レトルトカレーでビリヤニ!?
とにかく、呆れるくらいに何を作っても旨い。
ほかに缶詰カレーなら「ツナ缶と茄子のクルマ風カレー」におけるツナ缶とココナッツミルクの相性のよさたるや! また、普通ならツールダルという豆を煮潰して出汁に使う酸っぱいスープ「ラッサム」を、あさりの缶詰で代用する「あさり缶のラッサム風スープカレー」の「この手があったか!」感よ。後者は「本格的なのに時短」なレシピとしても秀逸だし、豆があまり得意ではない人にこれを食べさせたところ「普通のラッサムより、むしろこっちのほうが好きかも」という反応があったことも報告しておきたい。
肉系なら、「チェティナード風塩チキンカレー」というセミドライタイプのカレーが白眉。味つけがシンプルであるがゆえに、ししとうやパクチーなどの香味野菜、ごく少量入れたフェンネルシードの芳香が映える。南インドカレーにおける「香り」の重要性に気づかされる一品だ。
肉・魚系のカレーのつけ合せに最適な、野菜の炒めもの風カレーも充実。レシピでは冷凍を使っているが、今時期(冬)安くなるブロッコリーを煮崩した「くたくたブロッコリーマシヤル」はツマミにもバッチリだったので、我が家では多めに作ることで常備菜として活躍してもらっている。
また、「裏技」編として、サラダチキンを使ったバターチキンカレー、スパムで作ったポークビンダルーなどのおもしろレシピもあるが、特に「これは!」と驚愕したのが「レトルトカレーで! チキンビリヤニ」だ。エリックサウス監修のレトルトカレーを使って作るビリヤニ(インド式炊き込みご飯)である。炊飯器とレンジを駆使し、味つけはレトルトカレーという斬新過ぎるレシピに一抹の不安を抱えつつ調理したところ、本当にちゃんとビリヤニになっていて驚かされた。簡略化するところは簡略化しつつも、生のパクチーとミントを使うなど、「本格」になるようこだわるところにはこだわる──そこに本書のキモがあるように思う。