。
――チームとして「長くつづける」という目標があるからこそ、状況が変わっても動じることがないんですね。
鈴華 8人それぞれ異なる想いや考えを持っているけれど、チームとして目指す先があるならば、自分の問題は自分で処理して生きていこうって、みんなが思っているんです。
町屋 そもそも僕は、この状況でのライブをやることに対して慎重派だったんですよ。でも、音楽を始めるとき、親の死に目とリハーサルが被ったらリハーサルを取ると決めていた。仕事全体の流れを最優先することが自分の中で決まっていたので、自分自身がどう思っているのかはあまり関係ないんです。方向が決まったのなら、そこに向かうだけ。
鈴華 私も『和楽器バンド 真夏の大新年会2020 横浜アリーナ 〜天球の架け橋〜』(2020年8月15日、16日に横浜アリーナにて開催)の開催が決まったとき、母親から「本当にあなたが最初に(ライブを)やる必要があるの?」って何度も言われて。でも私は「逆に決定したライブについて、私に“やらない”という選択肢があるの?」と思っていました。このバンドがある以上、そういう考えしか浮かんでこないんです。