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稲田俊輔『だいたい15分! 本格インドカレー』のレシピを作ってみてわかった 鯖缶カレーの驚きの味わい深さ

2020.12.21

デジタル式クッキングスケールはマスト

最後に、本書に興味を持ち、ぜひ買って実際に作ってみようという方に向けて、いくつか補足的に書いておきたい。

ひとまず、「基本のミックススパイス」の材料であるパウダースパイス、

・コリアンダー
・クミン
・ターメリック
・赤唐辛子

を買おう。このへんは比較的入手しやすいので、近所のスーパーでもそろうはず。あと、本書のレシピで作る上で、「これもあるとより楽しい」スパイスを挙げるなら、

・ブラックペッパー(パウダー。ホールで買って自分で潰しても)
・マスタードシード(ホール)
・ガラムマサラ(パウダー。これも作れる人は自分でミックスしても)

あたりだろうか。特にマスタードシードは、「南インドカレーらしさ」を出す上で重要な存在だと思うので。ほかに、欲を言えばフェンネルシードやタマリンドも……とか言い出すと、全部になってしまうので抑えよう。あとは、作りながらその都度気になったものを買い足していけばいい。なお、近所にハラルフードの店などがあれば、スパイス類は格安で買えるのでオススメだ。もしスーパーなどで見つからない場合も、今はネット通販で簡単に買えるので問題ないだろう。

それから、とても大事なことがもうひとつ。本書は、分量の表記がちょっと特殊なのだ。普通のレシピ本は「重量(g、kg)&さじ(大さじ、小さじ)」表記だが、ここではALL重量表記になっている。ゆえに、デジタル式のクッキングスケール(追加計量ができるタイプ)が必須だ。安いものなら1〜2千円程度で買えるので、とにかく基本のスパイス類と共にそろえるべし。

なお、加熱したフライパンを載せることになるので、鍋敷きも用意されたし。また、できれば少し奥行きのあるクッキングスケールがあれば理想的かもしれない。我が家のはタニタの小ぶりなやつなのだが、フライパンを置くと液晶部分が影になってしまい少々見づらかった。参考まで。

最初は少し戸惑うかもしれないが、慣れてしまえばすべてクッキングスケールの上で完結するので(材料を投入する度に、表示をゼロにするイメージ)、事前にスパイスや調味料を量っておく必要がなく楽だ。

そして、インドカレー沼へと沈め

また、このALL重量表記は、作者の「まずはこのとおり作ってみてくれ(そしたら美味しくなるから!)」というメッセージでもある。往々にして人は、“完璧に”レシピ本のとおりには作らないものだ。スーパーの精肉売場に欲しい分量ぴったりの肉がパック詰めで売っているとは限らないし、野菜の個体が必ずしもレシピで指定する重量ジャストであるわけではない。足りないのはマズイだろうから、たいていは多めに用意する。そうすると「ちょっと半端に残ってしまったな……まいっか、入れちゃえ」ということになる。それでもいい感じの仕上がりになれば結果オーライだが、場合によっては微妙な味になり「このレシピ本、なんかよくないな」というネガティブな感想を抱くかもしれず、そうすると作者としては「レシピどおりに作ってくれよ!」と複雑な気持ちになるのではないだろうか。

本書が素晴らしかったのは、そうした現実を見越して、それ用のレシピも用意していたことだ。その名も「冷蔵庫一掃ジャルフレジ」。冷蔵庫に中途半端に残った肉・野菜をなんでもかんでもブチ込んでカレーにしてしまおう、というコンセプトだ。

『南インド料理店総料理長が教えるだいたい15分!本格インドカレー』書影レビュー
冷蔵庫一掃ジャルフレジ。何を入れてもいい、とのことだったので、具材に鶏挽肉、トマト、ピーマン、玉ねぎ、ブロッコリーをチョイスしてみたが、バッチリだった
『南インド料理店総料理長が教えるだいたい15分!本格インドカレー』書影レビュー
鯖缶シンプルカレーに添えた、冷蔵庫一掃ジャルフレジもう1パターン(左上)。こっちは肉なしバージョン。入れたのは、トマト、玉ねぎ、ほうれん草、ピーマン、エリンギ。くたくたになったほうれん草が美味しい。具材の組み合わせによっては、肉なしでも問題ないっぽい

でも、冷蔵庫に残っている食材の分量だってまちまちだろうし、レシピとして成立させようがないのでは?と思うかもしれないが、ここで活きてくるのが重量表記なのだ。まずは、使う肉・野菜の総重量を量る。他に使用するもの(ニンニク&ショウガのすり下ろし、スパイス、調味料)の分量は、その重量の「●%」という書き方になっているので、あとはそれに従って算出すればいい、という仕組みだ。

こうした「生活者」目線が細部まで行き届いた設計が、本書を「使いたい」「使っていて心地よい」レシピ本たらしめていることは間違いない。そして、カレー作りが読者にとって日常のものとなれば、著者が「あとがきのようなもの」で書いているように、あとは魅惑の「インドカレー沼」へとズブズブとはまり込んで行けばいい。本書は、その入口としての機能を十二分に備えている。

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  • 『南インド料理店総料理長が教えるだいたい15分!本格インドカレー』書影

    南インド料理店総料理長が教える だいたい15分! 本格インドカレー

    刊行日:2020年2月8日
    価格:1,760円(税込)
    著者:稲田俊輔
    ページ数:104ページ

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