映画『劇場版BEM〜BECOME HUMAN〜』:PR

【『劇場版BEM~BECOME HUMAN~』公開記念】『妖怪人間ベム』の命題に答えを提示した、50年を超えるシリーズの到達点『BEM』

2020.9.25

人間に憧れるベムたちが、人間の醜さを象徴するヴィランに挑む

キャラクターの内面も変化した。基本オリジナルに準じたベムだが、妖怪人間にシンパシーを抱く女性刑事ソニアとの交流を通し、強い意志や優しさを示唆。

ソニアとベムの関係が『BEM』では大きな意味を持つように (c)ADK EM/BEM製作委員会

ベラはクラスメイトと学園生活を楽しみつつ、人間のふりをしている自分を冷めた目で見る一面を併せ持っている。ベロは異質な存在を嫌う人間に猜疑心を抱くシニカルな性格で、嫌なことがあるとゲームの世界に逃げ込んでしまうなど、複雑な性格描写も今作の魅力。

ゲームの達人として仲間から尊敬されているベロ (c)ADK EM/BEM製作委員会

さらに、小西克幸(ベム)、M・A・O(ベラ)、小野賢章(ベロ)、そして内田真礼(ソニア)と実力派声優のコンビネーションがドラマを盛り上げていく。

ベラは学校のクラスメイト、ベロはゲームセンターに通う子供たちと交流を持つなど、それぞれ仮の居場所を持っているのも今作ならでは。事件が起きると3人が集結し戦う関係性は、疑似家族というより仲間や同士に近く、スマートなアクション描写も手伝ってヒーローチームを思わせる。

忍者のような風貌の闇に生きるヴィランも登場する (c)ADK EM/BEM製作委員会

対するヴィランも、町を浄化するため人間掃除機になった吸引男や、若さを保つため次々に女性を襲うジュリアなど、歪んだ心を持ったアクの強いキャラぞろい。コミック調のルックを含め、アメコミのヴィランのようだ。ただし、人間に強い憧れを抱くベムたちが、人間の持つ醜さの象徴であるヴィランに挑むという図式は、オリジナルからつづく哀しさが踏襲されている。

舞台はニューヨークを思わせる大都市。椎名林檎が手がけたアダルトな楽曲が鳴り響く

物語の舞台となるリブラシティは、摩天楼が建ち並ぶきらびやかさと、貧困と犯罪がはびこるふたつの顔を持つ大都市で、両地区を隔てる運河に架かった橋を含めどこかニューヨークを思わせる。東ヨーロッパ風のオリジナルや、日本を模した『妖怪人間ベム -HUMANOID MONSTER BEM-』とはまた違った雰囲気。

ヴィランとのバトルだけでなく、街の犯罪撲滅を目指す政治家たちや、街を影で操るグループ「見えざる議会」がベムたちと絡んで重層的なドラマを展開。勧善懲悪では割り切れない世界観も見どころだ。

さまざまなバックボーンを持った人物たちが登場し、重層的なドラマが展開する (c)ADK EM/BEM製作委員会

『BEM』の主題歌は、椎名林檎が楽曲を制作し、声優としても参加している坂本真綾が歌った「宇宙の記憶」。詞を書く前にシナリオを読み込んだという椎名は、抗うことのできない不条理な世界を曲で展開。サウンドトラックも手がけたジャズバンド「SOIL&“PIMP”SESSIONS」が演奏を手がけ、そのスタイリッシュでアダルトなテイストは作品世界を表しているかのようだった。

ベラをイメージしたエンディングの「イルイミ」を歌うのは、『マクロスΔ』の劇中歌や『賭ケグルイ××』の主題歌で話題を呼んだJUNNA。こちらは「Dragon Ash」の降谷建志が楽曲を担当と、音楽にも力を入れていた。

TVアニメ『BEM』本PV

『BEM』をベースに、シリーズのひとつの到達点になる劇場版が登場!

オリジナルの精神を受け継ぎながら大胆に生まれ変わった『BEM』。その世界をベースにした最新作が、長編アニメ『劇場版BEM〜BECOME HUMAN〜』である。今作の舞台は、製薬会社「ドラコ・ケミカル」が拠点を構える人工島。

テレビシリーズの世界観が引き継がれた劇場版 (c)ADK EM/劇場版 BEM 製作委員会

2年前にリブラシティから姿を消したベムたちの行方を探すソニアは、ドラコ・ケミカルの島でベムによく似た人物に行き当たる。今回は妖怪人間たちのオリジンに迫る物語。前半はサスペンス主体に進展し、中盤以降はダイナミックなアクションを展開していく、王道のエンタメ作になっている。

『劇場版BEM~BECOME HUMAN~』予告編

メインキャストは『BEM』のメンバーが引き継いだほか、山寺宏一や水樹奈々、「Kis-My-Ft2」の宮田俊哉がキーとなる役で出演している。さらに、オープニングナレーションを初代ベムを演じた小林清志が担当しているのもトピックだ。

主題歌「unforever」を歌うのはネットシーンをベースに活躍している「りぶ」で、楽曲はロックバンド「凛として時雨」の全楽曲を手がけているTKが担当している。

妖怪人間は人間になることができるのか、その命題にひとつの答えを提示している『劇場版BEM~BECOME HUMAN~』。50年を超える歴史を誇るシリーズの、ひとつの到達点というべき作品になった。


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  • 映画『劇場版BEM〜BECOME HUMAN〜』

    2020年10月2日(金)全国ロードショー(PG-12)
    【スタッフ】
    原作:ADKエモーションズ
    監督:博史池畠
    脚本:冨岡淳広 キャラクター原案:村田蓮爾
    キャラクターデザイン・総作画監督:松本美乃
    音楽:SOIL&“PIMP”SESSIONS、未知瑠
    主題歌:「unforever」 歌:りぶ 作詞・作曲・編曲:TK(凛として時雨)
    【キャスト】
    ベム:小⻄克幸/ベラ:M・A・O/ベロ:小野賢章/ソニア:内田真礼/ウッズ:乃村健次/Dr.リサイクル:諏訪部順一/ドラコ:高木渉/グレタ:伊藤静/エマ:水樹奈々/バージェス:宮田俊哉(Kis-My-Ft2)/マンストール:山寺宏一
    制作:Production I.G
    配給:クロックワークス

    (c)ADK EM/劇場版 BEM 製作委員会

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