実はゲームタレントとして超優秀なお笑い怪人
ちなみにこの日の収録には僕が「寅さん性」を感じるもうひとりのP1芸人もキャスティングしていた。そのおじさんはいつも茶色い帽子と茶色いカバン……ではなく黒いテンガロンハットと黒いパンツでやってくる。そう、お笑い怪人ハリウッドザコシショウである。
ザコシショウを最初に起用した理由は実にシンプルで、「YouTubeのゲーム実況がおもしろいから」という至極真っ当なものであった。実際にレトロゲームへの愛は半端なく、その知識量は芸能界でも5本の指に入ると思われる。ただ最初にキャスティングしたときにはハチミツ二郎同様に不安な点もあった。それは「ザコシさんってまともにしゃべれる人だっけ?」ということである。なぜなら2017年時点でザコシショウといえば「アンバランカンバランハンマーカンマー」な怪人でありフリートークが得意というイメージはまったくなかったのだ。
しかしその不安は杞憂に終わることとなる。なんとザコシショウはオープニングで挨拶代わりの「誇張しすぎた豊田(真由子)議員」をやったかと思えば、残りのクイズパートはほとんどボケることなく誰よりも真剣にゲームに向き合ったのだ。さらにはよっぽどのゲームマニアしか知らないスーパーファミコンの衛星放送システム「サテラビュー」に言及するなど「誇張してないハリウッドザコシショウ」が実はゲームタレントとして超優秀であることを自ら証明した。
実際放送後には「ザコシさんがちゃんとしゃべってる姿が素敵でした」といった視聴者からのポジティブな反応が多く「またザコシさんを呼んでください」との声を多数いただいた。ただ普通にしゃべっただけで褒められるというのもなんだかよくわからない話だが、これこそ僕がザコシショウに抱く「めちゃくちゃだけど変にまじめ」という“寅さん性”に他ならない。
と、いろいろ書いたがこのままだと「ザコシさんって実はまじめな人なんですね」的なことになりかねないので、最後にハリウッドザコシショウの「寅さん性」ではなく芸人としての「狂気性」がよくわかるエピソードだけ紹介してこのコラムを終えたいと思う。
2019年2月、僕らは「勇者ああああ100回記念ロケ」で熱海の温泉旅館に来ていた。朝風呂のシーンを撮る直前、僕はザコシショウに声をかけられた。
ザコシ「ラブレターズって潔癖症なんだっけ?」
板川 「溜口(佑太朗)さんが潔癖症ですね」
ザコシ「溜口君の顔に金玉こすり付けてみようと思うんだけど……どう?」
「どう?」ってなんだ。テレビ的にOKなのかということであれば当然放送できないのでNOである。じゃあ倫理的にOKなのかということであれば「人の顔に金玉をこすり付けていい」って教える学校はないだろうからこれまたNOである。だけど僕は答えた。「溜口さんだったらOKじゃないっすかね」と。
直後、風呂場に溜口の叫び声が響いた。
「おい!ホルモンのハチノスみたいになってんじゃねえか!」
自身の金玉をハチノスにたとえられ、ガハハと豪快に笑うハリウッドザコシショウ。揺れる金玉には現場によって怪人にもタレントにもなれる芸歴27年のすごみがシワとなって刻まれていた。その隣で芸歴24年のハチミツ二郎はラブレターズ塚本(直毅)のボーボーに生えた陰毛を「トータルテンボスみたい」とボソッとたとえた。 どうしようもないおじさんが僕は大好きだ。