エバースの“漫才”への自負。「誰がやってもおもしろくはなる。でも、僕らがやったら一番おもしろい」

2024.8.21
エバース

文=浜瀬将樹 撮影=是永日和 編集=梅山織愛


『M-1グランプリ2023』敗者復活戦でトム・ブラウンに正統派漫才で勝利し、話題を呼んだエバース。今年は『第45回ABCお笑いグランプリ2024』、『ツギクル芸人グランプリ2024』で決勝進出するなど、「東京しゃべくり漫才の次期エース」として頭角を現している。

そんなふたりに自らの魅力を聞くと、「純粋に漫才は一番おもしろい」と答えた。ふたりの漫才に懸ける思い、そして漫才で認められた先での目標とは。

前編はこちら

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佐々木隆史(ささき・たかふみ/1992年11月6日生まれ、宮城県出身)と町田和樹(まちだ・かずき/1992年4月24日生まれ、神奈川県出身)によるコンビ。『M-1グランプリ2023』準決勝進出。『ツギクル芸人グランプリ2024』(フジテレビ)、『第45回ABCお笑いグランプリ2024』(ABCテレビ)決勝進出

まだまだ成長中の漫才

佐々木隆史(以下、佐々木) 『ABC』で審査員をされていた(かもめんたる・岩崎)う大さんが、noteで全組の講評をされていたんですけど、僕らのネタについては「全部同じリズムになっている」と書かれていたんですよ。勝手になんですけど、「(佐々木が)ワーッとしゃべって町田が一発でツッコミを入れる繰り返しで、同じリズムになるからどんどんハードルが上がる」という意味だと解釈したので、最近は違うリズムで取ろうとは考えています。

町田和樹(以下、町田) リズムでいうと、単調に見えないように、言い方とかテンポでごまかしている部分があったので「そりゃ、う大さんにはバレるか」って感じですね。もう少し細かくやりとりをして、感情の部分を大事にしなきゃなとは思っています。たぶん普通の寄席だったらもうちょっとできていると思うんですけど、やっぱり4分の中に詰めるとなると難しい。賞レースでもそれができなきゃな、と思います。

佐々木 純粋に漫才は一番おもしろいと思うんですよ。たとえば、海外の漫才師たちとの世界大会があったら、日本からは「僕らが出るだろうな」みたいな感覚はあります。……って思わない?

町田 わかります。元がおもしろいので、誰が僕らのネタをやってもそこそこおもしろくなるとは思うんですよ。でも僕らがやったら一番おもしろいって感じですね。

佐々木 塙(宣之​・ナイツ)さんが、ミルクボーイさんに言っていたやつね。「誰がやってもおもしろいネタにプラスして、その人たちがやったら一番おもしろいのがいいネタだ」って。

町田 そうなの? じゃあ発想が被りましたわ。

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芸人としてナメられたくない

佐々木 テレビで売れている芸人だけど、劇場で観たら「めっちゃ漫才おもしろい!」ってなるのが理想です。僕の中では、特にフットボールアワーさんがそうなんですよ。テレビにめっちゃ出ているけど、テレビで漫才をされている姿ってそんなに多くは見ないじゃないですか。でも、ルミネの舞台袖で漫才を見させていただいたときに「こんなに仕上がった漫才してんだ!」と衝撃を受けて、カッコいいなと思いましたね。

町田 僕は、最終的にはダウンタウンさんみたいなテレビスターになりたいですかね。

佐々木 そんな甘い世界ではないと思います(笑)。テレビで知られたときに、僕らなんてナメられると思うんですよ。町田は(コロコロチキチキペッパーズ)ナダルさんみたいな感じになると思うし、僕も最初のころのオードリー若林(正恭)さんみたいな「じゃないほう」扱いをされると思うし。でも、そこで漫才おもしろいってなったら、ナメられないじゃないですか。そこはちゃんとやりたいですね。

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ネタ作りを担当している佐々木

佐々木 町田は自分から前に出るとよさが出ないので、ここ1、2年は僕が前に出るようにがんばっています。僕も前に出るのは苦手なんですけど、共演する人もすごくなるなか、「今日は出られなかった。次はがんばろう」、「このメンツでもボケられるようになった」の繰り返しですね。

町田 言い訳でもあるんですけど、イジられにいくと自分でも冷めるし、見てる人も冷めちゃうかなって。ただ、テレビだったらMCも上の人だし、なんとかなるかなと勝手に思っています。同列の人と並んだときに抵抗感があるんですよね。

佐々木 言い方悪いですけど、町田は自分を「特殊調理食材」だと思っているところがあって、無意識に「MCがこの人だと俺が前に出ても変な感じになっちゃうかも」って引いちゃうときがあるんですよ(笑)。粗品(霜降り明星)さんとかは絶対におもしろくしてくれるから、グッといけるというか。

町田 そのくらい上の人だと「なんとでもなる」というのはあります。

佐々木 町田は、地元でヤンキーにパシリにされていた時期があったらしくて、たぶんそれで人一倍先輩にビビってる。変な感じになることをめっちゃ恐れているんですよ。

町田 (当時の思い出が)完全に頭に植えつけられていますね。

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家事を担当しているという町田

ターニングポイントになった思い出の舞台

町田 違いますね。NSC(吉本興業の養成所)の入学式もルミネでしたから。

佐々木 (お笑いの)思い出を語るときに入学式でたとえる人ってあんまりいないと思うよ(笑)。初めてルミネに出たのが、4年目の『M-1』3回戦。そこで見た光景が今でも頭にこびりついています。それまで5、6人のお客さんの前でしかやったことなかったのに、いきなり500人の前で漫才をやったんで。

町田 マジで1万人ぐらいの感じがしました。敗者復活よりも多く感じましたね。

佐々木 そのときの経験があって、芸人を辞めなかったというのもあると思います。

佐々木 4年目ぐらいってちょうど芸人を辞める人もいて……。一般の人からして見れば、3回戦なんてなんの驚きもないと思うんですけど、僕らとしては「これだけのお客さんの前でウケた」と手応えがあったし、ひとつ自信になった瞬間でもありました。

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“7番レフト”がルミネ単独まで来た

佐々木 野球でいったらあまり主要なポジションじゃないというか。町田も7番レフトだったし、自分たちの芸人人生的にも4番ピッチャーではなかったし、なんかエモいかなって。

町田 7番レフトがルミネ単独まで来たぞって感じですね。

佐々木 3400件ほど来たそうです。「単独になったら観たい」と思ってくれる人が多いのは、うれしいですね。

佐々木 いいのができたら……とは思いますけど、僕らって(ネタを)寝かせたほうがよくなる傾向があって。もともと『ケンタウロス』も一昨年の3回戦でやって、1年寝かせて叩いたらめっちゃよくなったんですよ。当時、気づけなかったことに気づけるので、今年の『M-1』というよりは、今後のためにストックしておくというか。お風呂の栓を抜くように、賞レースでどんどんネタが流されていくなか、蛇口をひねってお湯を足している感覚ですね。

町田 人によると思うんですけど、ネタができて2カ月ぐらいで賞レースに出すってムズいんですよ。めっちゃいいネタなのに、そこまで叩けずに負けちゃった……とかもあると思いますし。

佐々木 今年やろうとしているネタも、去年作ったやつでその年にやるのがもったいないから取っておいたやつなんです。

町田 今はまだ出せないというか、でき上がってないというか。

佐々木 もっとおもしろくなる感じはしています。

■『エバース ルミネtheよしもと初単独ライブ「七番、レフト」』
2024年8月23日(金)開場19:00/開演19:30/終演20:30
ルミネtheよしもと
料金:前売3,000円/当日3,500円/配信2,000円
FANYオンラインチケット:https://online-ticket.yoshimoto.co.jp/products/lumine-24082319

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浜瀬将樹

(はませ・まさき)1984年生まれのライター、インタビュアー。お笑い、ドラマ好き。移動中に深夜ラジオ聴くのが癒やし。

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