塩見三省が三池崇史監督と12年ぶりのタッグ。「さすが狂ってる!」と感嘆した理由とは?
すでに2019年、第72回カンヌ国際映画祭「監督週間」に選出され、ひと足先に海の向こうの観客を狂喜乱舞させた三池崇史監督の新作『初恋』。
日本では三池崇史と窪田正孝が、監督&主演として約10年ぶりにタッグを組んだことが話題になっているが、この人との付き合いはもっと古い! その名は塩見三省。濃密過ぎる“ひと晩の群像劇”の一端を任された名優が、『QJWeb』だけに特別にインタビューに応じてくれた。
三池崇史はプロ中のプロ。映画作家としてリスペクトしている
――完成作をご覧になられての、率直な感想から伺えますか。
塩見 どこを切ってもやっぱり、「三池の映画だなぁ〜」って。“初恋”というものを三池崇史が撮るとしたらこうなる、という唯一無二の作品でした。特に、主演を務めた窪田さんがよかった。彼にとって大きな財産になったんじゃないかな。
――その“唯一無二”のところをもう少し、話していただくとありがたいのですが。
塩見 「あの三池崇史が『初恋』のタイトルで新作を発表した」ってことでじゅうぶんだと僕は思う。
――なるほど。塩見さんは80年代、三池さんが助監督時代からお付き合いがあって、TVドラマでご一緒されていたかと。
塩見 何本かやりました。のちに『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(2007年)や『クローズZERO』(2007年)とか映画もね。1作1作、取り組み方が変わっていくのがおもしろくて、常に高速で、転がりつづけているのがすごい。彼はものづくりのプロ中のプロなんです。今回久しぶりに三池組に参加して、それを改めて感じました。僕はひとりの映画作家としてリスペクトしています。こうすればみんなが喜ぶだろうではなく、“俺はこう撮りたい”というのが全面的に出る方ですから。それが素晴らしい。
――さて『初恋』での塩見さんの役柄は、弱体化しているヤクザ組織の組長代行。
塩見 最初にいただいた脚本ではのべつまくなし、人工呼吸器が音を立てている男だったんです。僕は脳出血をして6年、復帰して4年、病気をしたこの身で、さらに“衰えている役”をまとうのはイヤだったから、耳にピアスをし、黒手袋をはめて、後遺症のある左足にはわざわざ外に見えるよう自前の装具をつけた。そうして杖をついて堂々と歩いてやろうと。以前みたいに丸腰では十全に貢献できないのでね。身体が半分動かない僕が、今の自分をすべてさらけ出すとしたら、そういうビジュアルにして挑むしかなかった。衣装合わせのときに「えっ!?」と驚いていたけれど、いざ撮影になったら装具をつけた足、歩きのバックショットを狙って撮ってくれて、「さすが三池は狂ってるな!」とうれしかった。最高だなと思いました。