【祝20周年】ミュージカル『テニスの王子様』が時代を超えて愛される理由とは?今牧輝琉・山田健登・高橋怜也「できない自分に負けない」

2024.5.31

文=井上明日香 撮影=佐々木康太 編集=高橋千里


ミュージカル『テニスの王子様』シリーズ(以下『テニミュ』)は、昨年で20周年を迎える、長い歴史を誇る2.5次元ミュージカル。原作は人気漫画『テニスの王子様』。キャストの卒業と代替わりを繰り返しながら、現在は『テニミュ』4thシーズンが上演されている。

左から、跡部景吾役・高橋怜也、越前リョーマ役・今牧輝琉、手塚国光役・山田健登

今回は、『テニミュ』4thシーズンより越前リョーマ役・今牧輝琉、手塚国光役・山田健登、跡部景吾役・高橋怜也の3名にインタビュー。2024年5月から始まるミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン Dream Live 2024~Memorial Match~への意気込みや、『テニミュ』の持つ魅力について語ってもらった。

『テニミュ』に出演する前は「キツそう」「大丈夫かな」

『テニミュ』シリーズは20周年を迎える、長い歴史のある2.5次元ミュージカルです。そもそもみなさんが『テニミュ』を初めて知ったのは、いつごろなんでしょうか?

『テニミュ』という名前も、原作漫画の『テニスの王子様』のことも、気づいたときには当たり前のように知っていました。なので、明確にいつなのかは正直わからなくて。

僕は、『テニミュ』3rdシーズンで赤澤吉朗(※)を演じていた中尾拳也さんが同じ九州出身ということもあり、もともと知り合いで。中尾さんが『テニミュ』に出るという話を聞いて、初めて舞台の存在を知りました。輝琉と同じく原作は以前から知っていたので、「すごい! あの『テニスの王子様』だ!」と驚きました。

※赤澤吉朗の「吉」は土に口

僕はもともと原作漫画がかなり好きで、ゲームもやったりしてたんです。その流れで、実際に観たことはなかったですが、『テニミュ』の存在も知ってはいました。原作を最初に知ったのは、学生時代に一番仲がよかった親友に勧められて。アニメも観ていました。

では、実際に生で『テニミュ』を初めて観たときはどんな印象を抱きましたか?

出演が決まったときは、DVDで過去作を観ました。最初に観たのは、テニミュ1stシーズンのミュージカル『テニスの王子様』The Imperial Presence 氷帝 feat. 比嘉。

そのときの感想としては……キャストのみなさんが舞台上で走り回っていて、体力的に大変なのかもって。大丈夫かなと思ったんですが、ふたを開けてみたら僕は(役柄的に)あんまり動くほうではなくて、安心しました(笑)。

あはははは! 手塚だからね(笑)。

数ある作品の中でも、『テニミュ』1stシーズンの関東氷帝公演を選んだ理由はなんだったんですか?

いろいろありますが、歴代の手塚役を思い浮かべたときに、城田 優さんの存在が自分の中で大きかったんです。なので、まずは城田さんが出ている公演を観てみたいと思いました。

僕が最初に『テニミュ』を観たのは、まだオーディションを受けている段階。コロナ禍で「#おうちでテニミュ」という過去公演を配信する企画があって、それで初めて観ました。僕、映画とかは途中で飽きちゃうタイプなんですが、おもしろくて没頭して。めちゃくちゃ越前リョーマを演じたい!と思いました。

僕は『テニミュ』のオーディションを受ける前に、『テニミュ』1stシーズン、2ndシーズンのDVDを複数作観ました。いろんな公演を続けて観て感じたのは、各シーズンや公演で演じている人が違っても、みんなちゃんとキャラクターになっていてすごいなと。原作ファンだった僕から見て、漫画でもアニメでもないけど、しっかり『テニスの王子様』だと驚きました。

キャストと演じるキャラが似ているのはなぜ?

たしかに『テニミュ』の歴代キャストのみなさんは、どのシーズン、どの公演を観てもハマり役だと感じます。もともとキャラに似ている人がキャスティングされることが多いんでしょうか?

ええ〜、どうだろう……!

少なくとも僕に関しては、(素の性格は)手塚とは真逆の人間です。じゃあなぜ僕が選ばれたんだろう?と考えて、手塚は僕に足りないものを全部持っているからこそ、このタイミングで出会えたんだなと思うようになりました。これから先の僕の人生に必要なことを、手塚部長から教わっているなと思うんです。

たとえば手塚部長には「油断せずに行こう」というセリフがあるんですが、僕はめっちゃ油断しちゃうタイプなので……。

あははははは!(爆笑)

この先の僕の人生のテーマです(笑)。

でもさ、健登ってチームをまとめるのめっちゃうまいじゃん。ミュージカル『新テニスの王子様』(以降『新テニミュ』)The First Stageのときも、『テニミュ』3rdシーズンから続投している隆ちゃん(前田隆太朗・切原赤也役)からまとめ役に任命されてたし。あれはもともとの気質ではないの?

全然! もともと所属していたグループの中でも最年少で、引っ張ってもらう側でした。

でも、僕の場合は始まりがよかったのかもしれないです。最初に出演したのが、先輩キャストや経験者も多い『新テニミュ』で、そこで「チームをまとめるにはこうやればいいんだよ」と教わったので。もし『テニミュ』4thシーズンがスタートだったら、もっともがいていた気がします。

今牧さんは、自分とリョーマは似ていると思います?

どうだろう?

リョーマでしょ、輝琉は。

たしかに、そもそもの性格に似てる部分はあったのかもと最近思うようになりました。というのも、僕もリョーマと同じで、あまりほかの人に影響されないというか……。人に興味がないわけではないけど、みんなが気になるようなことが気にならないんですよね。

なるほど。

で、僕は跡部とはまったく似てなくて……。

嘘つけー! そのまんまだよ(笑)。

いや、もともとは違ったけど、似てきたんだと思う。これは俺だけじゃなくほかのキャストにも感じることなんですが、最初から似てる部分もあったとは思うけど、やっぱりこれだけ公演を重ねると似てくるんだなって。

跡部に寄っていったんだ(笑)。

氷帝のチームメイトを見ていても、それぞれ素の雰囲気がキャラに似てる人が多いなと感じるんです。それがもとからの性質なのか、演じるうちに似てきたのかは人それぞれなのかもしれないけど。

やっぱり、両方あるんじゃないかな?

そうだよね。キャラの核の部分と、演じているキャストの核の部分が似てるのかもしれない。

ほかの原作のある作品に出演することもあるけど、ほかの作品ではそこまで“似てくる”感覚はなくて。やっぱり『テニミュ』は別格な気がします。公演日数が多いからキャラでいる時間が長いのも理由なのかも。

『テニミュ』シリーズが20年も愛され続ける理由とは

ところで、先ほど山田さんは「油断せずに行こう」が今後の人生のテーマになるとおっしゃってました。今牧さんと高橋さんは、今後の自分にとって『テニミュ』はどういう存在になると思いますか?

ちょっと言い方がうまくないかもしれないので、プラスの意味で捉えてほしいんですけど。僕は「自慢の通過点」だなと思っています。『テニミュ』で学んだことは、この先のいろんな舞台に出る上で絶対に大事なことばかりだから。

うん。『テニミュ』って「若手俳優の登竜門」と呼ばれるくらい、何も知らないキャストでも受け入れてくれるカンパニーで。歌や演技以外にも、人として大切なことをたくさん教わるんです。

学校みたいだよね。

たとえばどういうことですか?

とても基本的なことですよ。ちゃんとあいさつをする、返事をする、時間を守る……とか。

協調性とか、人間力が上がるようなことを学べると思います。

そんな『テニミュ』が、これだけ長い間ファンの方に愛され続けている理由って、ズバリなんなんでしょうか?

そうですね……。僕は、出ているキャストがみんな「一生懸命」だからかなと思います。ほかの舞台に比べて“がむしゃら感”があるというか。一生懸命ひとつのことに向かってみんなで走るというのが一番の魅力で、『テニミュ』でしか見られない姿なのかなと思います。

そのとおりだと思います。あとは、男の友情とかぶつかり合いとか、物語に入っている要素も好きな方はけっこう多いはず。

でも、なんといっても『テニスの王子様』自体のコンテンツとしての大きさも理由なんじゃないかな? 続編である『新テニスの王子様』の連載はもちろんですが、ゲームやアニメ、映画。原作が終わってもこれだけたくさんコンテンツが続いているからこそ、原作世代じゃない人たちも『テニスの王子様』の存在を知ることができて、その流れで『テニミュ』にも興味を持ってもらえているのかなと。

(原作者の)許斐 剛先生も、常に新しいことをする方だからね。『テニソニ』(※)もすごかったし。

それから健登も言っていたけど、一生懸命さはやっぱり『テニミュ』の魅力ですよね。ほかの舞台だと、歌がうまいから、演技ができるからキャスティングされることが多々あると思うんですが、『テニミュ』のカンパニーにはまだまだ未熟なキャストもたくさんいて。

でも、できない自分に負けない、情熱ひと筋でがんばる、みたいな意識が全員にあって、それがまた原作の『テニスの王子様』で描いていることにもリンクしている。本当にすごいですよね。

※『テニソニ』……TAKESHI KONOMI Presents『テニプリ☆ソニック2022-おてふぇす in 日本武道館-』の略。2022年に行われた『テニスの王子様』に関連する声優、俳優、アーティストが一堂に介したイベント

公演初日と千秋楽で、見違えるように成長するキャストさんも多くいますよね。

そうなんです。しかも『テニミュ』を観に来てくれるお客さんって、それありきで最後まで見届けてくれる。お客さんのスタンスに甘えているわけじゃないですけど、そうやって温かく見守ってくださるからこそ、僕たちも折れずに常に上を目指し続けながら公演できるので、ありがたいです。

卒業する青学(せいがく)は「誰のことも置いていかないチーム」

ところで、山田さん・今牧さんら青学せいがくキャストは、今回のミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン Dream Live 2024~Memorial Match~(以下『ドリライ』)をもって『テニミュ』4thシーズンを卒業されます。ぜひ、おふたりのことが大好きな高橋さんから、おふたりや青学せいがくの魅力を教えていただきたいです。

あははは! 「大好き」って。まあ、正解です(笑)。

そうだなぁ……。みんな、仲がいいよね、青学せいがくって。だからこそワンチーム感が舞台上でもあるし。で、これはちょっと健登びいきのコメントになっちゃうんですけど、そこまでまとまってるのって、健登の引っ張る力が素晴らしいからだと思うんです。

おお〜。ニヤニヤしちゃう(笑)。

もちろん輝琉も、ほかのみんなも素晴らしいんですけど、健登って歌がものすごく上手なんですよね。健登にはその強さがあるからこそ、みんなもついていくというか。

それも、手塚に圧倒的なテニスの実力があるから部員がついてくるっていう原作の青学せいがくの構図と同じなんです。今『ドリライ』の稽古で『テニミュ』4thシーズンの全校が集まっているんですが、中でもやっぱり青学せいがくが一番まとまっているなと感じます。

うれしい! でも、僕も自分で青学せいがくって本当に仲がいいなって思います。歴代、こんなに仲がいい青学せいがくっていたのかな?って思うくらい。全員がお互いに対して思いやりがあるのもいいところです。

青学せいがくが今みたいに仲よくなったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?

公演を重ねていくなかで徐々に……って感じです。最初はみんな違う方向を向いていてバラバラで。でも、僕的にはそのバラバラさがいいなと思ったんです。一人ひとりの個性が強いってことだから、それってすごい魅力だなと思って。

「やるときはやる」っていうスイッチさえちゃんと持って、目指すゴールだけ共有しておけば、普段はバラバラでもいいのかなって。それぞれの個性は残したまま、目指している場所はみんな一緒になったのが、今の青学せいがくだと思います。

だって、稽古がない日でも常に誰かがメッセージグループを動かしてるんですよ。それを見て「俺たち本当に仲がいいな」と思って。それに、誰のことも置いていかないんですよ。素敵なチームだと思います。

本当にすごい。だって、氷帝はメッセージグループ、全然動かないよ。

いや、動かそうよ(笑)。

で、なんか動いたなと思ったら、栗ちゃん(樺地崇弘役の栗原 樹さん)が「最新スケジュールです」って、更新された稽古のスケジュールを送ってくれる。あんまり更新されてない日でも、ほぼ毎日ちゃんと送ってくれる(笑)。

あはははは!(笑)

役のまんま、しっかりしてるなぁ(笑)。

絶賛稽古中の『ドリライ』ですが、現時点でどんな公演になりそうですか?

ひと言でいうと、お祭りですよね。『テニミュ』4thシーズンに出演してきた学校が全校そろうというだけで迫力もすごいので、まずはそれを感じてほしいです。

稽古場が同窓会みたいな感じですよ。

たしかに、青学せいがくにとっては特に同窓会だよね。僕は稽古で初めて会うキャストの子が何人かいて。立海の切原赤也役の木村聖哉くん。彼も初めて会ったんですが、なんかおもしろい匂いがします。

たしかに、怜也くん好きそう(笑)。

あとは、詳しくは言えないんですが、ファンの方が見たら絶対に「キャー!!」ってなる演出があります!

昔からのファンの方も喜んでくれる公演になっているんじゃないかなと思います。

そうだね。テニミュシリーズ20周年だからこその『ドリライ』になっていると思います。20周年の締めくくりみたいな公演になるんじゃないかな。

『テニミュ』を観たことない原作ファンの人にもぜひ来てほしい。きっと楽しんでいただけると思います。

大人数のキャストでお送りする大迫力のステージになっていると思います。僕個人としては「僕のすべてを観てください」って感じです。ぜひ、楽しみにしていてください!

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  • ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン Dream Live 2024~Memorial Match~

    原作:許斐 剛『テニスの王子様』(集英社 ジャンプ コミックス刊)
    構成・演出:三浦 香
    音楽:坂部 剛/Yu(vague)
    振付:遠山晶司(梅棒)/YOU
    主催:テニミュ製作委員会

    出演:
    <青学(せいがく)>
    越前リョーマ役:今牧輝琉、手塚国光役:山田健登、大石秀一郎役:原 貴和、
    不二周助役:持田悠生、乾 貞治役:塩田一期、菊丸英二役:富本惣昭、
    河村 隆役:大友 海、桃城 武役:寶珠山 駿、海堂 薫役:岩崎悠雅、
    堀尾聡史役:りょうた、加藤勝郎役:戸塚世那、水野カツオ役:市川愛大

    <不動峰>
    橘 桔平役:熊沢 学、神尾アキラ役:毎熊宏介、伊武深司役:土屋直武、
    石田 鉄役:柊太朗、桜井雅也役:深澤悠斗、内村京介役:菊池颯人、
    森 辰徳役:青海 伶

    <聖ルドルフ>
    赤澤吉朗役:奥村等士、観月はじめ役:三井淳平、柳沢慎也役:久保侑大、
    木更津 淳役:緑川青真、野村拓也役:八重澤就土、不二裕太役:石原月斗、
    金田一郎役:二宮礼夢   ※赤澤吉朗の「吉」は土に口

    <山吹>
    南 健太郎役:桑原 勝、千石清純役:TAISEI、亜久津 仁役:益永拓弥、
    東方雅美役:灰塚宗史、新渡米稲吉役:松原 凛、室町十次役:寺島レオン、
    喜多一馬役:内野楓斗、壇 太一役:橋本悠希

    <氷帝>
    跡部景吾役:高橋怜也、忍足侑士役:草地稜之、宍戸 亮役:広井雄士、
    向日岳人役:小辻 庵、芥川慈郎役:横山賀三、滝 萩之介役:中田凌多、
    樺地崇弘役:栗原 樹、鳳 長太郎役:明石 陸、日吉 若役:酒寄楓太

    <緑山>
    季楽靖幸役:成瀬遙城

    <六角>
    葵 剣太郎役:宮脇 優、佐伯虎次郎役:松永有紘、黒羽春風役:桐田伶音、
    天根ヒカル役:栗原航大、木更津 亮役:岸本舜生、首藤 聡役:中嶋 健

    <立海>
    幸村精市役:潮見洸太、真田弦一郎役:速川大弥、柳 蓮二役:梶山武雅、
    仁王雅治役:蒼井嵐樹、柳生比呂士役:中山清太郎、丸井ブン太役:白金倫太郎、
    ジャッカル桑原役:大村征弥、切原赤也役:木村聖哉

    井上 守役:北代高士、オジイ役:うじすけ、越前南次郎役:中河内雅貴
    ※越前南次郎役 中河内雅貴は兵庫:5月26日(日)12:00/17:00、東京:6月2日(日)12:00/17:00に出演いたします

    公演日程:
    【兵庫公演】2024年5月25日(土)~5月26日(日)神戸ワールド記念ホール
    【東京公演】2024年5月31日(金)~6月2日(日)有明アリーナ

    チケット料金:8,000円(全席指定/税込)
    チケット取扱い:イープラス/チケットぴあ/ローソンチケット
    チケット一般発売中!

    (c)許斐 剛/集英社・テニミュ製作委員会

    ■5月25日(土)12:00~/17:00〜、6月2日(日)12:00〜/17:00〜(大千穐楽)公演のライブ配信・アーカイブ配信実施決定!

    ■ミュージカル『テニスの王子様』4thシーズン Dream Live 2024 ~Memorial Match~
    2024年11月13日(水)にBlu-ray/DVDの発売も決定!

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井上明日香

(いのうえ・あすか)ライター。芸能インタビューを主に行っています。女性アイドルと舞台、ドラマが好きです。

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